ニュース
2019年05月10日
糖尿病の人が「高血圧」の治療を積極的に行うと合併症リスクが減少

2型糖尿病の人が高血圧の治療を受けることで、心血管疾患を含むあらゆる合併症による死亡リスクが減少するという研究が発表された。
血圧値を130/80mmHg以下にコントロールすることを目標に、食事や運動などの生活習慣の改善を含め、積極的な治療を行うことが推奨されている。
血圧値を130/80mmHg以下にコントロールすることを目標に、食事や運動などの生活習慣の改善を含め、積極的な治療を行うことが推奨されている。
糖尿病と高血圧は血管を痛める
糖尿病も高血圧も、どちらも症状のないまま進行し、さまざまな合併症を引き起こす。日本人でも、死因の上位を占める脳卒中や心筋梗塞などの要因は、糖尿病や高血圧が互いに影響しあって血管を痛め、動脈硬化が進行することだ。また、高血圧により糖尿病腎症が急速に進んでしまう。
脳梗塞や心筋梗塞は突然起こり、命を奪うこともある恐い病気だ。たとえ命は助かっても、しばしば麻痺などのために、不自由な生活を強いられてしまう。
脳梗塞も心筋梗塞も、動脈硬化のために血液が流れにくくなって起こる病気であり、糖尿病はその動脈硬化の進行を早めてしまう。糖尿病に高血圧が加わると、血管の伸張能力が低下し、血管壁の細胞が傷つき、動脈硬化がさらに進みやすくなる。
また、糖尿病腎症が進行し腎不全になってしまうと、機能を補うために透析治療が必要になる場合がある。
関連情報
10人中8人が血圧コントロールが不十分

糖尿病のある人の血圧コントールの目標は130/80mmHg
米国心臓学会(AHA)が発行する医学誌「Hypertension」に発表された新しい研究で、血圧値を130/80mmHg以下にコントロールするために積極的な治療を受けた2型糖尿病患者は、心臓発作、脳卒中、全死亡のリスクが低下することが明らかになった。
「血圧コントロールの目標を130/80mmHgとし、積極的な治療を行うことで、さまざまな合併症のリスクが低下することが分かりました。血圧コントロールの指標については多くの議論がありますが、今回の研究はその混乱の解決に役立ちます」と、アイルランド国立大学の予防循環器学部のビル マックヴォイ教授は言う。
マックヴォイ教授らは、2型糖尿病患者約1万1,000人を対象に、20ヵ国の215ヵ所の医療機関で4年間にわたり追跡調査を行った。血圧コントロールの集中的な治療を受けた患者とそうでない患者を比較し、合併症の発症にどれだけ差が出るかを調べた。
研究は、2型糖尿病患者1万人以上を対象に、血糖コントロールを強化することで心血管疾患をどれだけ減らせるかを調べている大規模臨床研究「ADVANCE」の一部として行われた。
高血圧の治療を行うと合併症リスクは減少
期間中に、心臓発作、脳卒中、糖尿病尋常、糖尿病網膜症を含む、837件の死亡と966件を超える主要な血管イベントが確認された。解析した結果、血圧コントロールの積極的な治療ほ受けた患者は、そうでない患者に比べ、死亡リスクが14%減少し、血管イベントが9%減少することが明らかになった。
これまでの研究では、血圧値が140/90mmHg以上であると、血圧コントロールが有益できることが明らかされているが、それ未満の患者ではどうかは不明だった。
「2回の血圧測定を行い、血圧値が連続して130/80mmHgを超えている場合は、より低い値にするために、どんな治療が必要となるかを医師と話し合うべきです」と、マックヴォイ教授はアドバイスしている。
糖尿病患者の3人に1人が高血圧も併発

インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している(インスリン抵抗性がある)ため、血糖を下げようとより多くのインスリンが分泌される。その結果、インスリンが交感神経を刺激して、血圧が上昇する。 ● 肥満
肥満になると、インスリンの働きを抑えるホルモンが増えて、インスリン抵抗性が強まり、血圧も上昇しやすくなる。 ● 腎機能の低下
糖尿病で腎機能が低下していると、腎臓からナトリウムをうまく排泄できないため、体内の水分量が増えて血圧が上昇する。 高血圧と診断されると、血圧がかなり高い人や心血管病の危険性が高い人、糖尿病や腎臓病がある人は、すぐに薬による治療を開始する場合もあるが、いずれにしても食事や運動などの生活習慣の改善は欠かせない。 減塩、運動、肥満の改善などは、治療法の基本となり、糖尿病の治療と高血圧の治療は一致する点が多い。 More intensive blood pressure therapy helps patients with type 2 diabetes regardless of cardiovascular risk(米国心臓学会 2019年4月29日)
Effects of Blood Pressure Lowering on Clinical Outcomes According to Baseline Blood Pressure and Cardiovascular Risk in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus: The ADVANCE Trial(Hypertension 2019年6月1日)
Know Diabetes by Heart(米国心臓学会)
[ Terahata ]
ライフスタイルの関連記事
- 【新型コロナ】年末年始は「真剣勝負の3週間」 みんなで危機感を共有しコロナ収束の突破口に
- ウォーキングなどの運動は「1日にわずか12分」でも効果がある 糖尿病を悪化させる代謝物が低下
- 【新型コロナ】糖尿病の人の「かくれ脱水」を予防 「冬便秘」を改善する3つの方法とは
- 【新型コロナ】米を主食とした「日本型食生活」で感染症に負けない 食育健康サミットをWeb開催
- 「運動を増やして、座りがちの時間は少なく」 糖尿病の人も積極的に運動を WHOの新しい「運動ガイドライン」
- 食後血糖値の上昇を抑える新しい米を開発 難消化性デンプンが通常の米の10倍 秋田県立大学
- 糖尿病は心の負担も大きい 働く人がうつ病になると「仕事が不安」「新型コロナはストレス」
- 【新型コロナ】自然や緑にふれてストレスを緩和 糖尿病の人にも効果的 コロナ禍から心と体を守るために
- コロナ禍で5割超の人が「筋肉が落ちた」 ウォーキングの魅力は「取り入れやすく、継続しやすい」
- 日本人に「低炭水化物ダイエット」は効果がある? 糖尿病の食事療法としては勧められる?