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2020年12月15日

食後血糖値の上昇を抑える新しい米を開発 難消化性デンプンが通常の米の10倍 秋田県立大学

 秋田県立大学が、食後血糖の上昇抑制の効果がある新しい米「まんぷくすらり」を開発した。
 難消化性デンプンが通常の米の10倍ほど高く、食後の血糖値とインスリン分泌の上昇を抑えることが確認されている。
 食物繊維に似た働きがあり、腸内環境の改善も期待できるという。2型糖尿病の人や糖尿病予備群、肥満のある人にも有用である可能性がある。
難消化性デンプンが通常の米の10倍含まれる
 秋田県立大学が、「難消化性デンプン」(RS)が豊富な新しい機能精米「まんぷくすらり」を開発した。

 難消化性デンプンとは、体内の酵素であまり消化されないまま大腸に達するデンプンで、食物繊維に似た働きをする。

 ヒトの小腸まででは消化されず、大腸に届くデンプンなどは「レジスタントスターチ」とも呼ばれている。レジスタントスターチは、穀類やイモ類、豆類などの食品に含まれている。食後血糖の上昇を抑制する効果があることから、注目されるようになった。

 「まんぷくすらり」は、難消化性デンプンが通常の米の10倍ほど高く、この米を使った米飯や米菓で、食後の血糖値の上昇が抑制されることが確認されている。大腸環境の改善も期待できるという。
食後の血糖値とインスリン分泌の上昇を抑制
 「まんぷくすらり」は、秋田県立大学生物資源科学部の藤田直子教授の研究グループが中心となり開発したもの。2020年4月に品種登録出願公表となった。

 今後、米菓やきりたんぽ、ダイエットおこわなど、さまざまなレシピに応用し、販売していく予定だという。

 「まんぷくすらり」を使った米飯と米菓で、単回摂取試験を行ったところ、対照の品種に比べて、食後の血糖値とインスリン分泌量が有意に少ないという結果が得られた。この試験の詳細は科学誌「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」に発表された。

 難消化性デンプンは、血糖値上昇抑制という機能性以外に、腸内環境の改善も期待できるという。

 難消化性デンプンを豊富に含む大麦、小麦、米で動物実験を行ったところ、短鎖脂肪酸(大腸にいる善玉腸内細菌が、難消化性デンプンを分解して分泌する物質)が増え、便の量も増加するという研究が報告されている。

 食物繊維を摂取した場合と似た効果があり、短鎖脂肪酸が大腸内で増えると、大腸環境が改善し、大腸がんなどの予防効果も期待できるという。

「まんぷくすらり」を2020年収穫分より販売 スターチテック
 秋田県立大学発ベンチャー企業である「スターチテック」(代表:中村保典・秋田県立大学名誉教授)では、「まんぷくすらり」を2020年収穫分より販売している。

 「まんぷくすらり」の栽培地は、登熟時期に異常高温に当たると難消化性デンプン値が低下する傾向がある。また、あまりに寒冷であると、完熟まで行きづらい。そのため、栽培地としては秋田県はベストだという。

 「まんぷくすらり」は、一般の米と比べると粘りや柔らかさが少ないパラパラとした食感がある。はじめは普通の米やモチ米と混合すると食べやすいという。

 同社は、藤田教授の研究グループが中心になって開発されたジャポニカ系高アミロース米の精米「あきたぱらり」と「あきたさらり」の米粉を使った乾麺'ゆりの舞'も、販売している。

秋田県立大学 生物資源科学部 生物生産科学科

スターチテック

Effects of single ingestion of rice cracker and cooked rice with high resistant starch on postprandial glucose and insulin responses in healthy adults: two randomized, single-blind, cross-over trials(Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 2019年11月5日)
High-amylose rice improves indices of animal health in normal and diabetic rats(Plant Biotechnology Journal 2011年12月7日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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