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2008年08月08日

穿刺器具の“使い回し”の全国調査の結果 厚労省

 厚生労働省は、血糖自己測定(SMBG)を行うときに使う穿刺器具の複数使用の全国調査の結果を公表した。これまでに複数使用による感染事例の報告はない。
病院・診療所での複数使用 1万1000ヵ所以上
 この調査は、厚労省が今年5月に各都道府県などに24品目の穿刺器具について依頼したもので、その後、調査の対象品目を30品目に増やし、6月に再度調査を依頼していた。

厚生労働省
微量採血のための穿刺器具(針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの)の取扱いに関する調査結果について

主な内容 微量採血のための穿刺器具(針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの)の取扱いに関するQ&A

調査結果の概要
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/08/h0807-2.html
 現在使われている穿刺器具は次の3種類のタイプがある。
(1)器具全体がディスポーザブル(使い捨て)のもの。
(2)穿刺針と周辺部分がディスポーザブルで、針の周辺を含め交換するもの。
(3)穿刺針は交換するが、穿刺針の周辺はディスポーザブルではないもの。

 このうち(1)と(2)のタイプについては感染のおそれはないが、(3)のタイプは、針を交換しても針周辺部分に血液が付着していたときに「肝炎などの感染の可能性を完全に否定できない」と厚労省は公表している。そのため個人での使用に限っており、複数の人での使用を認めていない。

 全国調査は、(3)のタイプの器具を「複数人に使用してはならない穿刺器具」として、使用状況を調べるために実施した。

 その結果、同器具を複数の人に使用していた病院、診療所などは、合わせて1万1753施設に上ることが分かった。病院は8923施設が調査対象となり、3283施設で同器具を複数の人に使用していた。診療所は10万817施設が調査対象となり、8470施設が同器具を複数の人に使用していた。

 調査結果はホームページでも公開されており、医療機関の名称や器具の使用時期などを確かめることができる。該当する器具はすでに製造販売されていない製品を含め37品目ある。

 これまでに複数使用による感染事例は報告されていないが、厚労省は医療機関などに対し、同器具の複数の人への使用が認められた場合や、その可能性がある場合は、患者などに複数使用の事実について教え、受診勧奨するよう呼びかけている。

感染の危険は少ないと4学会が見解
 穿刺器具によって肝炎などに関連する可能性は、実際はどれくらあるのだろうか

 日本感染症学会など4学会は、穿刺器を使うときには末端キャップを押し付けて穿刺した後にすぐに器具を離すので、「血液で汚染される危険は極めて少ない」と見解を発表した

 同器具を針を交換し周辺部分を消毒し複数の人へ使用したために感染が起こった事例は、国内では1件も報告されていない。同学会らは、穿刺針を交換して、さらに穿刺針の周辺部位を消毒して使用した場合には、「感染の可能性は理論的には否定できないが、非常に低くなる」と説明している

 消毒をした上で複数の人に使用した場合について、同学会らは、適正なやり方で消毒が行われていれば「感染のリスクはゼロに近い」として、「リスクをゼロにするには、穿刺器具の個人使用に限り、複数人に使用しないことが必要」としている。

微量採血用穿刺器具の取り扱いについて
(日本感染症学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会 2008年7月18日)

 感染が心配な場合は、医療機関で血液検査を受ければ確かめられる。
 ただし、厚労省は「検査を受けた結果、感染症検査が陽性であっても、必ずしも採血器具が原因であるとは限らない」としている。
 ウイルス性肝炎についての情報は、下記の厚生労働省のホームページでみることができる。
「分かりやすいウイルス性肝炎」
「B型肝炎について(一般的なQ&A)」

関連情報
血糖自己測定(SMBG)-採血のための穿刺器具の取り扱いについての安全情報
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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