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2020年08月28日

【新型コロナ】ヨウ素系のうがい薬が効くというのは本当? 学会が注意を呼びかけ

 ポビドンヨードを含むイソジンなどのうがい薬は、大阪府の吉村洋文知事などが新型コロナウイルスに効果があるとして、使用を呼びかける発言をしたことに端を発し、薬局やドラッグストアで売り切れが続出した。
 これを受けて、日本甲状腺学会などは見解を発表。厚生労働省もポビドンヨードを含むうがい薬や消毒液の安定供給を要請した。
コロナの重症化予防などの効果は明らかになっていない
 ヨウ素の酸化作用を利用した抗ウイルス・殺菌成分が「ポビドンヨード」。ポビドンヨードを有効成分としたうがい薬にはイソジンなどがある。独特の茶色成分に消毒作用があり、うがい薬や手指の殺菌などに広く利用されている。

 COVID-19の感染予防法としてヨウ素系うがい薬が一般市民に注目されたのは、大阪府の吉村洋文知事などが8月4日に、新型コロナウイルスに効果があるとして、ポビドンヨードを含むうがい薬の使用を呼びかける発言をしたことに端を発する。

 この影響を受けて、ヨウ素系うがい薬の購入を求める人たちが薬局やドラッグストアに殺到し、売り切れが続出した。

 これに対して、日本甲状腺学会、日本内分泌学会、日本内分泌外科学会は共同で、「新型コロナウイルス感染症にヨウ素の含まれるうがい薬が有効であるかについては、現時点では、科学的に評価のできる論文が発表されておらず、重症化予防などの効果は明らかになっていません」と見解を発表した。

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ヨウ素を過剰に摂取すると甲状腺機能に異常が起こるおそれが
 3学会はさらに、「ヨウ素系のうがい薬には7%のポビドンヨードが含まれており、15~30倍に希釈して使用しますが、1回のうがい液には14~28mgのヨウ素が含まれます。このうち口腔、咽頭粘膜から体内へ吸収されるヨウ素の量は不明ですが、日常、食品から摂取する量よりもかなり多いヨウ素が吸収される可能性があります」と、注意を促している。

 ヨウ素は生命維持に必須の甲状腺ホルモンの原材料だが、必要量以上に摂取することで、甲状腺機能に異常が起こることがあるという。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020」では、1日に摂取するヨウ素の上限量を3mgとしている。

 「一時的にこの量を超えて摂取することがあってもかまいませんが、長期間にこの量を超えて摂取することは甲状腺機能にとって好ましくありません。多くても1週間に20mgまでと考えられています」と、3学会は指摘。

 ヨウ素系うがい薬の使用する際の注意点として、以下の3点を挙げている――。

(1) 口腔内で数秒、うがいをするのみで、飲み込まないでください。

(2) 甲状腺機能異常をおこさないヨウ素系うがい薬の安全な使用頻度と使用期間については現在明らかではありません。5~6日間使用しても症状がよくならない場合は使用を中止してください。

(3) 甲状腺の病気のある方、甲状腺の病気にかかったことのある方はとくに注意が必要です。使用前に医師、薬剤師に相談しましょう(日本人女性の約20%は慢性甲状腺炎(橋本病)をお持ちという報告もあります)。
うがい薬がオークションやフリマアプリなどでも販売され品薄に
 8月4日に大阪府が行った会見をきっかけに、ポビドンヨードを含むうがい薬の需要が急激に高まり、関連製品が品薄となった。在庫確保のために受注の増大し、一部の製品の品薄が生じている。また、これらはオークションやフリマアプリなどでも販売されており問題になっている。

 そこで、厚生労働省は8月14日に事務連絡を発出し、ポビドンヨードを含む消毒液は、医療用消毒液として手術などにも用いられているので、供給に支障が生じることのないよう、必要な措置を講じるよう求めている。

 日本製薬団体連合会などに対して、ポビドンヨードを含むうがい薬や消毒液の安定供給を要請した。また、日本薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会、日本保険薬局協会に対しては、過剰な量の発注を控えるなど、安定確保のための取り組みを要請した。薬局・薬店などで在庫確保のための過剰な量の発注を控えるなど、必要な取り組みを行ってほしいと協力を求めている。

 さらに、ポビドンヨードうがい薬は第3類医薬品に該当し、これらの製品を医薬品の販売業許可なく販売するのは医薬品医療機器等法に違反しているとして、各都道府県の薬務課に対し、医薬品の販売業の許可なく販売しないよう監視指導の徹底を求めている。

日本甲状腺学会
日本内分泌学会
日本内分泌外科学会
感染症法に基づく消毒・滅菌の手引きについて(厚生労働省)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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