ニュース

2010年08月26日

緑色野菜を食べることが2型糖尿病の改善に有用 22万人を調査

 ほうれん草、キャベツ、ブロッコリ、カリフラワーなどの緑色野菜を多くとることで、2型糖尿病の危険性を減らせるとする論文が発表された。

 過食や栄養バランスの乱れ、運動不足などが原因で、2型糖尿病は世界中で爆発的に増えている。国際糖尿病連合(IDF)は、2010年の世界の糖尿病人口は2億8500万人で、2030年までに4億3800万人に増加すると予測している。
野菜を増やすと2型糖尿病のリスクが低下
 野菜や果物を適切にとることが、がんや心臓病などの予防につながることが知られている。2型糖尿病の予防や治療においても、食事や運動などの生活習慣の改善は重要だ。しかし、2型糖尿病と野菜の摂取の関連について、メカニズムを詳しく解明した質の高い研究は多くない。

 そこで英レスター大学のPatrice Carter氏らの研究チームは、果物や野菜の摂取と2型糖尿病との関連に着目した、米国やフィンランド、中国で実施された大規模な前向き研究6件をメタ解析した。対象患者数は計22万人を超え、調査期間は4.6年から23年に及んだ。この研究は、英国医師会誌「British Medical Journal」オンライン版に8月20日に発表された。

 その結果、緑色野菜を1日当たり「1.5皿(サービング)」増やすと、2型糖尿病の危険性が14%減少することがあきらかになった。ただし、これに果物を加えた場合は、発症予防などの明白な結果は示されなかった。

 野菜は低カロリーで、食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富に含まれる。抗酸化作用のあるポリフェノールやカロテノイドなども含まれる。

 抗酸化物質は、活性酸素をとりのぞき、酸化の働きを抑える物質。活性酸素は微量であれば体に有用な働きをするが、大量に生成されると過酸化脂質をつくりだし、動脈硬化や免疫機能の低下、老化などを引き起こす。緑色野菜や果物に含まれるカロテノイドはβ-カロテンやリコピンが知られている。

 ほうれん草などの緑色野菜には、マグネシウムなどの微量栄養素も含まれる。「野菜に含まれる抗酸化物質などの栄養素は健康に有用な働きをする。これらが2型糖尿病の危険性を減らすために有用である可能性がある」と研究者は指摘する。

 興味深いことに、抗酸化物質をサプリメントなどの健康食品で補った場合は、生活習慣病の予防につながらないことも示された。野菜は健康食品とは異なる「生きたサプリメント」といえる。

 2002年の調査では、英国の成人の86%が野菜や果物の1日の推奨量をとっていないことが示された。世界の260万人が、野菜が不足しているために早い時期に亡くなっているという。「今後はさらに研究を重ねて、緑色野菜を食べるよう食事のアドバイスを個別に行った場合に、どのようなやり方が効果があるかを調べる必要がある」と研究者は述べている。

 論文の論説でニュージーランドのオタゴ大学のJim Mann教授らは、「2型糖尿病を予防するために特定の野菜や果物が果たす役割については十分に解明されてはいない。野菜を特効薬のようにみなすのは早急だ」としながらも、「長期的なコホート研究の結果から、野菜をとることが心疾患や高血圧などの改善につながることはあきらかだ。野菜や果物を適量とり食生活を改善するための指導が、どんな薬物療法にも勝る便益をもたらすだろう」と述べている。

Green leafy vegetables reduce diabetes risk(レスター大学、2010年8月20日)
Fruit and vegetable intake and incidence of type 2 diabetes mellitus: systematic review and meta-analysis
British Medical Journal, 2010, 341:c4229

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲