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2021年07月26日
「健康的な肥満」は間違い 糖尿病や高血圧などのリスクが上昇 「肥満の解消を」とアドバイス

肥満ではあっても、血圧や脂質、血糖などの検査値に異常がみられないタイプの人がいる。「健康的な肥満」というものは、本当にあるのだろうか?
そうした「健康的な肥満」の人も、年齢を重ねると、高血圧や2型糖尿病などの疾患のリスクが高くなり、心臓病や脳卒中などの発症が増えることが、大規模な研究で明らかになった。
「高血圧や糖尿病などに対策するために、肥満のある人は、食事や運動などの生活スタイルを見直して、肥満を解消する対策をするべきです」と、研究者は報告している。
そうした「健康的な肥満」の人も、年齢を重ねると、高血圧や2型糖尿病などの疾患のリスクが高くなり、心臓病や脳卒中などの発症が増えることが、大規模な研究で明らかになった。
「高血圧や糖尿病などに対策するために、肥満のある人は、食事や運動などの生活スタイルを見直して、肥満を解消する対策をするべきです」と、研究者は報告している。
検査値に異常がみられない「健康的な肥満」
代謝的に「健康的な肥満」とは、体格指数(BMI)が高く肥満と判定されるものの、血圧や脂質、血糖などの検査値に異常がみられないタイプの肥満だ。
しかし、スコットランドのグラスゴー大学の研究によると、「健康的な肥満」は実際にはありえない。そうした人は、今は検査値に異常が出ていないものの、年齢を重ねると高血圧や2型糖尿病などの疾患のリスクが高くなることが多いという。
肥満は多くの場合で、血糖値や血圧値の上昇、インスリン抵抗性の促進など、有害な代謝の問題を引き起こす。しかし、肥満の人のなかには、これらの影響を受けておらず、血圧や血中脂質が正常で、インスリンのレベルも健康的、全身の炎症もみられないケースがある。
これは「代謝的に健康な肥満(MHO)」とも呼ばれており、その割合は人口の3~22%と推定されている。
「肥満で正常な代謝プロファイルをもっている個人は、本当に生涯にわたり健康なのでしょうか? それとも、やがて肥満に関連する健康上の問題が発生し、リスクが高いのでしょうか? このことを確かめる必要があります」と、グラスゴー大学健康福祉研究所のレデリック ホー氏は言う。
「健康な肥満」の人は糖尿病リスクが4.3倍に上昇
「UKバイオバンク」は、遺伝的素質や環境因子が健康にもたらす影響を調査している、英国の大規模な前向きコホート研究だ。研究グループは、UKバイオバンクに参加した、身長、体重、血圧、血液バイオマーカーに関するデータが完全にそろっていて、かつ低体重ではない38万1,363人を対象に、11.2年(中央値)追跡して調査した。

すべての肥満の人にとって体重のコントロールは有益
「代謝的に健康な肥満の人は、決して健康的ではないことが分かりました。肥満ではなく健康な代謝プロファイルをもつ人に比べ、2型糖尿病、心臓発作と脳卒中、心不全、呼吸器疾患、すべての死因による死亡のリスクが大幅に高いことが明らかになりました」と、ホー氏は言う。
「とくに注目するべきなのは、代謝的に健康な肥満の人は、心不全や呼吸器疾患のリスクが高いということです」としている。
世界の肥満者の数は3億人以上と推定されており、対策をしないでいると増え続け、2030年までに10億人を超え、成人の20%を占めるようになると推測されている。肥満は、2型糖尿病、高血圧、心血管疾患(CVD)など、世界中で増え続けており深刻な健康問題をもたらす疾患と関連が深い。
「肥満のある人は、食事や運動などの生活スタイルを見直して、肥満を解消する対策をするべきです。体重のコントロールは、代謝プロファイルに関係なく、すべての肥満の人にとって有益です」と、ホー氏は指摘している。
「"代謝的に健康な肥満"という言葉は誤解をまねくため、臨床医学や公衆衛生の分野では避けるべきでしょう。リスクを定義するためのさまざまな戦略を検討する必要があります」としている。
People with 'healthy obesity' are still at increased risk of disease(Diabetologia 2021年6月10日)Are people with metabolically healthy obesity really healthy? A prospective cohort study of 381,363 UK Biobank participants(Diabetologia 2021年6月10日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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