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2011年03月03日

グリコアルブミン値と合併症との相関はHbA1cと同等以上

 HbA1c、空腹時血糖、グリコアルブミン、フルクトサミン、1,5-AGという血糖管理指標と、合併症との相関を解析した結果、グリコアルブミンとフルクトサミンがHbA1cと同等以上に相関することが明らかになった。HbA1cの補完指標または代替指標として、グリコアルブミン等が有用であることを示す結果といえる。

 DCCTにおいてHbA1cで把握される慢性高血糖と合併症発症・進展との相関が明確に示されて以来、HbA1cは空腹時血糖とともに血糖管理指標のゴールドスタンダードとして汎用されている。しかしHbA1cが同レベルでも合併症が進展する人とそうでない人がいることなど、管理指標としての限界があることも知られている。

 一方、HbA1cや空腹時血糖以外の血糖管理指標であるグリコアルブミン(以下、GA)やフルクトサミン、1,5-AGは、HbA1cを補完するものになり得る可能性が報告されているが、合併症の発症・進展とどの程度相関するのかは、これまであまり調べられていなかった。

 このほど、これら5つの指標を同一の対象で比較検討した結果が、ADA(アメリカ糖尿病協会)の学術誌『Diabetes Care』2月号に掲載された。

ARICスタディをサブ解析し、5つの血糖管理指標を比較
 解析の対象は、約1万6,000人の中高年を対象に動脈硬化性疾患と生活習慣との関連を調べた米国の前向きコホート研究「ARICスタディ」の登録者から抽出された60〜84歳の1,600人。このうち糖尿病と診断されたことがある人は277人、診断されたことがない人が1,323人。

 これらの対象者の細小血管合併症(慢性腎臓病〈CKD〉、アルブミン尿、網膜症)の頻度について、生活習慣等の交絡因子を調整した後、5つの血糖管理指標ごとに比較検討した。

GAはCKD、アルブミン尿、網膜症の有無と有意に相関
CKDとの相関
 糖尿病と診断されたことがある人のみを対象に、CKDの頻度をeGFRが60mL/分/1.73m2 未満の群と以上の群に分けて比較したところ、いずれの血糖管理指標も有意な差を示さなかった。しかし、糖尿病と診断されていない人も含めて対象者全員を層別化して検討すると、GA(p-trend=0.005)、フルクトサミン(p-trend=0.003)、HbA1c(p-trend=0.005)という3つの指標は、いずれも高値になるに従いCKDの頻度が高くなることが確認された。1,5-AG(p-trend=0.72)と空腹時血糖値(p-trend=0.66)は有意でなかった。

アルブミン尿との相関
 糖尿病と診断されたことがある人をアルブミン尿の有無で分けて比較すると、GA(p value=0.01)、フルクトサミン(p value=0.01)、HbA1c(p value=0.04)の3つで有意差がみられ、1,5-AG(p value=0.16)、空腹時血糖値(p value=0.69)は有意差がなかった。

網膜症との相関
 網膜症の有無での比較では、GA(p value=0.01)、フルクトサミン(p value=0.01)、空腹時血糖値(p value=0.04)で有意差がみられた。しかし、HbA1c(p value=0.09)と1,5-AG(p value=0.45)は有意でなかった。

 結果として、検討されたCKD、アルブミン尿、網膜症という3つの細小血管障害すべてについて有意差が検出されたのは、GAとフルクトサミンだった。

HbA1cで補正後もGAでは両群に有意差
 GA、フルクトサミン、1,5-AG、空腹時血糖の4つについては、HbA1c値で補正した値での相関も検討された。

 GAはHbA1c値で補正後も、CKD(p-trend=0.05)と網膜症(p-trend=0.01)の有無で有意であり、アルブミン尿も有意傾向(p-trend=0.07)にあった。また、フルクトサミンのHbA1c値補正後は、CKD(p-trend=0.03)、網膜症(p-trend=0.02)、アルブミン尿(p-trend=0.05)の有無、いずれも有意差が残った。

 一方で、1,5-AGのHbA1c値補正後はアルブミン尿の有無のみが有意であり、空腹時血糖についてはHbA1c値での補正によりすべての合併症の有無について有意差がなくなった。

HbA1cの補完や代替にGAが有用
 血糖管理指標のゴールドスタンダードはDCCT以来、HbA1cとされているが、この検討からは、GAのほうが細小血管障害との相関が高いことが示された。また、年齢、性、喫煙歴、BMIなどによる影響も、HbA1cとGAでは異なることを示す結果も得られている。

 HbA1cは個体差が大きく、偽低値・偽高値となる症例・病態があることも明らかになっている。今後はHbA1cの補完あるいは代替のために、適宜GAを導入すべき必要性も増えてくると考えられる。

Nontraditional Markers of Glycemia:Associations with microvascular conditions(Diabetes Care. 2011)

DCCTとは:血糖管理状態と合併症の起きやすさを調査するために米国で行われた研究。血糖値をより正常値近くにコントロールするほど合併症が起きにくいことを科学的に初めて立証し、今日の糖尿病の治療方針の確立に多大な影響を与えた。

グリコアルブミン(GA)とは:検査時点から過去4週間(とくに直近の2週間)の血糖コントロール状況を反映する検査。

関連情報
グリコアルブミン情報ファイル(糖尿病NET)

[ KUBO ]
日本医療・健康情報研究所

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