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2018年12月05日
高齢者の入浴に「要介護」を防ぐ効果 ただし冬の入浴には注意も必要
高齢者の入浴の頻度が高いほど要介護認定のリスクが少ないことが、日本人約1万4,000人を対象とした調査で明らかになった。入浴は高齢者の健康維持に役に立っている可能性がある。
一方で、高齢者の入浴には事故や病気のリスクもともなう。消費者庁は、高齢者の入浴中の事故が年々増加していると発表した。
入浴時に注意したいポイントをご紹介する。
一方で、高齢者の入浴には事故や病気のリスクもともなう。消費者庁は、高齢者の入浴中の事故が年々増加していると発表した。
入浴時に注意したいポイントをご紹介する。
毎日入浴する高齢者は介護リスクが3割減少
入浴は高齢者の健康維持に役に立っている可能性があるという調査結果を千葉大学が発表した。
世界一の高齢社会を持つ日本で、高齢者の介護予防は重要だ。研究グループは、日本人の入浴習慣が高齢者の健康にどのような影響を及ぼすかを調べた。
全国18市町村に居住する高齢者1万3,786を対象に、3年間の追跡調査を行い、浴槽習慣と要介護認定との関係を調査。
開始時点でアンケートを行い、夏と冬それぞれの浴槽入浴の頻度、生活習慣、健康状態、家庭の経済状況などを質問した。
その結果、週に7回以上入浴する高齢者は、週0〜2回の高齢者に比べ、要介護認定のリスクが約3割減少することが判明した。
さらに、夏の浴槽入浴頻度が週7回以上の場合、週0〜2回と比較して28%のリスク減少がみられた。同様に冬では29%のリスク減少がみられた。
研究は、千葉大学大学院社会予防医学の八木明男氏らによるもので、詳細は医学誌「Journal of Epidemiology」に発表された。
研究は、高齢者の予防政策の科学的な基盤づくりを目的とした研究プロジェクト「AGES(日本老年学的評価研究)」の一環として行われた。プロジェクトは、約30万人の高齢者を対象に行われており、全国の大学・国立研究所などの30人を超える研究者が参加している。
なぜ入浴が介護予防につながるのか
日本人には入浴好きが多いとされ。浴槽につかるという入浴習慣は欧米でみられない日本独特のものだ。
日本は、長時間労働やストレス、塩分の摂り過ぎなど、健康にマイナスな特徴が多いにも関わらず、世界でトップの長寿を誇っている理由は謎だった。
入浴による血行促進によって脳への血流が良くなることが、認知症の予防につながっている可能性がある。また、入浴によってリラックスすると副交感神経が優位となり、入眠すると質の高い睡眠が得られる。こうした効果はうつ病の抑制にもつながる。
ヒートショックプロティンは、ヒートショック、つまり身体に熱によるストレスが加わることによって、体内で作られる量が増加するタンパク質で、傷んだ細胞を修復する働きをもつ。入浴によるヒートショックプロティンの作用も見逃せない。
一方、糖尿病のある人が入浴すると、体温が高くなり血行が良くなり、血糖値が下がるケースが多い。しかし、これにアルコールが加わると、肝臓の糖新生が抑制され、アルコールに血糖を下げる作用があるので、低血糖が起こるおそれがある。
入浴は運動にも似た効果がある。とくにSU薬やインスリンで治療をしている人は、過度の飲酒にも注意する必要がある。
入浴中の死亡者数は交通事故より多い
一方で、高齢者が入浴中に溺れて死亡する事故が近年、増加傾向にあることも報告されている。心疾患や脳血管疾患、神経疾患などをもつ高齢者への配慮も必要だ。
東京消防庁の調査によると、高齢者の事故のうち「不慮の溺死および溺水」による死亡者は、年々増加傾向にある。
これらの多くは「家」「居住施設」の「浴槽」における入浴中の事故で、11月〜3月の冬季に多く発生している。これから寒くなる季節は、特に注意が必要だ。
消費者庁の分析によると、2016年の不慮の溺死および溺水は6,759人で、うち「家」「居住施設」の「浴槽」における死亡者数は4,821人に上る。これは、交通事故の3,061人よりも多い。
なお、入浴中の急死の中には、病死などと判断される場合もあるので、実際に発生している入浴中の事故はさらに多いと推定されている。
入浴中の事故を防止するための対策
「浴槽」での死亡者数は、年代が上がるにつれて増加している。人口10万人当たりの溺死者数は85〜89歳で32.8人に上る。
また、10年前と比べて全年代で死亡者数が増えており、特に後期高齢者の死亡者数が増えている。
消費者庁は、入浴中の事故を減らすために、高齢者や、周囲の人による事故防止のための注意ポイントをまとめて公開している。「この機会にもう一度入浴習慣を見直してほしい」としている。
<< 入浴中の事故を防止するための対策 >>
(1) 入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう
暖かい部屋から、温度の低い脱衣所、浴室内に入ると血圧が上がり、その後、温かい湯に入ることで血圧が低下し、「ヒートショック」による失神や心筋梗塞などが起こりやすい。
この急激な血圧の上がり下がりを抑えるために、入浴前には脱衣所や浴室を暖め、部屋との温度差をなくすことが大切です。 (2) お湯に入る前には、かけ湯をしてから入りましょう
いきなりお湯に入るよりも、手足など心臓から遠い部分から順に5回程度かけ湯をしてから入ると、血圧の変化が緩やかになり、心臓の負担も少なくなります。湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう。 (3) 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう
入浴中には湯で体に水圧がかかっています。その状態から急に立ち上がると体にかかっていた水圧がなくなり、圧迫されていた血管は一気に拡張し、脳に行く血液が減り、脳が貧血状態になることで一過性の意識障害を起こすことがあります。 (4) 食後すぐの入浴、またアルコールが抜けていない状態での入浴は控えましょう
食後に血圧が下がりすぎる食後低血圧によって失神することがあるので、食後すぐの入浴は避けましょう。また、飲酒後の入浴は、入浴中の事故発生に影響があると考えられます。 (5) 精神安定剤、睡眠薬などの服用後の入浴は危険ですので注意しましょう
向精神薬には眠気、ふらつき、立ちくらみなどの副作用があるものがあるので、入浴時にはとくに注意が必要です。 (6) 入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらいましょう
入浴中に体調の悪化等の異変があった場合は、周囲の人に早期発見してもらうことが重要です。そのためにも、入浴前に周囲の方に一声かけてから入浴するようにしましょう。
JAGES(日本老年学的評価研究)プロジェクト(日本老年学的評価研究機構)暖かい部屋から、温度の低い脱衣所、浴室内に入ると血圧が上がり、その後、温かい湯に入ることで血圧が低下し、「ヒートショック」による失神や心筋梗塞などが起こりやすい。
この急激な血圧の上がり下がりを抑えるために、入浴前には脱衣所や浴室を暖め、部屋との温度差をなくすことが大切です。 (2) お湯に入る前には、かけ湯をしてから入りましょう
いきなりお湯に入るよりも、手足など心臓から遠い部分から順に5回程度かけ湯をしてから入ると、血圧の変化が緩やかになり、心臓の負担も少なくなります。湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう。 (3) 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう
入浴中には湯で体に水圧がかかっています。その状態から急に立ち上がると体にかかっていた水圧がなくなり、圧迫されていた血管は一気に拡張し、脳に行く血液が減り、脳が貧血状態になることで一過性の意識障害を起こすことがあります。 (4) 食後すぐの入浴、またアルコールが抜けていない状態での入浴は控えましょう
食後に血圧が下がりすぎる食後低血圧によって失神することがあるので、食後すぐの入浴は避けましょう。また、飲酒後の入浴は、入浴中の事故発生に影響があると考えられます。 (5) 精神安定剤、睡眠薬などの服用後の入浴は危険ですので注意しましょう
向精神薬には眠気、ふらつき、立ちくらみなどの副作用があるものがあるので、入浴時にはとくに注意が必要です。 (6) 入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらいましょう
入浴中に体調の悪化等の異変があった場合は、周囲の人に早期発見してもらうことが重要です。そのためにも、入浴前に周囲の方に一声かけてから入浴するようにしましょう。
Bathing Frequency and Onset of Functional Disability among Japanese Older Adults: A Prospective 3-year Cohort Study from the JAGES(Journal of Epidemiology 2018年10月27日) 気象庁
お住まいの地域の気象情報を確認し、気温が低い日は特に注意しましょう。 ヒートショック予報(日本気象協会)
気象予測情報に基づく家の中でのヒートショックのリスクの目安が分かります。 総務省消防庁 救急お役立ちポータルサイト
救急車を呼ぶべき症状の解説や高齢者の救急事故防止のポイントをまとめたリーフレットなど、救急について理解を深めてもらうための様々なコンテンツを紹介している消防庁のポータルサイトです。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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