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2015年12月22日
神経障害性の疼痛を緩和する治療法を発見 新たな鎮痛薬を開発
これらの痛みは、ロキソニンなどの非ステロイド性鎮痛などが効きにくく治療が難しいことから、新たな治療治療法が求められている。
研究グループは、疼痛を引き起こす「HMGB1」に着目。「HMGB1」は、主に細胞の核内に蓄積されているタンパク質で、細胞外に遊離され炎症を引き起こす作用がある。
研究グループは、神経障害性疼痛モデルマウスを用いて、傷害を受けた座骨神経で「HMGB1」が増加することを確かめた。
さらに、痛みが慢性化した後に、「HMGB1」に結合し機能を抑制する「中和抗体」を傷害を受けた座骨神経周辺部に投与することにより、痛みが緩和されることを明らかにした。

これまでに、中枢部位(脊髄内の神経)において「HMGB1」が増加し、「HMGB1」に対する中和抗体を投与することで痛みが緩和されることから、このタンパク質が原因物質であることを明らかにしていた。
さらに、「HMGB1」に対する中和抗体は、末梢部位(傷害神経)に作用し痛みを緩和することも突き止めた。中和抗体を全身に投与すると副作用が起こるおそれがあるが、病変部位への局所投与し効果を得られれば、副作用を起こさず安全に治療できるようになる。
「HMGB1」を中和する抗体や、働きを阻害する化合物をみつければ、新たな鎮痛薬となる可能性がある。研究グループは「今後はHMGB1の中和抗体を臨床応用につなげる研究を進めていく」と述べている。
この研究は、広島大学大学院医歯薬保健学研究院の仲田義啓教授と森岡徳光准教授、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授らの研究グループによるもの。英国の医学誌「Journal of Neurochemistry」のオンライン版に発表された。
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