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2017年08月01日
「1型糖尿病を根絶するための研究」を支援 日本IDDMネットワーク
1型糖尿病患者を支援する活動を展開している認定NPO法人「日本IDDMネットワーク」(理事長 井上龍夫、本部 佐賀市)が佐賀県と連携した取り組みに、全国から注目が集まっている。
「日本IDDMネットワーク」は1型糖尿病とインスリン依存状態(IDDM)の患者と家族を支援している認定NPO法人。本部を置く佐賀県のふるさと納税などを利用し、1型糖尿病の根絶に向けた研究を支援する活動を展開している。
ふるさと納税を活用 税金控除を受けながら寄付支援ができる
ふるさと納税は、自治体を選んで寄付をすると、税金の控除が受けられたり、お礼の品がもらえたりする制度。ふるさと納税に関する総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクによると、使途を明確にした資金調達である「ガバメントクラウドファンディング」(GCF)にふるさと納税を活用する動きが増えている。佐賀県の場合は、NPOと組んで課題解決に取り組み、それに賛同する人からふるさと納税を活用して寄付金を募るというものだ。
日本IDDMネットワークが本部を置く佐賀県は、ふるさと納税を活用したGCFに力を入れる自治体のひとつだ。日本IDDMネットワークが同県と組んだ協働プロジェクトは、1型糖尿病の治療法の確立を支援し、「2025年までに1型糖尿病を治る病気にする」ことを目指すというもの。2014年度に始動し、2016年度末までに計2億円近くの寄付金を集めている。
1型糖尿病の根治に向けて 「バイオ人工膵島移植」の研究助成
プロジェクトの成果のひとつとして、1型糖尿病の根治につながるブタの細胞を人に移植する「バイオ人工膵島移植」に必要な、無菌の細胞を加工する国内初の専用研究施設が、日本IDDMネットワークによる資金助成で開設される予定だ。早ければ年内にも国立国際医療研究センターに完成予定で、3〜5年後を目標に掲げる臨床応用の基盤が整うという。
1型糖尿病は生活習慣と関係なく、インスリンを分泌する膵島の細胞が破壊されることで発症する。患者は毎日4〜5回のインスリンを注射しなければならない。根治するために膵島移植が有効だが、ドナー(臓器提供者)が少なく、実施例は伸び悩んでいる。
国立国際医療研究センターや福岡大学の研究チームは根治につながる治療法として、医療用のブタの膵島細胞を特殊な膜で包んで移植する「バイオ人工膵島移植」の研究を進めている。日本IDDMネットワークは、「バイオ人工膵島移植」の早期実現のために寄付を募っており、このほど下記の研究助成金の追加交付を行った。
バイオ人工膵島を開発するための細胞加工センター整備
研究テーマ:臨床応用を目指したバイオ人工膵島移植の開発
研究代表者:霜田雅之(国立国際医療研究センター研究所 膵島移植プロジェクト プロジェクト長)
研究助成金:2,500万円 (累計7,000万円)
資金調達手法:佐賀県庁への日本IDDMネットワーク指定ふるさと納税
研究テーマ:臨床応用を目指したバイオ人工膵島移植の開発
研究代表者:霜田雅之(国立国際医療研究センター研究所 膵島移植プロジェクト プロジェクト長)
研究助成金:2,500万円 (累計7,000万円)
資金調達手法:佐賀県庁への日本IDDMネットワーク指定ふるさと納税
1型糖尿病を「治る病気」に クラウドファンディングを実施中
日本IDDMネットワークが取り組む、1型糖尿病を「治る病気」にすることを目指したプロジェクトは、さらに拡がりをみせている。
日本IDDMネットワークでは「ふるさと納税」の他、クラウドファンディングも活用し、積極的な資金調達を進めている。こうした多彩な資金調達によって1型糖尿病の根治、治療、予防に向けた複数の研究機関や研究者同士をつなぎ、支援の新たな仕組みとその成果による前進をもたらすという。
現在、「体を傷つけない血糖値評価」を目指した、唾液糖の計測装置(マウスガード型バイオセンサー)の開発する研究に対する支援のために、クラウドファンディングが受け付けられている。
このセンサーは、唾液中に含まれる糖分(唾液グルコース)を連続的に測定できる「透明マウスピース型センサ」を利用することで血糖状態を計測するというもの。採血で指を穿刺することなく、血糖状態を調べることができる。
計測した血糖状態はスマートウオッチなどで確認することができ、無痛かつ簡便かつ安全に血糖状態を常に知ることができるという。
同NPOはその他にも、▽「小児発症での早期発見」および「1型糖尿病患者のQOL向上」を目指した呼気アセトンガス用バイオセンサーの開発、▽糖尿病治療のための人工膵臓を目指した自立式薬物放出システムの開発などの支援にも取り組んでいる。
1型糖尿病の根絶(予防+根治+治療)を目指す 「研究指定寄付」を開始
日本IDDMネットワークは2005年の「1型糖尿病研究基金」設立後、2017年7月現在で36件、1億9,000万円の研究費助成を行っている。
このほど、1型糖尿病の根絶(予防+根治+治療)を目指す研究のうち、応援したい研究を指定して寄付ができる「研究指定寄付」を開始した。
「応援したい研究」の一覧は下記ページで参照できる。
今年5月に、1型糖尿病根絶(予防+根治+治療)を目指す研究の助成課題を下記の通り3件決定した。
第11回1型糖尿病研究基金 研究費助成課題
〇1型糖尿病を発症しない動物モデルの確立と発症抑制機序の解明 [予防]
研究代表者:宮寺浩子(筑波大学医学医療系助教)
助成金:100万円(9年間)※前回に引き続きのため通算10年継続助成となる。 〇膵島分離技術のAIロボットによる標準化 [根治]
研究代表者:大田佳宏(東京大学大学院数理科学研究科特任教授)
助成金:100万円(5年間) 〇糖尿病治療用遺伝子改変ブタの開発 [治療・根治]
研究代表者:宮川周士(大阪大学医学系研究科准教授)
助成金:100万円(1年間)
多くの患者や家族が、1型糖尿病の根絶を心待ちにしている。1型糖尿病の根絶に向け活動の幅を広げている日本IDDMネットワークの今後の活動の展開から目を離せない。
研究代表者:宮寺浩子(筑波大学医学医療系助教)
助成金:100万円(9年間)※前回に引き続きのため通算10年継続助成となる。 〇膵島分離技術のAIロボットによる標準化 [根治]
研究代表者:大田佳宏(東京大学大学院数理科学研究科特任教授)
助成金:100万円(5年間) 〇糖尿病治療用遺伝子改変ブタの開発 [治療・根治]
研究代表者:宮川周士(大阪大学医学系研究科准教授)
助成金:100万円(1年間)
日本IDDMネットワーク 理事長 井上龍夫氏からのメッセージ
私たち「日本IDDMネットワーク」は、1995年に国内の1型糖尿病(当時はインスリン依存型糖尿病、小児糖尿病とも呼んでいました)の地域患者・家族会が連携する全国組織として設立しました。当時は成人患者の公的な経済支援を得ることなど、この疾患を取り巻く社会環境の整備が大きな活動テーマでした。
その後2004年に日本で初めて「膵島移植」という膵臓内のインスリン産生に関わる細胞(組織)だけを他人から移植する新しい治療法が行われ、さらに山中伸弥教授によるヒトiPS細胞の樹立により、自らの細胞で失った体の機能を取り戻せるというそれまでの移植医療の課題を一気に解決できる「再生医療」の可能性も見え始め、大きな期待感を患者・家族が持ち始めました。
こうした医学・医療の進歩を感じる中で、患者・家族が1型糖尿病の根治を一日でも早く実現できる手段は、研究費提供であるとの強い思いから2005年に「1型糖尿病研究基金」を立ち上げ、今日に至っています。これまで多くの皆様のご支援により約2億円の研究助成を実施できたことは私たちにとっては大きな実績ですが、まだまだ研究費は足りません。
現在は、インスリン補充から解放され病気になる前のもとの体に戻るという「根治」のみならず、治療法の改善により体への負担が軽くなり生活の質が向上する「治療」、これから新しく発症する患者を無くす「予防」も含め、1型糖尿病の“根絶”実現を最終目標としています。こうした研究支援は1型糖尿病のみならず糖尿病の大部分を占める「2型糖尿病」の根絶にもつながるものと信じています。
今後ともさらに多くの皆様のご支援をいただき、患者・家族の“夢”の実現にご協力をよろしくお願い申し上げます。
認定特定非営利活動法人 日本IDDMネットワーク
1型糖尿病研究基金(日本IDDMネットワーク)
1型糖尿病研究基金(日本IDDMネットワーク)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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