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2022年05月24日
3つの生活スタイルでフレイルや要介護のリスクを減少 いつもの生活に"ちょい足し"
▼中・高強度の運動、▼多様な食品の摂取、▼社会的な交流や行動の3つを組み合わせて実践するほど、要介護のリスクが大きく減少することを、東京都健康長寿医療センター研究所が明らかにした。
同研究所は、いつもの生活スタイルに栄養や運動を少し付け足すことで、簡単にはじめられる"ちょい足し"プログラムや、「フレイル予防スタートブック」を公開している。
フレイルのリスクを減少する3つの生活スタイル
東京都健康長寿医療センター研究所は、▼中・高強度の運動、▼多様な食品の摂取、▼社会的な交流・活動、を組み合わせて実践するほど、要介護化(要支援・要介護状態の新規発生)リスクが大きく低減することを明らかにした。 フレイルは、加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、糖尿病などの慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身が脆弱になった状態。多くの高齢者は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられている。 日本では、若いうちは、過体重や肥満、2型糖尿病など、「過栄養」の食事が深くかかわる慢性疾患が多く、年齢を重ねると、やせ・フレイル・サルコペニアなどの「低栄養」が増える、「栄養障害の二重負荷」が課題になっている。 糖尿病の人では、膵臓からのインスリンの分泌の能力も、多くの場合で加齢とともに減少していく。また筋肉量の低下や内臓脂肪の増加、活動量の低下などから、インスリンの血糖を下げる効果を得られにくくなりやすい。 身体活動や運動を習慣として行い、多様な食品を摂取し、社会的な交流や活動を行うことが、それぞれ独立して介護予防に効果的であることは、これまで多くの研究で示されてきた。しかし、これらの健康行動を組み合わせて実践することにより、介護予防の効果がどれだけ高まるのかについてはよく分かっていなかった。
[運動・多様な食品の摂取・社会的な交流や活動]を組合わせるとフレイルのリスクは減少する
出典:東京都健康長寿医療センター研究所 ヘルシーエイジングと地域保健研究
都内の65~84歳の男女7,822人を3.6年間調査
そこで研究グループは、▼中・高強度の運動、▼多様な食品の摂取、▼社会的な交流や行動実践が、要介護化リスクに及ぼす累積的な影響とその集団寄与危険割合を、縦断分析によって調べた。 今回の研究では、東京都内の65~84歳の男女7,822人(男性3,966人、女性3,856人、平均年齢73.6歳)を対象に、3.6年間の追跡研究を行った。運動・多様な食品摂取・社会交流の各基準を充足することで、集団の要介護化が何%減少するのかを明らかにした。 質問紙によって、2016年時点の、中・高強度の運動の量(週150分以上)、食品摂取の多様性の得点(3点以上)、対面/非対面交流(週1回以上)の、それぞれの充足の有無を評価し、これらの充足数と3.6年間の新規要支援・要介護認定との関係を分析した。 中・高強度の運動は、普通の歩行以上の強度で行う活動。国際的な運動ガイドラインでは、週に150分以上の運動・身体活動を行うことが推奨されている。 また、食品摂取の多様性については、10食品群[魚介類、肉類、卵類、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜類、海藻類、いも類、果物類、油脂類]のうち、最近1週間で、ほぼ毎日食べた食品群を1点とし、その合計を10点満点で評価した。 食品摂取の多様性の目標値は、同センターの「健康長寿新ガイドライン」では7点以上とされている。研究では、自記式郵送調査では平均点が低くなる傾向があるので、目標値はあくまで7点以上だが、解析対象者の中央値(3点)以上を充足とした。3つすべて実践していると要介護化リスクは46%減少
その結果、これら3つの健康行動の充足数が増えるほど、3.6年間の要介護化リスクが大きく低減することが示された。 具体的には、要介護化リスクは、3つの健康行動をいずれも実践していない群と比較して、いずれか2つ実践している群で35%、3つすべて実践している群で46%、それぞれ有意に減少した。 また、高齢者全員(3つすべての健康行動をすでに充足している者を除く)が、3つすべての健康行動を充足した場合、その集団での3.6年間の要介護化は16%減少することが示唆された。
運動・多様な食品の摂取・社会的な交流や活動
2つ実践していると35%、3つすべて実践していると46%、要介護化リスクは減少した
2つ実践していると35%、3つすべて実践していると46%、要介護化リスクは減少した
出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2022年
いつもの生活スタイルに栄養や運動を少し足す "ちょい足し"プログラム
研究は、東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チームの藤原佳典研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」にオンライン掲載された。 研究結果から、地域での介護予防の取り組みとして、運動・多様な食品摂取・社会交流のうち、足りない行動要素を、個人の生活習慣や高齢者の自主グループ活動などに付加することが有用である可能性が示された。 「本知見をもとに、通いの場などの介護予防機能の強化を図る"ちょい足し"プログラムを体系化し、高齢者や自治体職員、専門職への研修を通して各地で普及・展開しています」と、研究グループでは述べている。 同研究では、フレイル予防のポイント、地域で取り組むためのポイント、運動、栄養、社会参加のプログラムなどを解説した「フレイル予防スタートブック」や、"ちょい足し"プログラムについて、ホームページで公開している。 フレイル予防応援コンテンツ (東京都健康長寿医療センター研究所)地域で取り組む!フレイル予防スタートブック (東京都健康長寿医療センター研究所)
Combined Impacts of Physical Activity, Dietary Variety, and Social Interaction on Incident Functional Disability in Older Japanese Adults (Journal of Epidemiology 2022年4月15日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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