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2009年02月27日
血管障害の「残された危険因子」を探る国際プログラム「R3i」がスタート
- キーワード
- 糖尿病合併症
これらの心血管疾患、とくに大血管障害(動脈硬化)の発症・進展を抑止するために、その主要危険因子と考えられるLDLコレステロールに対し、現在ではスタチンを中心とする脂質低下療法が広く行われるようになった。実際それにより動脈硬化性疾患の発症リスクが減少することは、すでに数々の大規模スタディが証明している。
糖尿病がある場合、動脈硬化性疾患を発症する以前ですでに、心筋梗塞の既往歴のある非糖尿病の患者さんと同程度にイベント発生の危険が高くなっていることを示した報告もあり、「残された危険因子」を見出し治療することがより重要とされる。また糖尿病では大血管障害による生命予後の悪化だけでなく、細小血管障害による網膜症、腎症などもQOLを低下させる要因として見過ごすことができず、それらに対する治療戦略もまだ未解決の課題が残されている。

N Engl J Med 352: 1425-1435, 2005
その答えを探るために、「R3i(Residual Risk Reduction Initiative)」という世界的な取り組みが2008年にスタートした。これは世界40ヵ国で指導的な立場にある心疾患や内分泌領域の専門家が参加し、心血管疾患と細小血管障害について国際的な調査を進めるプログラムである。運営委員の一人として日本からは門脇孝氏(東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授)が参画している。
高LDLコレステロール血症以外の危険因子としては現在、高トリグリセライド血症(とくに食後高トリグリセライド血症)、低HDLコレステロール血症、small dense LDLなどが知られており、これらへのアプローチもR3iプログラムの研究課題になるものと想定される。
近年、血管障害の強力なリスクファクターとなり得る糖尿病やメタボリックシンドロームの患者数が先進国のみならず、アジア諸国でも急増しており、その予防と適切な治療の普及が急務となっている。同プログラムが結実し、より効果的かつ確実な血管障害抑止の戦略が確立されることが望まれる
関連情報
R3iの公式ページ(英文)
糖尿病性血管障害のより確実な抑止のために(糖尿病NET)
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