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2023年08月03日
糖尿病治療薬のメトホルミンに筋肉の回復を高める作用が 筋肉減少・筋力低下を防ぐことが課題に
糖尿病治療薬として広く使われているメトホルミンに、筋肉の回復を高める作用があるという研究が発表された。
糖尿病の人にとっても筋力の低下を防ぐことは大切な課題になっている。筋肉には、体を支え、動かし、エネルギーを貯蔵するという機能がある。筋肉量が多いほど、健康に長生きできるという報告がある。
メトホルミンは糖尿病治療薬として広く使われている
糖尿病治療薬として広く使われているメトホルミンに、筋肉の回復を活性化する作用があるという研究を、米国のユタ州立大学が発表した。 やはり、医師から処方された薬を、指示通りきちんと服用し続けることが重要だ。 メトホルミン(ビグアナイド薬)は、2型糖尿病の治療に広く利用されている薬で、肝臓などで作用し、肝臓で糖を作る「糖新生」を抑えることで血糖を下げると同時に、血糖値を下げるインスリンの効きを良くする。 インスリン分泌を刺激する消化管ホルモン(インクレチン)の分泌を促したり、筋肉などでインスリンの効きを良くするといった特徴があることも報告されている。糖尿病の人にとって筋力の低下は重大な課題
「筋肉の機能と糖尿病を結びつけて考える人は少ないかもしれません。しかし、糖尿病の人にとっても筋力の低下も重大な課題になっています」と、同大学医学部理学療法・運動トレーニング部のミカ ドラモンド教授は言う。 筋肉には、体を支え、動かし、エネルギーを貯蔵するという機能がある。筋肉量が多いほど、健康に長生きできるという報告がある。 筋肉が減ると、筋肉がブドウ糖を消費する量が減り、血糖値が上がりやすくなる。筋肉の量が減ると、ブドウ糖をためる場所が少なくなり、血糖を調節する力が低下し、血糖値が上昇しやすくなる。 しかし多くの人は、年齢を重ねると筋肉が低下する。30〜50歳代の中年期にあまり運動をしないで過ごすと、高齢者になると筋肉が減少する。そうなると、転倒や入院、糖尿病などの慢性疾患のリスクが上昇する。 筋肉が減ることで、運動機能が低下し、転倒などの危険も高まるだけでなく、免疫力の低下などの深刻な影響があらわれる。メトホルミンが筋肉の線維化や硬化を抑制
今回の研究で、半世紀以上にわたり糖尿病治療薬として利用されているメトホルミンが、高齢者がケガや病気からより早く立ち直るのを促している可能性があることが示された。 筋肉の低下に影響をもたらす老化細胞は、筋肉の線維化や組織の硬化の原因になる炎症を促す因子を分泌している。 メトホルミンは細胞レベルで、筋肉の低下に影響をもたらす老化細胞などを標的として、筋萎縮や筋線維化、炎症を抑制するとしている。 「長期間の入院などで安静状態が続くと、関節の運動制限が生じ、日常生活動作の能力低下をまねくことがあります。これには、骨格筋の線維化にともなう伸張性の低下が関与すると考えられています」と、ドラモンド教授は説明する。 「若年者は、筋肉を使用しなくなった後に、比較的短期間で回復することが多いのですが、高齢者では、体が老化細胞を除去することが難しくなり、老化細胞が蓄積されていきます。それが、高齢者が筋肉を一定期間使用しなくなった後の回復が送れる原因のひとつになっています」としている。60歳以上の男女を対象に介入試験を実施
研究グループは今回、年齢が60歳以上の健康な男女の20人を対象に、介入試験を実施した。 参加者に、5日間の安静を求め、2週間の期間中に、10人の介入群にはメトホルミンを投与し、残りの10人の対照群にはプラセボを投与した。 その結果、安静中にメトホルミンを投与した群では、筋肉の萎縮が少なく、炎症を促進する因子が低下し、筋線維化を促すコラーゲンの沈着が少ないことなどが示された。 メトホルミンの抗老化特性は、これまでの研究でも報告されている。メトホルミンの使用により、筋肉量の減少を抑制したり、サルコペニアやフレイルの指標を減少することが報告されている。筋力の低下を防ぐために運動と栄養も必要
「糖尿病とともに生きる人が、年齢を重ねても筋肉の量と機能を維持できるようにすることが望まれます。筋肉の萎縮と低下は、さまざまな疾患の発症と早死を予測する強力な因子となります」と、同大学でメトホルミンについて研究しているジョナサン ペトロセリ氏は言う。 「今回の研究は、メトホルミンによる治療法と、老化による筋肉の使用不能後の筋肉の回復と改善のあいだの関係を明らかにしたものです」としている。 「今後の研究に期待しています。たとえば高齢者の膝の手術は回復が難しいことで知られていますが、回復期にメトホルミンを投与すると、筋肉がより早く正常に戻るのを助けられる可能性があります」と、ドラモンド教授は指摘している。 筋力の低下を防ぐために、運動と栄養の効果的な組み合わせが欠かせない。筋肉に負荷をかけて行う筋力トレーニングを行うことと、栄養面では、肉・魚・牛乳などの良質なタンパク質(アミノ酸)を含む動物性食品と、大豆などの植物性食品をバランス良く食べることが重要になる。 研究グループは次の目標として、患者が年齢を重ねても筋肉量と機能を維持できるようにするため、メトホルミンと、筋肉の成長を促し回復を加速するロイシンなどとアミノ酸と組み合わせた介入を計画しているという。 A Common Diabetes Drug Has a Surprising Side Gig: Muscle Protector (ユタ州立大学医学部 2023年7月25日)Disuse-induced muscle fibrosis, cellular senescence, and senescence-associated secretory phenotype in older adults are alleviated during re-ambulation with metformin pre-treatment (Aging Cell 2023年7月24日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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