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2010年02月02日
膵島移植に道:移植膵島の拒絶反応を抑える治療法を開発
福岡大学と理化学研究所は、膵臓の膵島細胞移植で蛋白質の一種「HMGB1」が拒絶反応を促し、移植効果を妨げることをマウス実験でつきとめた。膵島細胞の移植療法では、いかに移植した細胞への拒絶反応を抑制するかが課題になっている。拒絶反応が起こりにくくする治療法を開発すれば、膵島細胞移植を効率的に進められるようになる。
インスリンを出す膵島細胞を患者の肝臓内に移植し生着させる膵島細胞移植は、すでに世界で500例以上が報告され、2004年から日本でも6病院で18例が行われた。インスリン注射に代わる有効な治療法として期待されている。 他人の臓器を移植すると、免疫抑制剤を使用しても数時間のうちに早期拒絶反応が起こり、移植した膵島細胞が破壊される。そのため1人の患者に2〜3人から採取した膵島細胞を移植しなければ治療効果を得られない。膵島細胞移植を成功させるために、移植早期拒絶反応を抑えることが大きな課題となっている。
移植直後の膵島細胞のHMGB1
研究チームは、膵島細胞が破壊された糖尿病のマウスを使い、これまで核内蛋白質として知られていたHMGB1が細胞外に放出されると、移植先の免疫を活性化させてしまい、移植細胞の早期拒絶反応を引き起こすことをあきらかにした。研究では細胞内のHMGB1を定量し、膵島細胞にはほかの細胞の数十倍のHMGB1があることも分かった。
血中のHMGB1量を測定し、拒絶反応の発症を判定するシステムを開発し、HMGB1の血中濃度が上がると、免疫作用をもつインターフェロン・ガンマも増加するが、HMGB1の抗体を投与することで、移植効率が飛躍的に改善することをつきとめた。この抗体により移植効率は約4倍に改善し、副作用も極めて少ないという。
膵島細胞移植は体の負担が少なく、1型糖尿病患者に対する根本的な治療として期待されているが、提供者が少なく膵島細胞が不足している。1度の移植で膵島細胞を生着できれば、少ない提供者でより多くの患者を救うことができるようになる。
福岡大学医学部の安波洋一教授(再生・移植医学)によると、HMGB1の抗体を治療薬として投与し拒絶反応を抑える方法がヒトでも確立されれば、膵島細胞移植の普及につながり、糖尿病治療に画期的な進歩をもたらすという。
この研究成果は2日、米国臨床試験学会が発行する医学誌「Journal of Clinical Investigation」に発表され
赤矢印が生着した膵島
茶色が染色されたHMGB1
矢印は早期移植拒絶を受けた膵島細胞
茶色が染色されたHMGB1
矢印は早期移植拒絶を受けた膵島細胞
High-mobility group box 1 is involved in the initial events of early loss of transplanted islets in mice
The Journal of Clinical Investigation, doi:10.1172/JCI41360.
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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