ニュース

2024年10月10日

【炎症を抑える2つの食品】慢性炎症は糖尿病と合併症のリスクを高める 魚や納豆を食べると炎症は減少

 体のなかでくすぶるような炎症状態がだらだらと続く「慢性炎症」は、老化、動脈硬化、2型糖尿病、高血圧、肥満、がんなどと関連が深いことが分かってきた。

 慢性炎症は糖尿病とも関連が深く、心血管疾患、脳卒中、腎腎臓病、歯周病など糖尿病の合併症を引き起こす原因になる。

 バランス良く食べる食事スタイルにより、慢性炎症を予防しやすい。慢性炎症を防ぐのに効果的な食品も分かってきた。

炎症がじわじわ続く慢性炎症は「万病のもと」

 「炎症」というと、赤く腫れたり熱をもったりするイメージを抱く人が多いかもしれないが、体のなかでくすぶり続ける「慢性炎症」もある。

 慢性炎症は最近の研究で、老化、動脈硬化、2型糖尿病、高血圧、肥満、がんなどとも関連が深いことが分かってきて、「万病のもと」として注目されている。

 自覚症状のない弱い炎症が、体内で長期にわたってじわじわ続くのが慢性炎症。細胞の老化や内臓脂肪の増加、さらには食事や運動不足も影響していると指摘されている。

 不健康な生活をしていたり肥満があると、炎症性サイトカインなどの炎症性物質が必要以上に作られ、正常な細胞も傷つくようになる。

慢性炎症は糖尿病とも関連が深い

 米カリフォルニア大学の研究によると、慢性炎症は2型糖尿病とも関連が深く、心血管疾患、脳卒中、腎腎臓病、歯周病など糖尿病の合併症を引き起こす原因になる。

 とくに内臓脂肪がたまっていて血糖値が高くなりやすい人は、免疫細胞のひとつであるマクロファージなどが炎症性サイトカインを分泌し、血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性が亢進しやすくなるという。

 インスリンを分泌する膵β細胞でも、炎症反応が続くことで、インスリン分泌能や増殖能が障害されて、血糖値が上がりやすくなるとも指摘している。

不健康な食事が慢性炎症の原因に

 オハイオ州立大学が発表した新しい研究によると、慢性炎症の原因のひとつは不健康な食事だ。米国人の10人に6人が炎症を誘発しやすい食事をしているという。

 野菜・全粒穀物・魚介類・大豆・豆類・果物などをバランス良く食べる食事スタイルにより、慢性炎症を予防しやすいと考えられている。

 「体の炎症を起こしにくい、全体的なバランスの良い食事をすることも重要です」と、同大学公衆衛生学部のレイチェル メドウズ氏は言う。

 「たとえば、野菜や果物を食べている人でも、アルコールを飲みすぎたり赤身の肉を食べすぎると、炎症が誘発されやすくなる可能性があります」としている。

 研究グループは、2005~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した3万4,500人以上の成人の食事を調査し、45種類の食事成分について食事性炎症インデックスを使用して解析した。

慢性炎症を改善する食事 1
サバやアジなど魚が慢性炎症を軽減

 それでは慢性炎症を防ぐために、どんな食事をしたら良いのだろうか?

 カリフォルニア大学の別の研究では、サバ・アジ・イワシ・マグロ・サンマなどの青魚に多く含まれn-3系脂肪酸は、慢性炎症とインスリン抵抗性を軽減するのに非常に効果的であることが示された。

 食事でn-3系脂肪酸、とくに魚油に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)を多くとっていると、炎症を引き起こすマクロファージの受容体が活性化し、炎症反応が抑制されるという。

 「とくに糖尿病や肥満のある人の多くは、インスリン感受性が低下し、インスリンの働きが低下し、血糖値が上昇しやすくなっています」と、同大学内分泌代謝科のジェロルド オレフスキー氏は言う。

 「食事を工夫することで、糖尿病や肥満、がん、心臓血管疾患などに対する炎症の深刻な影響を軽減できる可能性があります」としている。

慢性炎症を改善する食事 2
ヨーグルトや納豆などの発酵食品が腸内細菌の多様性を高める

 慢性炎症を軽減するために効果的な食品は他にもある。それは発酵食品だ。

 スタンフォード大学の研究によると、発酵食品を多くとる食事スタイルは、腸内細菌の多様性を高め、炎症を減少させるのに効果的だ。

 発酵食品は、ヨーグルト・納豆・漬け物・発酵チーズ・キムチ・発酵ピクルス・ケフィアなどがある。

 研究グループは、36人の健康な成人を対象に、発酵食品あるいは食物繊維の多い食品のいずれかを含む食事を10週間とってもらう、ランダム化比較試験を実施した。

 その結果、発酵食品を摂取した群は、腸内細菌の全体的な多様性が増加し、その摂取量が多いほど効果は強まった。

 さらに、発酵食品を摂取した群は、4種類の免疫細胞の活性化が低下し、血液サンプルで測定したころ、19種類の炎症性タンパク質のレベルも低下していた。

 そのうちインターロイキン-6は、炎症性サイトカインの一種で、2型糖尿病や慢性ストレスなどの症状とも関連している。食物繊維のみをとった群では、こうした効果はみられなかった。

 「食生活を少し変えるだけで、腸内細菌叢と免疫系に好ましい影響がでてきます。腸内細菌叢の多様性が低いことは、肥満や糖尿病とも関連していると考えられます」と、同大学で微生物学や免疫学を研究しているエリカ ソネンバーグ氏は言う。

 「発酵食品など腸内細菌をターゲットにした食品は、炎症を軽減する効果的な手段となる可能性があります」としている。

Type 2 Diabetes: Inflammation, Not Obesity, Cause Of Insulin Resistance (カリフォルニア大学サンディエゴ校 2007年11月7日)
Study highlights pervasiveness of inflammation in American diet (オハイオ州立大学 2024年10月1日)
Socio-demographic differences in the dietary inflammatory index from National Health and Nutrition Examination Survey 2005-2018: a comparison of multiple imputation versus complete case analysis (Public Health Nutrition 2024年9月27日)
Why fish oils work swimmingly against inflammation and diabetes (カリフォルニア大学サンディエゴ校 2010年9月4日)
GPR120 Is an Omega-3 Fatty Acid Receptor Mediating Potent Anti-inflammatory and Insulin-Sensitizing Effects (Cell 2010年9月3日)
Fermented-food diet increases microbiome diversity, decreases inflammatory proteins, study finds (スタンフォード大学医学部 2021年7月12日)
Gut-microbiota-targeted diets modulate human immune status (Cell 2021年8月5日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲