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2010年08月27日
インスリン抵抗性がアルツハイマー病の発症に影響 九州大学「久山研究」
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インスリン抵抗性は、血中のインスリン濃度にみあったインスリン作用をえられなくなり、高血糖になりやすくなった状態で、糖尿病の人や糖尿病予備群でみられる。2型糖尿病の原因となるほか、高血圧や動脈硬化の進行とも関わりがあると考えられている。
アルツハイマー病は、高齢化が進むにつれ患者が増えている。「2型糖尿病とアルツハイマー病の世界的な急増は、喫緊の課題となっている。肥満が増加しており、肥満は2型糖尿病の発症につながる。これらは深く関連している」と九州大学(福岡市)の佐々木健介氏らは話す。
九州大学の研究チームは福岡県久山町の135人(平均年齢67歳)を対象に研究を行った。対象者に血糖値の検査を行い、その後10〜15年間にわたってアルツハイマー病の兆候がないかを観察した。久山町では住民を対象に、40年間にわたり精度の高いの疫学調査「久山研究」が行われている。高血圧症、糖尿病、脳卒中などの生活習慣病の原因や予防策をさぐるのが目的
研究期間中に対象者の約16%がアルツハイマー病を発症した。対象者の死後に研究チームが脳を調べ、アルツハイマー病の所見となるプラークや神経原線維のもつれ(tangle)を調べた。その結果、65%にプラークがみつかったという。
さらに、血糖コントロールに関する3種類の検査で異常がみられた患者で、プラークを形成する危険性が高いことがあきらかになった。プラークがみられたのは、インスリン抵抗性の認められない患者では62%だったが、認められた患者では72%と割合が高くなった。しかし、糖尿病の要因と脳の神経原線維のもつれとの関連はみいだせなかった。
佐々木氏は、「インスリン抵抗性がプラーク形成の原因と結論するにはさらに研究を進める必要がある」としながらも、「糖尿病をコントロールしたり予防することが、アルツハイマー病の
Insulin Resistance, Type 2 Diabetes Linked to Plaques Associated with Alzheimer’s Disease(米国神経アカデミー、2010年8月25日)
Insulin resistance is associated with the pathology of Alzheimer disease. The Hisayama Study
Neurology 2010, doi:10.1212/WNL.0b013e3181eee25f
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