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2023年07月12日

糖尿病の人にとって「治療」は合併症など将来の不安・恐怖と関連 自己効力感をもつことが大切 ノボ ノルディスク

 2型糖尿病のとともに生きる人は、『治療』を病気と共存するための救済ではなく、将来的に発生しうる問題=脅威として認識している可能性があることが、福島県立医科大学やノボ ノルディスク ファーマなどの調査で明らかになった。

 「"自分で自分の健康状態をコントロールできる"という自己効力感を高めることが、こうした不安・恐怖をやわらげ、主体的に治療に参加するための入り口になる」と、研究者は指摘している。

2型糖尿病の人の治療に対する不安・恐怖を調査

 ノボ ノルディスク ファーマは、「都市に蔓延する糖尿病の克服(Cities Changing Diabetes)」プログラムの日本で最初のプロジェクトとなる「郡山市における糖尿病対策についての共同研究」の第2弾となる成果論文を発表した。

 研究では、福島県郡山市に在住する2型糖尿病のある市民106人に対し、大規模な対面式のインタビュー調査を実施。

 「一般的なこととして、糖尿病を治療しなかったり、治療がうまくいかなかった場合に、将来的にどのような問題が起きると思いますか?」といった質問をした。

 その結果、2型糖尿病のある人は、『治療』を病気と共存するための救済ではなく、将来的に発生しうる問題=脅威として認識している可能性が示された。

 「自分で自分の健康状態をコントロールできる」という自己効力感を高めることが、治療に対する不安・恐怖をやわらげ、主体的に治療に参加するための入り口になると、研究者は指摘している。

 たとえば、早い時期にインスリンを導入することは、長い目で見た場合に、より健康的で充実した人生につながるという選択肢になりえると考えられる。

合併症などに対する将来の不安や恐怖を強める治療戦略には弱点も

 研究では、「一般的なこととして、糖尿病を治療しなかったり、治療がうまくいかなかった場合に、将来的にどのような問題が起きると思いますか?」という質問への回答内容をカテゴリ化し、そのカテゴリと「治療継続状況」との関連性を分析した。

 その結果、"透析"や"インスリン注射"など侵襲的な意味をもつ用語で構成される、『治療』カテゴリの語を挙げた被験者に治療継続が多かったことが示された。

 ここから研究者は、下記のような考察および糖尿病対策を提示している。

  • 2型糖尿病のある人は『治療』を病気と共存するための救済ではなく、将来的に発生しうる問題=脅威として認識している可能性がある。
    (例:インスリン注射が必要になるほど悪化してしまうのが怖い)

  • 将来の健康リスクを強調することで治療を促す戦略は一般に「fear-based strategies (不安や恐怖心による戦略)」と呼ばれるが、そのようなリスクの強調(脅威を強調する)にもとづく治療戦略は、患者の自己効力感を低下させる危険性も指摘している。

     医療者はやむをえずそのような戦略をとる場合でも、患者を恐怖におとしいれるのではなく、ピアサポート(患者同士の支え合い)による成功体験の共有、看護師の適切な介入の促進、代替治療の幅広い選択肢の提示などの支援条件を整えることが重要となるとしている。

「自分で健康状態をコントロールできている」という自己効力感が大切

 論文は、ノボ ノルディスクがグローバルで展開する「都市に蔓延する糖尿病の克服 (Cities Changing Diabetes)」プログラムとして、2018年から福島県郡山市および福島県立医科大学(医学部衛生学・予防医学講座)と産官学連携で取り組んでいる、「郡山市における糖尿病対策についての共同研究」の内容を論文化したもの。

 責任著者である福島県立医科大学医学部衛生学・予防医学講座の日高友郎氏は、次のように述べている。

 「治療を継続できている2型糖尿病のある人のなかには、『治療を途中でやめた結果、糖尿病が進行して、侵襲性の高い治療を受けなければならなくなるのは嫌』、といった不安・恐怖が動機になっている方がいることに留意する必要があります」。

 「しかし、侵襲性の高い治療を避けたいという思いが強くなりすぎてしまうと、治療の選択肢が狭くなる懸念があります。早い時期にインスリンを導入することで、長い目で見た場合に、より健康的で充実した人生につながるという選択肢をとれるようにしておくことも大切です」。

 「自分で自分の健康状態をコントロールできる」という自己効力感を高めることは、こうした不安・恐怖をやわらげ、主体的に治療に参加するための入り口になるとしている。

 患者の自己効力感を高めるためには、周囲の医療者や家族などからの応援や、小さな目標を立てて少しずつ達成していくこと、さらには他の患者の成功事例を見聞きすることなどが有効だとしている。

 「本研究の成果が、治療に主体的に取り組むための後押しとなり、全国の患者ならびに社会全体の健康増進に繋がることを願っています」としている。

「糖尿病になっても人生を豊かに送ろう」という前向きな志向を

 「都市に蔓延する糖尿病の克服 (Cities Changing Diabetes)」は、糖尿病とともに生きる人の3分の2が在住している都市環境での糖尿病の劇的な増加に対応するためのパートナーシッププログラムで、ノボ ノルディスクが世界の各都市で展開しているもの。

 市の指導者や省庁、学会、糖尿病協会、健康保険会社、コミュニティグループ、企業などを含む100以上のローカルパートナーが、分野を超えた新たなかたちの官民パートナーシップで協力し、課題を特定し、新しい健康行動とポリシーを提供し、健康に影響を与える他の課題に関連づけている。

 これまでの研究では、「糖尿病になっても人生を豊かに送ろう」という前向きな志向をもつことが、治療の継続を後押しすることなどが示されている。

 「治療を自分自身の成長の機会と捉える」といった前向きな視点をもつことや、治療に希望がもてるように、さらにはこれからの人生を一緒に展望してもらえるような、良い人間関係や地域づくりに参加することも大切だとしている。

郡山糖尿病共同研究 (ノボ ノルディスク ファーマ)
Perceived Future Outcomes of Unsuccessful Treatment and Their Association with Treatment Persistence Among Type-2 Diabetes Patients: A Cross-Sectional Content Analysis (Diabetes Therapy 2023年6月20日)
Qualitative and Quantitative Study on Components of Future Time Perspective and Their Association with Persistent Treatment for Type 2 Diabetes(Diabetes Therapy 2021年10月27日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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