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2010年04月09日

ウォーキングが女性の脳卒中リスクを低下 米国で4万人を調査

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運動療法
 週に2時間以上歩いている女性では、歩かない女性に比べ、脳卒中を発症するリスクが著しく低下することが、米ハーバード公衆衛生大学院の研究者らによる12年に及ぶ追跡調査で分かった。特に時速4.8キロメートル以上の速度で活発に歩く女性では、脳卒中のリスクが37%低下するという。
運動習慣のある女性では脳卒中リスクが最大で37%低下
 調査の対象となったのは、米国で実施されている大規模研究「Women's Health Study」に参加した医療・保健に従事する健康な女性3万9315人(平均年齢54歳)。約12年間、運動を行う時間や内容、ウォーキングの速度、時間などを2〜3年おきに調査した。

 歩行速度は参加者の自己申告にもとづき、「ゆっくり(時速3.2キロメートル)」「通常(4.8キロメートル未満)」「活発(6.4キロメートル未満)」「非常に活発(6.4キロメートル以上)」に分けられた。

 運動の内容はウォーキングの加えて、ハイキング、ジョギング、ランニング、自転車、エアロビクス・ダンスなど有酸素運動、運動機器の使用、テニスやスカッシュ、ラケットボール、水泳、ヨガ、ストレッチングなども含まれる。

 調査期間中に579人が脳卒中を発症した(虚血性脳卒中473人、出血性脳卒中102人、不明4人)。解析した結果、下記のことがあきからになった

  • 脳卒中を発症するリスクは、活発に歩く女性では37%低下し、週に2時間以上歩く女性では30%低下する。
  • 出血性脳卒中に限ってみると、活発に歩く女性ではリスクは68%低下し、週に2時間以上歩く女性では57%低下する。
  • 虚血性脳卒中に限ってみると、活発に歩く女性ではリスクは25%低下し、週に2時間以上歩く女性では21%低下する。

 「ウォーキングを習慣化している女性では、そうでない女性に比べ、脳卒中全体、出血性脳卒中、虚血性脳卒中のいずれにおいても、発症率が低下していた」とハーバード公衆衛生大学院のJacob R. Sattelmair氏は述べている。「脳卒中を予防する観点でみると、週に2時間以上、活発に歩くことが分かれ目になる」という。

1日30分のウォーキングが恩恵をもたらす
 これまでの研究でも、一般的に活発に体を動かしている人では、そうでない人に比べ、脳卒中の危険性は25〜30%低くなることが示されている。ウォーキングを含めた適度な運動は高血圧の予防にも効果がある。

米国心臓学会のキャンペーン
4月7日はウォーキング・ディ(Walking Day)

 米国人の67%は過体重や肥満です。座りきりの生活が定着し運動不足になっているのが要因です。このままで心臓病を合併する危険が高まります。今日から1日30分のウォーキングを始めましょう。女子ボクシング王者のレイラ・アリ(Laila Ali)さんがスポークスパーソンを務め、「アメリカ人は運動を習慣的に行おう」と呼びかけます。
ウォーキングを始めよう「ウォーキング・ディ」(米国心臓学会)
 「運動を習慣として行うことは、脳卒中を予防するために大変に有効だ。身体活動は心臓血管を健やかにし、心疾患の危険性を減らす。ウォーキングは身近な取り組みやすい身体活動となる」とSattelmair氏は述べている。

 「どのような運動を行うと、どのタイプの脳卒中の予防に有効かはあきらかになっていない」としながらも、「運動をすることが予防につながることは確かだろう」としている。

 心拍数モニターを使用すればより客観的に評価することができるが、日常の感覚で速度を見分けることもできるという。「“会話をできるが、歌うことはできないくらいの速度”であると活発な歩行(4.8〜6.3キロメートル)に相当する。会話もできないくらいであるとペースが速すぎるので少し落とした方が良い。逆に歌えるくらいであれば、もう少しペースを上げた方が良い」とSattelmair氏は話す。

 米国心臓学会(AHA)では、成人は適度な強度の運動を週に150分以上、あるいは活発な有酸素運動を週に75分、さらには両方を組み合せて行うことを勧めている。4月7日には全米で「ウォーキング・ディ」を開催し、「1日30分のウォーキングが循環器に恩恵をもたらし、コレステロールと血圧を改善し、減量にもつながる」と啓発した。

Walking associated with lower stroke risk in women(米国心臓学会)

糖尿病の運動療法

 糖尿病の治療でも、運動療法は食事療法とともに、もっとも重要とされる。運動を続けることで、筋肉細胞などのインスリンに対する感受性が良くなり、インスリン分泌量の不足を補うだけでなく、肥満のある人では減量、高齢の人では筋力や骨を丈夫にする効果を得られる。運動そのもののエネルギー消費による高血糖改善効果もある。

 ただし、糖尿病合併症や糖尿病以外の病気がある場合や、高度な肥満がある場合、基礎体力が低下している場合には、運動を始めるときに注意が必要となる。

 また、インスリンや経口血糖降下薬を服用している患者では、糖質(砂糖やブドウ糖)を含む食品の携行など、運動に伴う低血糖への対策が必要なことがある。

 運動による悪影響や事故を防ぐために、メディカルチェックを受け、望ましい運動の強度や適した時間帯、低血糖対策について医師のアドバイスを得た方が良い。

糖尿病の運動療法について詳しくは下記ページへ
運動療法のコツ(1) [基礎](糖尿病セミナー)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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