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2018年11月19日

なぜ「朝食を抜くと体重が増える」? 体内時計で解明 名古屋大

 朝食を抜くと体重増加が引き起こされる原因は、肝臓の時計遺伝子や脂質代謝のリズムの異常と体温のリズムの異常であることを遺伝子レベルで明らかにしたと、名古屋大学が発表した。
 毎朝規則正しく朝食を食べることで、体内リズムが正常化し、肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病、冠動脈心疾患の予防につながる可能性があるという。
「朝食抜き」は2型糖尿病やメタボの原因になる
 研究は、名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授を中心とする研究グループによるもので、詳細は科学誌「PLOS ONE」電子版に発表された。

 「時間栄養学」は、体内時計と食事の関連を調べる研究。これまで体内時計は主に光によって同調されていると考えられてきたが、最近の研究では食事がもっとも強い同調因子として働いていることが分かってきた。

 一方で、現代では不規則な食生活が増え、朝食を抜き食生活が不規則になっている人が多い。2015年国民健康・栄養調査では、20歳代の4人に1人が朝食を食べていないと報告されている。

 朝食を抜くことは、肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病、冠動脈心疾患の原因になるとされているが、身体の中で起こるメカニズムは明らかにされていない

関連情報
朝食を欠食すると体のエネルギー消費が減る
 そこで研究グループは、ラットを用いて実験を行った。活動期に高脂肪食を与える群と(対照群)、4時間遅らせて食べはじめる群(食欠食群)に分けた。これは、人にあてはめると、朝8時に朝食を食べる人と、昼12時に最初の食事を食べる人に相当する。

 研究の結果、どちらも食餌摂取量は変わらなかったが、朝食欠食群は体重が増加し、脂肪組織重量が多くなっていた。また、朝食欠食群では肝臓の時計遺伝子や脂質合成系の遺伝子の発現リズムにも、およそ4時間の遅れが生じていた。

 さらに、活動期に上がる体温は、朝食欠食群では食べ始めるまで上がらなかった。反対に、休息期に下がるはずの体温が、朝食欠食群では食事を食べている最中に低下した。そのため、体温の上昇している時間が短くなっていた。

 これにより、朝食欠食では肝臓時計のずれや体温時計などの体内時計の異常によって活動期が短くなり、エネルギーをあまり消費しないため、体重増加を引き起こすことが明らかになった。
肝臓の時計遺伝子が代謝のリズムをコントロール
 人間の身体は、24時間のリズムで変化している。活動や睡眠といった目に見える変化だけでなく、朝が来ると血圧と心拍数が上がりはじめ、昼には血中のヘモグロビン濃度が高くなる。夕方には体温が上がり、夜には尿の流出量が増える。

 こうした「体内時計」は、細胞内で数種類の遺伝子のネガティブフィードバック機構によって24時間のリズム(概日リズム)を刻んでいることが分かっており、それらの遺伝子を「時計遺伝子」という。2017年に概日リズムの分子機構の発見者がノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 また、肝臓の時計遺伝子はリズムを刻んでおり、その支配下でさまざまな代謝のリズムが発振していると考えられている。肝臓は脂質代謝の中枢であり、この脂質代謝もリズムを刻んでいる。

 今回の研究で、朝食欠食による体内時計の乱れを遺伝子レベルで明らかにしたことで、朝食を勧めるときの科学的根拠を示すことができるようになった。朝食は「体内時計の正常化にとってもっとも重要な食事」だという。

 「朝食をとることで、メタボリックシンドロームや2型糖尿病などの予防・改善も期待できる」と、研究グループは述べている。

名古屋大学大学院生命農学研究科栄養生化学研究室
Delayed first active-phase meal, a breakfast-skipping model, led to increased body weight and shifted the circadian oscillation of the hepatic clock and lipid metabolism-related genes in rats fed a high-fat diet(PLOS ONE 2018年10月31日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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