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2010年04月26日

アルコールは糖尿病の人にとって妙薬か毒か 糖質ゼロなら大丈夫?

 「糖質ゼロ」「糖質オフ」といった表示をしたアルコール飲料は本当に低カロリーなのだろうか。
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない
 「糖質ゼロ」「糖質オフ」「カロリーオフ」といった表示をしたビールや発泡酒などの酒類が店頭をにぎわしている。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の早期発見を狙った特定健診・特定保健指導が昨年4月から始められ、肥満を気にする中高年が増えたことや、健康志向の高まりを受け、こうした酒類の売り上げは伸びている。

 しかし、「糖質ゼロ」と表示してあっても、カロリーは「ゼロ」ではないので注意が必要だ。健康増進法に基づく栄養表示基準では、飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば「カロリーオフ」と表示できる。実際には、量を少なくしていても糖質が含まれていたり、カロリーがある場合もある。

 そもそも酒類のカロリーは、糖質の量よりもアルコール度数の方が影響は大きい。アルコールは栄養表示基準で1g当たり7kcalで計算される。100mLは約100gなので、アルコール分5%であれば100mL当たり35kcal、350mL(レギュラーサイズ)では123kcalが目安になる。

栄養成分(350mL当り)
* 企業の公表している栄養成分表示による。
* 「糖質ゼロ」は100mLあたり糖質0.5g未満のものに表示可能(栄養表示基準による)。
お酒は適量を飲めば本当に妙薬になる?
 お酒はほどほどに飲んでいれば、むしろ体に良い面があるという研究報告は少なくない。しかし、たいていの場合は、「適量を過ぎて飲みすぎると体に悪い」という結果が出ている。

 文部科学省の研究助成を受け実施されている大規模コホート研究「JACC Study」で、日本人でのお酒と循環器病の発症との関連が調べられた。研究では、40歳から79歳までの男性約3万4800人と女性約4万8900人を対象に、14年追跡調査した。

 その結果、お酒を飲む男性では、1日2合の飲酒で脳卒中の死亡リスクが1.4倍、3合以上で1.7倍に増え、女性でも1日1合の飲酒で心疾患の死亡リスクが1.5倍に、2合以上になると4.1倍に増えることが分かった。一方で、男性は1日2合未満、女性は1合未満に抑えている場合は死亡リスクが低下していた。

 この研究では、アルコールの「適量」はせいぜい1日に2合までという結果になったが、国の健康づくりの指針「健康日本21」では「節度ある適度な飲酒」として、通常のアルコール代謝能力があれば1日平均のアルコール量で約20gとしている。これは日本酒換算で1合、ビールなら中瓶1本、ワインは2杯程度が目安になる。

 基準は糖尿病の人を対象にしたものではなく、あくまで一般的なものとして理解するべきだが、お酒を飲むときに、この程度の量を「適量」だと思える方は、そう多くはない。お酒はアルコール自体が高エネルギーで、つまみなどを食べると簡単にカロリーをとりすぎてしまう。それで糖尿病患者の食事指導では多くの場合、やはり「原則禁酒」としたほうが体には良いとされている。

アルコール飲料の成分一覧
五訂日本食品標準成分表に基づく
「糖尿病の人は禁酒が基本」はなぜ
 糖尿病の人が「原則禁酒」とされる理由は次の通り
  • アルコールは高カロリー。
  • アルコールは肝臓からのブドウ糖放出を抑えるので、血糖値が下がりやすくなる。
    血糖降下薬やインスリンで治療している人では低血糖が起こるおそれがある。
  • 食欲を増進させるはたらきがある。食事の指示エネルギー量を守れなくなるおそれがある。
  • つまみをとるとカロリーや塩分の摂取量が過剰になりやすい。
  • 中性脂肪(トリグリセライド)が高くなりやすい。
  • 肝臓機能障害をまねきやすい。
 血糖コントロールが安定していて、肝機能障害や合併症があらわれていなければ、「1日160kcal程度までなら大丈夫」といわれることもある。ただし指示エネルギー量を守ることや、禁酒日を設けることが条件となる。

 アルコール摂取が許される条件としては次のことが挙げられることが多い

  • 血糖コントロールが良好で安定している
  • 体重が管理できている
  • 合併症ほか、飲酒制限が必要な病気がない
  • 高血圧、動脈硬化があっても軽い
  • 飲酒量の限度を守る自制心がある
Alcohol Consumption and Mortality From Stroke and Coronary Heart Disease Among Japanese Men and Women
Stroke, 2008; 39:2936-2942

関連情報

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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