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2020年03月27日

【新型コロナウイルス】糖尿病の人が注意すべきポイントを解説

 米国糖尿病学会(ADA)などは、糖尿病とともに生きる人が新型コロナウイルス(COVID-19)に対し注意すべきポイントをまとめ公開している。
血糖コントロールが良好であれば健常者と変わらない
 これまでの報告によると、新型コロナウイルス(COVID-19)に感染した症例の80%以上は軽症で、感染した人の98%以上は生存しており、すでに治癒した人もいる。無症状のケースも少なくない。しかし、20%で呼吸困難が生じる重症や呼吸不全にいたった例が報告されている。

 重症化しやすいのは、高齢者に含め、糖尿病、心不全、呼吸器疾患がある人や、透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている人だ。

 COVID-19に感染すると、高齢者や糖尿病などの併存症のある人で重症化しやすいことが、中国などのデータで示されている。糖尿病のある人はとくに注意が必要となる。

 ただし、米国糖尿病学会(ADA)の見解では、糖尿病があっても血糖コントロールが良好であれば、COVID-19による危険性は、糖尿病でない人と同等だ。

 COVID-19は新型ウイルスなので、まだ十分なデータがないが、糖尿病であること自体がこのウイルスの感染しやすさ、重症化しやすさに直接につながるわけではないと強調している。

関連情報
ふだんから良好な血糖コントロールを維持することが重要
 しかし、糖尿病であって血糖コントロールが良好でないと、とくに高齢者では、感染すると病状が悪化しやすいことは明らかだ。COVID-19については、心疾患などの糖尿病合併症を発症しているとリスクは大きく上昇する。

 COVID-19に限らず、糖尿病の人が感染症にかかると悪化しやすい原因は、主に高血糖だと考えられている。

 血糖値が高い状態が続くことで、(1)ウイルスや細菌から体を守る好中球(白血球の一種)の機能が低下する、(2)免疫反応が低下する、(3)血流が悪くなる、(4)神経障害により感染症が悪化しやすくなる、(5)コルチゾールなどのホルモンやサイトカインなどのインスリンを効きにくくする物質が増え、血糖値がより上昇しやすくなることなどだ。

 感染症に対策するためにも、糖尿病の人はふだんから良好な血糖コントロールを維持し、糖尿病合併症を予防する必要がある。

新型コロナウイルスと糖尿病
(米国糖尿病学会が公開している音声)
シックデイに対処できる体制にしておく
 糖尿病のある人が感染症などにかかると、ふだんはしっかり血糖コントロールできていても、血糖値が乱れやすくなり、急性合併症が起こりやすくなる。そうした状態は「シックデイ」と呼ばれる。

 シックデイの際には、脱水予防のため、十分に水分を摂取することも必要になる。体温を毎日測定することも大切だ。

 また、感染症などによる発熱、下痢、嘔吐や食欲不振のために食事を摂れない状態になることもある。食事が困難なときは、薬を飲んでいる人は調整が必要になる場合があるので、早期に医療機関に連絡し指示を受ける必要がある。

 シックデイでなにより大事なことは、自己判断で経口血糖降下薬の服用やインスリン注射を中断してはいけないということ。そして、不安ならすぐに医療者に連絡をとって相談できる体制にしておくことが大切だ。
糖尿病ケトアシドーシスは注意が必要
 シックデイに緊急の対応が必要になる場合もある。

 糖尿病ケトアシドーシス(DKA)は、血糖をエネルギー源として利用できなくなり、代わりに脂肪が分解され使われてしまう緊急事態。脂肪の分解によってケトン体という物質が血液中に増え、血液が酸性に傾き(アシドーシス)、高度の脱水状態になる。

 血糖値は250mg/dL以上まで上昇することがあり、脱水、多飲、多尿、口渇、倦怠感などがあらわれ、ひどい場合は意識がなくなる昏睡状態に陥ってしまう。ケトアシドーシスは1型糖尿病の人でリスクが高い。

 また、高血糖高浸透圧症候群は、感染症などが原因で、血糖値が非常に高くなり、血液が過度に濃縮された状態。主に高齢の2型糖尿病患者でみられる。高齢者では体内の水分量が成人より少なく、脱水状態になりやすい傾向がある。

 糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群になると、すぐに医療機関で治療を受ける必要が出てくる。シックデイの際には、なるべく血糖自己測定やケトン体測定を頻回行うことが勧められている。
ふだんから感染症対策をしておくことが必要
 米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルス(COVID-19)の症状として、発熱・咳・息切れ・呼吸困難を挙げている。

 「風邪やインフルエンザなどと同様に、ふだんから感染症対策をしておくことが必要」と強調している。

・ 石鹸による手洗いや手指消毒用のアルコールによる消毒を行う
 頻繁に触れるものをきれいにして消毒する。食物、コップやグラス、タオル、道具などを共有しない。

・ 咳エチケットを行う
 咳やくしゃみをするときに、ティッシュがない場合は、手で口や鼻をティッシュで覆うか、袖、肘の内でおさえる。使用済のティッシュは処分する。

・ 混雑した場所を避ける
 咳などの呼吸器疾患の症状を示す人との接触を避ける。対面で人と人との距離が近い接触はおよそ2m。集会や会合、公共交通機関などは感染リスクが高い。また、自分の体調に気を配り、インフルエンザのような症状がある場合は外出を避ける。
家族に新型コロナウイルスの感染が疑われる場合は
 もしも家族が新型コロナウイルスの感染が疑われる場合には、どう対策すれば良いのか? 米国臨床内分泌医学会は次のことをアドバイスしている。

(1)部屋を分けて個室にし、食事や寝るときも別室にする。部屋を分けられない場合には、少なくとも2m以上の距離を保ったり、仕切りやカーテンなどを設置する。
(2)感染が疑われる家族の世話は、できるだけ限られた人が行う。免疫の低下した人が世話をするのは避ける。
(3)換気をする。共有スペースや他の部屋も窓を開ける。
(5)マスクをつける。マスクがないときなどに咳やくしゃみをする際は、ティッシュなどで口と鼻を覆う。
(6)手指を石鹸で洗ったりアルコール消毒をする。洗っていない手で目や鼻、口などを触らないようにする。
(7)手で触れるドアの取っ手やノブ、ベッド柵など共有部分を消毒する。
(8)汚れたリネン、衣服を洗濯する。

COVID-19 (Coronavirus)(米国糖尿病学会)
COVID-19(米国糖尿病学会)
AACE Position Statement: Coronavirus (COVID-19) and People with Diabetes(米国臨床内分泌医学会 2020年3月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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