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2018年10月25日

2型糖尿病患者の3人に2人に「心血管疾患」のリスク 130ヵ国を調査

 国際糖尿病連合(IDF)による世界規模の調査で、2型糖尿病患者の3人に2人が心血管疾患リスク因子をもっているか、心血管イベントを発症したことがあることが明らかになった。しかし、自分に心血管疾患の危険性があることを自覚している患者はわずか4人に1人だという。
2型糖尿病の人ではCVDリスクが2〜6倍に上昇
 心筋梗塞や狭心症、脳卒中、末梢閉塞性動脈疾患などの心臓血管疾患(CVD)が原因で、世界で1年間に1,790万人が死亡している。心臓血管疾患は世界の全死因の31%を占める。

 原因となるのは喫煙、不健康な食事、運動不足、アルコールの過剰摂取など。高血圧、高血糖、高コレステロール血症、肥満などがあると、心臓血管疾患のリスクは上昇する。

 2型糖尿病患者にとって、心血管疾患は症状がないまま病状が進行し、時には死に至る危険性の高い疾患だ。

 米国で実施されているフラミンガム心臓研究では、2型糖尿病患者はそうでない人に比べ心臓病や脳卒中で死亡するリスクが2〜6倍高いことが示された。
糖尿病患者の3人に2人に心臓血管疾患のリスク


 国際糖尿病連合(IDF)は9月29日の「世界心臓デー」に、「Taking Diabetes to Heart」調査の結果を発表した。この調査はノボ ノルディスクと提携して実施したもので、130ヵ国を超える国から1万2,695件の回答を得て2018年3月まで実施された。IDFにとってはじめて世界規模で2型糖尿病患者の心血管疾患に対する認識を調査した研究だ。

 調査はインターネットでオンラインで実施された。それぞれの国の言語で設問を作成し、5〜10分の時間で匿名で回答できるよう設定された。

 その結果、2型糖尿病患者の3人に2人が、高血圧、血糖コントロールの不良、高コレステロールなど、心血管疾患の危険因子をもっているか、狭心症、心臓発作、脳卒中、心不全などの心血管イベントを発症した経験をもっていることが明らかになった。

 しかし、心血管疾患の危険因子について、医師と話したことがまったくない、あるいは話したことを思い出せないという患者が4人に1人に上り、自分は心血管疾患の危険性が少ない、あるいはないと自覚している患者はわずか4人に1人だけだった。
心血管疾患の予防についての認識は低い 教育も不足
 IDFの予測によると、世界には糖尿病とともに生きる人々が4億2,500万人いて、その90%以上が2型糖尿病が占めている。2型糖尿病の有病率は今後も増加を続け、糖尿病合併症を発症する患者も増えると予測している。

 2型糖尿病患者にとって、心筋梗塞や狭心症、脳卒中、末梢閉塞性動脈疾患などの心血管疾患は、身体の障害や死亡の主な原因となっている。

 「心血管疾患の危険性や予防についての認識は依然としてとても低く、糖尿病合併症に対処するための教育は不足していることが分かりました」と、IDF理事長のナム チョウ・ソウル国立大学教授は述べている。

 「IDFでは、2型糖尿病を早期発見するために対策するよう各国の政府に求めています。糖尿病患者が生活スタイルを改善し、糖尿病をより適切にコントロールできるようになるために、医療従事者がサポートすることが望ましいのです」としている。
4人に3人が医師からの情報を信頼している
 調査では、2型糖尿病患者の4人に3人が主治医や医療スタッフからの心血管疾患についての情報を信頼していると回答した。さらに3人に2人が、心血管疾患を予防をするために、危険因子や病状についてもっと多くの情報が必要だと感じていることが分かった。

 「2型糖尿病の患者さんとそのご家族に、心血管疾患は破壊的な影響を及ぼすおそれがあります。IDFの調査は、心血管疾患のリスクについて認識を高める必要があることを示しています」と、ステファン ゴー・オックスフォード糖尿病内分泌・代謝センター客員教授は述べている。

 IDFは、インターネットを利用して心血管疾患の予防・改善のために適正な情報を広げることを目指している。

 医療従事者による適正な情報の提供と、患者によるフィードバックにより、患者中心の医療を広く社会に普及させることが可能になる。

 IDFが今回のプロジェクトで目指しているのは次の3点だ――▼臨床的で適正な情報を地域社会に提供する、▼ポピュレーションレベルで、とくに高リスク群において、心血管疾患の発症を低下させるための準備をする、▼心血管疾患に関する情報を提供する効果について、リアルワールドのデータを使用し検証する。
世界心臓連合(WHF)が公開している「世界心臓デー」のビデオ
私のハート、あなたのハート
IDF global survey reveals 2 in 3 people with type 2 diabetes have CVD risk factors(国際糖尿病連合 2018年9月28日)
Taking Diabetes to Heart(国際糖尿病連合 2018年9月)
Cardiovascular Disease in Diabetes Mellitus: Atherosclerotic Cardiovascular Disease and Heart Failure in Type 2 Diabetes Mellitus - Mechanisms, Management, and Clinical Considerations(2016年6月14日)
2012 ACCF/AHA/ACP/AATS/PCNA/SCAI/STS Guideline for the Diagnosis and Management of Patients With Stable Ischemic Heart Disease: Executive Summary(Journal of the American College of Cardiology 2012年12月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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