ニュース

2016年01月15日

乾燥肌に対策 かゆみを放置しないで皮膚のトラブルを解決

キーワード
糖尿病合併症
 冬になると皮膚が乾燥して、かゆみや湿疹などの皮膚のトラブルを抱える人が増える。乾燥を放置せずに適切なケアを行えば、健康な皮膚を維持できる。
乾燥肌を引き起こす皮膚の仕組み
 健康な皮膚では「皮脂膜」「角質細胞間脂質」「天然保湿因子」の3つの働きによって水分が保たれている。これらは規則的に配列し秩序ある層状構造をつくっており、肌の状態に大きく関わっている。

 皮膚の外側は「皮脂膜」で覆われている。皮脂膜の下には「角質細胞」が何層にも積み重なってできた「角質層」がある。そして、角質細胞の間には角質細胞間脂質があり、過剰な水分の蒸散を抑え、皮膚のうるおいを保っている。

 角質細胞間脂質は、角質細胞どうしの隙間をうめて水分をためて、水分が適正に保つバリア機能の一端を担っている。また、角質細胞の中の天然保湿因子も細胞内に水分をためてうるおいを保っている。

 糖尿病患者が肌の乾燥やかゆみを感じた場合、それは糖尿病と関連している可能性がある。血糖コントロールが不良の状態が続くと免疫機能が低下する。そうなると、細菌や真菌に感染しやすくなり肌トラブルを起こしやすくなる。また血流も悪くなるため、皮膚に必要な栄養や酸素が行き渡らなくなり、乾燥やかゆみにつながる。

乾燥肌を放置するとかゆみなどが出る
 冬になると皮膚が乾燥して皮膚のトラブルを抱える人が増える。原因のひとつは温度の低下。気温が低くなると発汗が少なくなり、汗とは別に角質層を通じて出てくる水分も少なくなる。この水分と汗には皮膚をうるおす働きがあり、どちらも少なくなると、皮膚の乾燥をまねく。

 また、湿度の低下も皮膚の乾燥の原因になる。大気が乾燥すると、皮膚の水分が蒸発しやすくなる。さらに、暖房機器などの影響による室内の乾燥も、皮膚からの水分の蒸発を加速させる。

 乾燥した皮膚は皮脂膜が乱れて水分が蒸発しやすくなっている。角質細胞間脂質、天然保湿因子が減少し、水分をためる働きが低下している。乾燥が進むと、皮膚の表面は、粉を吹いたような状態になる。

 また、さらに乾燥状態が悪化すると、かゆみと炎症が生じる皮脂欠乏性湿疹や、アレルギーを起こしやすい人ではアトピー性皮膚炎などを発症することがある。

 かゆみが生じたり、赤いブツブツ(丘疹)が出てきたときには、かゆくても患部をできるだけかかず、肌に傷をつけないよう注意することが大切だ。かくと刺激となり炎症が強まり、痛みがあらわれることもある。

 糖尿病の人では、かいて傷をつくってしまうと、そこから重篤な感染症を起こしてしまうおそれがある。小さな傷でも、糖尿病の合併症である神経障害を起こしている場合には気付かずに、悪化させてしまう場合があるので注意が必要だ。

乾燥肌を改善するスキンケア方法
 米国のヴァンダービルト大学医療センターによると、適切にケアすれば皮膚を健康に保つことができる。

・ 保湿剤や軟膏などを使う
 保湿剤は、肌の乾燥を防いで皮膚にうるおいを与える。また、軟膏には、かゆみや湿疹を抑えるものがある。ドラッグストアや薬局で薬剤師に相談すれば、症状に合った保湿剤を選んでもらえる。

・ 常に肌の清潔を保つ
 汗をかいたらシャワーを浴びるなどして、肌を清潔に保とう。刺激の少ない洗浄剤でやさしく洗うのがポイントだ。また、熱いお湯に長時間つかると皮膚の皮脂が失われやすいので、ぬるめのお湯での短時間入浴を心がけるようにしよう。

・ 肌に触れるものは刺激の少ないものを
 刺激は肌に負担をかける。肌に直接触れる下着や、シーツなどの寝具は、肌触りがよい素材を使ったもの選ぼう。

・ 生活環境を見直す
 部屋の空気が乾燥すると、皮膚も乾燥しやすくなる。加湿器などを用いて湿度を50%前後にし、エアコンの設定温度を調節し室内の温度は18〜23度を保つ。

・ 適度な運動をする
 冬は発汗が少なくなる。適度な運動で血行をよくすると新陳代謝が高まり、汗をかきやすくなる。

・ 良くならないのなら皮膚科を受診
 症状が軽い場合は薬剤師に相談し、自分の症状に合った市販薬を購入するだけでも改善を期待できる。それでも症状が改善しない場合は、迷わず皮膚科を受診することが大切だ。

冬も紫外線対策が必要
 地上に降り注ぐ紫外線には、波長の長い「UVA」と、波長の短い「UVB」がある。この2つのうち、肌が赤くなる急激な日焼けをもたらすのはUVB。冬になるとUVBの量は、夏のピーク時に比べ4分の1程度までに少なくなる。このため、冬には夏のようにひどい日焼けをすることは少ない。

 気をつけたいのがUVA波だ。以前は、UVBに比べUVAは肌に与える影響が少ないと考えられていたが、最近の研究でUVAが長期的に肌に影響を及ぼし、しみやしわなどの原因になることが分かってきた。UVAはDNAにも酸化的損傷を与え皮膚がんの原因になる。

 波長が長いUVA波は、皮膚表面のメラニンを増やし、しみやシワ、弾力の低下といった肌の老化を促す。冬には量は減るが、それでも夏のピーク時の半分程度は降り注いでいる。つまり、冬でも20分日差しを浴びれば、夏に10分日差しを浴びたのと同程度のUVA波を浴びることになる。

 冬でも日光を長時間浴びるときは、顔や露出する部分に日焼け止めを塗るようにしよう。紫外線量は少なくなるので、それほど強力なものを使用する必要はない。

洗浄剤を使わない入浴 健康への影響は?
 米国では洗浄剤を使わない入浴が、新しい美容のトレンドになっている。洗浄剤に含まれる成分が皮膚から健康的な皮脂まで落としてしまうという考えから、洗浄剤を用いた入浴の頻度を減らす人があらわれている。

 マウント サイナイ病院皮膚科(ニューヨーク市)のアンジェラ ラム氏によると、洗浄剤を使わない入浴が健康に良いかどうかは、皮膚のタイプによって大きく変わるという。

 「体を定期的に洗うメリットは多く、皮膚から皮脂、乾いた汗、汚れ、死んだ皮膚細胞を洗い落とせます。洗浄剤を使わないとこうした汚れを十分に落とせないおそれがあります。真菌や細菌の感染リスクも上昇します」と指摘している。

 洗浄剤を使わないことで、皮膚が健康になったという人もいるし、脂っぽくなったりかゆくなったりする人もいる。「皮膚を洗う頻度に明確な決まりはなく、ちょうど良い頻度を知るには自分の皮膚で試してみるしかありません」としている。

Winter skin tips to protect you all season(ヴァンダービルト大学医療センター 2015年12月2日)
Vanderbilt dermatologist tells how to protect your skin from lingering winter weather(ヴァンダービルト大学医療センター 2015年3月4日)
Skin Complications(米国糖尿病学会 2014年3月31日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲