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2018年03月30日

糖尿病の人が果物や野菜のジュースを飲むとどうなる? 意外な結果に

 ヘルシーなイメージのあるフルーツや野菜のジュース。「1本で1日分の野菜を摂取できる」という謳い文句が付けられた商品もある。でも、実際に飲み続けると、体にどんな変化が起こるのか? 意外な事実が明らかになった。
果物や野菜のジュースに含まれる「糖質」は意外に多い
 コンビニやスーパーなどでさまざまな種類のフルーツや野菜のジュースが販売されている。健康的なイメージがあるが、炭水化物(糖質)の量をチェックすると、意外に多く含まれているものもある。

 オレンジジュース(濃縮還元ジュース)であると、100g当たりのカロリーは42kcal、糖質は10.7g、うち吸収の速い単糖が7.9含まれる。200mLのパックであれば糖質を20g以上摂取する計算になる。

 野菜ジュースも同様で、「炭水化物=糖質」と考えると、200mLのパックであれば15〜20g摂取することになる。おにぎり1個のカロリーは180kcalで、炭水化物が40g含まれる。果物ジュースだけでその半分を摂ってしまうことになる。

 「健康的な食生活」を心がけていても、なかなか体重が減らないという場合は、果物や野菜のジュースを飲む習慣が影響しているかもしれない。

 フルーツジュースも野菜ジュースも、液体なので、固形物をしっかり噛んで食べる場合よりも、より吸収が速く、血糖値を急激に上げてしまうおそれがある。
果物や野菜のジュースは「果物と野菜の代わり」にならない
 もし果物を食べるのであれば、ジュースにせずに、そのまま固形で食べることが勧められる。果物には食物繊維も含まれ、よく噛んで胃で分解され、小腸に少しずつ流れていき、栄養素が少しずつ吸収されていく。この過程を経ていく方が体には良い。

 果物も糖質が多めに含まれるので、糖尿病の人にとって食べ過ぎは良くないが、有用な栄養が多く含まれているので、甘い物が欲しくなった時の間食として適量であれば、ほとんどの場合で問題はない。気になる人は、医師や管理栄養士に食べてもいいフルーツの適量を相談すると良い。
フルーツジュースを毎日飲むと糖尿病リスクが上昇
 「健康のために良い」と思って飲んでいるフルーツジュースが、体重増加につながっているかもしれない。ハーバード公衆衛生大学院が18万7,382人を対象にした調査で、糖質の少ない果物をよく食べる人は糖尿病のリスクが低下することが明らかになった。

 調査の結果、ブルーベリー、ブドウ、レーズン、リンゴ、西洋ナシなどの果物を、週に3回食べていた人では、2型糖尿病を発症する割合が約10%低下したことが明らかになった。特にブルーベリー、ブドウ、リンゴを週に2回以上食べていた人では、まったく食べない人に比べて糖尿病のリスクが23%減少した。

 逆に、フルーツジュースを毎日飲む人では、糖尿病リスクは21%上昇していた。また、1週間に飲むフルーツジュースのうちの3回分を、果物をそのまま食べるように変更すると、糖尿病のリスクは7%減少した。

 野菜ジュースでも同じような調査結果が出ており、どんなに健康に良い食品でも、ジュースとして加工することで効果が減少することが示されている。
体重増加の隠れた犯人は「フルーツジュース」
 ダイエットを試みても、なかなか体重が減らないという人は、野菜や果物をジュースにしないで摂取した方が良いかもしれない。米国のバージニア メイソン医療センターの研究で、1日当たりの果汁100%ジュースの摂取量がコップ1杯分(約180mL)増えるごとに、3年間に体重が0.18kg増加することが分かった。

 研究チームは、大規模な前向きコホート研究である「女性健康イニシアチブ」に参加した閉経後の女性4万9,106人を対象に、3年間追跡して調査した。「食物繊維が少ないジュースを飲むと、糖分がすぐに血液中に取り込まれてしまい、インスリンの効きが悪くなり、代謝に悪影響が及ぶおそれがあります」と、同センターのブランドン アゥアバック氏は言う。

 逆に、果物そのものを食べると体重が減少する可能性も示唆された。果物を1日1回食べると3年間で約0.45kgの減量を期待できることが分かったという。
野菜や果物をジュースで摂取するのは勧められない
 「果物や野菜は皮を含めてまるごと食べることが大切です。フルーツジュースなどは食物繊維があまり含まれていない点が気になります」と、研究者は述べている。

 果物や野菜のジュースに含まれるのは果汁のみで、また果汁に含まれる糖質は、単糖類である果糖(フルクトース)であり、短時間に血糖値を上げやすい。一方、果物や野菜をまるごと食べると、食物繊維が豊富なために、消化吸収のスピードが遅くなり、血糖値の上昇は緩やかになる。

 ニンジン、ホウレンソウ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜と、キャベツ、レタス、タマネギなどの淡色野菜を約半量ずつ、これに食物繊維の豊富な根菜、海藻、キノコ類をプラスすれば、ビタミンやミネラル類、食物繊維などを満遍なく摂れる。

 これを機に、ジュースで一気に流しこんでしまうのではなくて、じっくり甘みを噛みしめながら、食べる楽しみを味わって、糖尿病から自分を守っていくようにしたい。

Skip the juice, go for whole fruit(ハーバード公衆衛生大学院 2013年8月29日)
Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies(BMJ 2013年8月29日)
Study Led By Virginia Mason Physician Links Fruit Juice Consumption With Weight Gain(バージニア メイソン医療センター 2018年2月8日)
Association of 100% fruit juice consumption and 3-year weight change among postmenopausal women in the in the Women's Health Initiative(Preventive Medicine 2018年2月8日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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