ニュース

2009年10月20日

森林でのウォーキング 糖尿病患者向けツアーも実施

キーワード
運動療法
 有酸素運動は、酸素をとりいれ脂肪の燃焼を促す運動。運動時にはブドウ糖がエネルギー源として使われ、代謝が安定していれば、使ったブドウ糖の分だけ血糖値は下がる。いつでもどこでもできるウォーキングはその代表となる。しかし「同じ道を毎日ただ歩くだけでは飽きてしまいそうだ」という人も多い。

 森林浴を楽しみながら歩けるコースが全国に整備されている。糖尿病の人が参加できる観光ツアーも始められている。たまには「いつもと違うウォーキング」を試してみてはいかがだろう。

 森林でのウォーキングで特に期待できるのはリラックス効果。人工的な環境で生活することが多い現代社会では、さまざまなストレスを受けている。体や心にストレスがかかると、血糖値を上げるホルモンが分泌されやすくなり、インスリン抵抗性にも悪影響をもたらす。

宿泊・観光施設などを備えた「森林セラピー基地」 林野庁や同機構などが構成する森林セラピー実行委員会が、森林の環境整備や一定の検証に基づき選定している。緩い傾斜で構成されている、道幅を一般の歩道よりも広くとってある、歩きやすさを考慮してあるなどの条件を満たした、森林ウォーキングに適したコースが紹介されている。


[日時] 2009年11月6日(金)-8日(日)(2泊3日)
[同行スタッフ・添乗員] 糖尿病専門医、運動療法指導医、看護師、管理栄養士、観光健康指導士など
[企画監修] 公立大学法人 和歌山県立医科大学 観光医学講座
 森林では視覚、聴覚、嗅覚、触覚といった刺激が、交感神経と副交感神経にはたらきかけ、ストレスを軽減できると考えられている。林野庁所管の国土緑化推進機構などが推進している「森林セラピー基地」構想では、森林での運動による生理的な効果を調査している。

 ウォーキングの場所を森林と街中とで比較した調査では生理的な効果は同等だったが、森林での運動は血圧やストレスに関連するホルモンの分泌などについては一定の効果があるという結果になった。

 森林総合研究所などが行った、森林と都市で交互に15分間歩行し、心拍変動、収縮期血圧、HDLコレステロール、唾液中のコルチゾールなどを比較した実験では、いずれも森林でのウォーキングはより良好な結果になった。森林でのウォーキングでは運動量がより多くなり、参加者の満足度も高かった。

 自然や地域の文化に親しむ観光と、病気の予防や治療を結びつけようという本格的な試みも始まっている。和歌山県立医科大学観光医学講座は、糖尿病患者などを対象にした「糖尿病教育観光ツアー」を実施し、11月には世界遺産として有名な高野山・熊野古道での観光やウォーキングなどを取り入れた「紅葉の世界遺産 高野山の旅」ツアーを予定している。

 ツアーでは、糖尿病専門医、運動療法指導医、看護師、管理栄養士、観光健康指導士などが同行し、糖尿病についてわかりやすく教えてくれる。ふだんは医師や看護師とじっくり話せないという人も、旅行先での開放的な雰囲気のなか、気軽なおしゃべりから発見できることがたくさんあるだろう。

 世界遺産である高野山・熊野古道を観光しながら、和歌山の季節の素材を使った料理を楽しめ、管理栄養士から受ける食事の個別指導や、森林でのウォーキングや座って出来るエアロビックスなどの運動プログラムの講習を受けることができる。熊野古道ウォーキングのほか、自由参加の座談会、フリータイムも用意されている。

 今回のツアーの経験を活かし、糖尿病患者が安心して参加でき療養に役立つ観光ツアーを開発していこうという狙いもある。

和歌山県立医科大学 観光医学研究部門 観光医学講座

関連情報
「ストレス」や「こころの病い」への運動、リラクゼーションの効果
菅野 隆(セルフメディケーション推進協議会理事 健康運動指導士)

 治療を受けている糖尿病患者が運動を始める場合は、いくつか注意すべき点がある。
  • まずはメディカルチェック
     運動による悪影響や事故を防ぐためにメディカルチェックは必要。隠れた合併症はないか、運動で注意すべきことがないかなどを、主治医にチェックしてもらう。メディカルチェックは運動の継続中も受けるようにしたい。

  • 低血糖
     インスリンや経口血糖降下薬を服用している患者では、糖質(砂糖やブドウ糖)を含む食品の携行など運動に伴う低血糖の対策が必要なことがある。望ましい運動の強度や適した時間帯、低血糖対策については主治医に相談。
 運動前後のストレッチングや整理運動、膝や足の負担を軽減するウォーキングシューズ、夏季や暑い野外では水分補給や服装の準備も。

 糖尿病患者の運動療法について詳しい情報は下記ページへ
運動療法のコツ(1) [基礎](糖尿病セミナー)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲