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2021年11月25日

孤独は糖尿病のリスクを高める? コロナ禍で1人で食事をする人が増加 孤独が苦痛なら社会的交流を

 他者や社会とのつながりや交流を充実させることで、2型糖尿病のリスクを減少できる可能性があるという研究が発表された。

 孤独感が慢性化しストレスになっているのなら、社会的な交流が必要としている。

 1人で食事をすること(孤食)は、高齢者の心疾患リスクを上昇させるという調査結果も発表された。

 孤食は早食いになりやすく、食事内容も不健康になりがちで、体重増加、高血圧、コレステロール値の上昇につながるおそれがあるとしている。

孤独を感じている人は糖尿病リスクが高い

 他者や社会とのつながりや交流を充実させることで、2型糖尿病のリスクを減少できる可能性があるという研究も発表されている。研究成果は、欧州糖尿病学会(EASD)が刊行している医学誌「Diabetologia」に発表された。

 孤独が健康にどのように影響しているかについて関心が高まっており、これまでの研究では、孤独と心臓病や死亡リスクとは関連があることが示されている。

 そこで、英国のキングス カレッジ ロンドンの研究グループは、孤独が2型糖尿病にもたらす影響について調査をした。

 研究では、50歳以上の成人4,112人を対象とした英国縦断研究の2002~2017年のデータを分析した。データ収集時に、すべての参加者は糖尿病を発症しておらず、血糖値は正常だった。

 その結果、12年間で264人が2型糖尿病を発症した。孤独感を感じている人は、2型糖尿病の発症リスクが41%高いことが明らかになった。

 人が孤独感を感じるのは、自分の求めている社会的な交流と実際の関わり合いとのあいだのバランスをとれなくなり、社会的なニーズが満たされていないと実感しているときだ。米国成人の3人に1人と英国成人の5人に1人は、孤独を感じることがときどきあると答えている。

孤独を苦痛に感じているのなら社会的交流を

 「喫煙、飲酒、血糖値などの糖尿病発症に関わる要因や、うつ病などのメンタルヘルスの要素を考慮しても、孤独感と糖尿病の関連は強いことが示されました」と、同大学精神医学研究所のルース ハケット氏は言う。

 「ただし、孤独は人間関係の質によって定義されます。社会的な孤独や孤立を経験していても、当人は孤独感がなく、苦にもなっていないという場合もあります。今回の研究でも、孤立または一人暮らしは2型糖尿病の発症予測につながらないことが示されました」としている。

 「しかし、孤独感が慢性化しストレスとなり、毎日が苦痛の連続になっている場合は、そうしたネガティブな状態が糖尿病にも悪影響をもたらすおそれがあります」。

 「孤独を苦痛に感じ、ストレスになっているのなら、他者との前向きな関係を築き、お互いの助け合いを経験することが、2型糖尿病を予防・改善するために有用なツールになる可能性があります」としている。

1人で食事をしているととさまざまな健康リスクが

新型コロナ拡大の影響で孤食が増加

 心血管疾患(CVD)の発症リスクを減らすための取り組みの一環として、健康的な食生活に対する意識が高まっている。しかし、これまでの研究では、食事を家族やパートナー、仲間など、誰かと一緒にとることも重要であることは、ほとんど見過ごされてきた。

 社会の急速な変化により、1人で食事をすること(孤食)は増えている。単身世帯の増加が理由のひとつだが、新型コロナの拡大に対する対策として、各国でソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つことを求める対応が行われ、共食する機会が減っていることも影響している。

 さらに、宅配食や食品配達のサービスも普及し、スマホなどのモバイルで簡単に注文ができるようになったことも、孤食の増加を促しているとみられる。

 「孤食が増えるにつれ、健康への懸念は高まっています。過去の研究で、孤食の頻度が高いほど、内臓脂肪型肥満と高血圧のリスクが上昇することが報告されています」と、北米更年期障害協会(NAMS)の医療ディレクターであるステファニー ファウビオン氏は言う。

 「多くの人は1人で食べていると、より早く食べるようになる傾向があり、それが体格指数(BMI)、ウエスト周囲径、血圧、血中脂質レベルの上昇につながり、これらがメタボリックシンドロームやCVDのリスクを高めている可能性があります」としている。

 孤食がメンタルヘルスにも影響をもたらしている可能性もある。孤食はうつ病の危険因子になっている可能性を指摘した報告があり、メンタルヘルスはCVDのリスク上昇とも関連していることが知られている。

孤食をしている高齢女性は狭心症リスクが上昇

 今回の研究では、高齢女性の孤食が心血管疾患(CVD)の危険因子であることが示唆された。孤食とCVDの発症リスクとの関連を調査した研究は、これまでほとんど行われていない。

 研究は、韓国のカトリック大学校のハン-ギョ チョイ氏らによるもの。研究グループは、2016年の韓国国民健康栄養調査のデータから65歳以上の女性590人を抽出し、対象者を孤食しているか、誰かと一緒に食事をしているかで分類し比較した。

 その結果、孤食群では共食群に比べて、食品の栄養表示に対する意識が薄く、表示内容の活用頻度も低く、表示から受ける影響も低いことが示された。また孤食群では、カロリー、炭水化物、食物繊維、ナトリウム、カリウムの摂取量が少なかった。さらに、冠動脈疾患の症状の1つである狭心症になるリスクが2.58倍に上昇することも明らかになった。

社会的なつながりを促進しウェルビーイングを実現

 「今回の研究では、1人で食事をしている高齢女性の8割は、配偶者を亡くした女性でした。そうした女性は、経済的に困窮し、栄養摂取量が少なく、外出をおそれる傾向があり、抑うつ状態にもなりやすいと予想されます」と、ファウビオン氏は言う。

 「同様の問題は、1人暮らしの高齢男性にも当てはまることは十分考えられます。これまで、社会的孤立と社会経済的な地位の低下は関連することが指摘されています」としている。

 「社会的に孤立している高齢者が、有意義で社会的なつながりを築く方法をみつけることは、栄養だけでなく、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的な幸福)の実現にもつながり、医療・介護費の削減の効果も期待できます」と、ファウビオン氏は指摘している。

 こうした高齢者を助けるために、地域や隣人が手を差し伸べたり、高齢者センターなどの公共プログラムで高齢者の社会活動を促す取り組みをすることは可能だ。オンラインでの同じ立場の人達との交流や、支え合いの機会をつくることなども重要になるとしている。

 「このコロナ禍で、社会とのつながりの場を設けたり、他者を助けることが、精神・身体の健康を保つために必要であることを、多くの人が身をもって経験しています」としている。

Loneliness predicts development of type 2 diabetes(キングス カレッジ ロンドン 2020年9月16日)
Loneliness and type 2 diabetes incidence: findings from the English Longitudinal Study of Ageing(Diabetologia 2020年9月15日)
Can eating alone be bad for your heart?(北米更年期障害協会 2021年11月3日)
Association between eating alone and cardiovascular diseases in elderly women(Menopause 2021年11月1日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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