ニュース
2009年02月04日
インスリンポンプ:低血糖を抑えながら血糖コントロールを改善
- キーワード
- インスリンポンプ/CGM
例えば、明け方から早朝にかけて血糖値が上昇する「暁現象」といわれる現象がある。血糖値は通常は夜間は低くなるが、明け方になると分泌されるホルモンや自律神経の緊張などの影響を受け、糖尿病でインスリン注射量の調節が適切でない場合、高血糖になることがある。
暁現象を改善するために、作用時間の長い中間型や持効型溶解インスリンの注射量を調節することで対応をはかることが多いが、それによる低血糖が懸念される。ポンプ療法によって、血糖値が高くなる時間帯から基礎インスリンが増えるように設定すれば、低血糖を増やさずに明け方の血糖上昇を抑えることができるかもしれない。
ポンプ療法は、プラスチック製の管を皮下に留置し少しずつインスリンを注入する治療法。基礎分泌に相当するインスリンを24時間にわたり正確に注入し、状態に合わせて基礎注入量の設定を調節ことができる。また、追加分泌(食事のときに必要なインスリン)をボタン操作で注入できる。治療が困難な例でも、より細やかな調整で正確にインスリンを投与することが可能になると考えられている。暁現象の多い患者や、勤務や生活のパターンが不規則な患者、厳格な血糖コントロールが必要とされる妊娠中にも有用

米国では公的な医療保険制度がなく、多くの人が個人で民間の保険会社や組合・団体が提供する医療保険に加入している。日本と医療保険制度や医療の体制が異なるのでただちに比較できないが、インスリンポンプの利用が増えた背景として、血糖コントロールが不良で治療が困難な患者でも低血糖の減少や血糖コントロールの改善ができ、糖尿病合併症の発症予防につながることを示した研究
研究では、ポンプ療法を3ヵ月以上行ったことのある平均年齢43歳の1型糖尿病患者100人を、持効型溶解インスリンと超速効型インスリン製剤によるインスリン注射を行うグループ(50人)と、ポンプ療法を行うグループ(50人)に分け比較した。米国の15施設で行われ、試験期間は5週間だった。
評価は血清フルクトサミン値と、治療の最終週に実施した24時間連続血糖モニタリングシステム(CGM)から得られたデータをもとに行った。血清フルクトサミン値は、HbA1c値に比べより近い過去の平均血糖値をあらわす。その結果、日中の低血糖や夜間(午前12時〜8時)の低血糖の頻度は同じくらいだったが、血清フルクトサミン値はポンプ療法の方がより低くなった(343 vs 355μmol/L)。
8〜21歳の1型糖尿病患者を対象に注射による治療とポンプ療法を比べた研究も発表されている。この研究は「Diabetes Care」2004年7月号に掲載された(文献3)。
インスリン療法を6ヵ月以上続けていた1型糖尿病患者32人(男性14人、女性18人)を、持効型溶解インスリンと超速効型インスリン製剤によるインスリン注射を行うグループ(16人、平均年齢 13.0歳、糖尿病罹病期間 5.6年)と、ポンプ療法を行うグループ(16人、平均年齢 12.5歳、糖尿病罹病期間 6.8年)に分け比較した。米国の1施設で行われ、試験期間は16週間だった。治療目標は、HbA1c値 7%未満、血糖自己測定値 70〜120mg/dL(食前)または90〜150mg/dL(就寝時)だった。
その結果、インスリン注射のグループではHbA1c値が8.2%から8.1%と有意な変化はみられなかったが、ポンプ療法では8.1%から7.2%と改善がみられた。血糖自己測定の平均値は、朝食前は両群で同等だったが、昼食前、夕食前、就寝時はいずれもポンプ療法のグループで有意に改善された。また、1日のインスリン用量も、注射では16週後に有意な変化はみられなかったが(1.1から1.2U/kg)、ポンプ療法では有意に減少した(1.4から0.9U/kg)。
文献
- Diabetes Metab Res Rev. 2002; 18 (Suppl. 1): S14-S20
Abstract http://www3.interscience.wiley.com/journal/91016166/abstract - Diabetes Care. 2005; 28 (3): 533-538
Full Text http://care.diabetesjournals.org/cgi/content/full/28/3/533 - Diabetes Care. 2004; 27 (7): 1554-1558
Full Text http://care.diabetesjournals.org/cgi/content/full/27/7/1554
インスリンポンプ/CGMの関連記事
- 1型糖尿病のランナーが東京マラソンを完走 CGMとインスリンポンプを組み合わせたシステムでより活動的に
- 1型糖尿病患者に「CGM+インスリンポンプ」を提供 必要とする人が使えるように 英国で5ヵ年戦略を開始
- 【座談会】先生たちのSAP体験談2 インスリンポンプの新機能を使って
- 日本IDDMネットワークが「1型糖尿病医療費助成事業」を開始 25歳までの成人の1型糖尿病患者の医療費を助成
- 【座談会】先生たちのSAP体験談 ~ご自身のこと、患者さんのこと~
- 簡単にポンプ療法を行える「バイオニック膵臓」を1型糖尿病患者向けに承認 自動化をさらに促進 FDA
- 近くの病院が地図から探せる!インスリンポンプ・SAP・CGMの治療が受けられる医療機関リスト
- 週に1回注射のインスリンが糖尿病治療を変える? 注射回数を減らし負担を軽減できると期待
- CGMとポンプを組合わせた「人工膵臓」は1型糖尿病の6歳未満の小児患者にも有用 血糖管理を改善
- 全国438施設掲載中!病院検索サービス「インスリンポンプ・SAP・CGM医療機関リスト」がリニューアル。デザインも一新!