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2015年08月18日
ウォーキングが脳の老化を防ぐ 運動量が多いほど認知機能は改善
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脳の神経細胞の数は、年齢を重ねるにつれて減っていく。脳中では神経細胞(ニューロン)が複雑な神経ネットワークを形成している。歳をとるにつれて、このネットワークは減少し脳が萎縮していく。
しかし生活習慣を改善することで、脳萎縮を抑えられることが最近の研究で分かってきた。もっとも有効な対策は、ウォーキングなどの適度な運動を習慣として行うことだという。
さらに、脳のMRI(核磁気共鳴画像法)検査を行い、白質の変化を調べた。白質は神経細胞間の電気信号を運ぶ神経繊維の部分で、脳のさまざまな部位をつなげている。
その結果、白質の減少がもっとも少なかったのは、運動を習慣として行っている人だった。「ウォーキングを週に数回行っている高齢者では脳萎縮が減少しており、脳の老化を示す徴候も少なかった」とエディンバラ大学老年期認知症センターのアラン ガウ氏は話す。
一方で、家庭や地域社会を含めて社会的な交流を保ち、新しいことに興味をもつことで、体と心の老化を防げると考えられている。しかし、実際にMRI検査を行ってみると、精神的な活動や社会的な活動は、運動に比べ脳の衰えを改善する効果は少ないことが判明した。
研究には、認知機能の低下の兆候がみられない65歳以上の男女101人が参加した。研究チームは参加者を、▽運動を行わないグループ、▽週に75分の運動を行うグループ、▽週に150分の運動を行うグループ、▽週に225分の運動を行うグループに分け、認知機能の変化を調べた。
研究チームは、記憶、情報処理、注意力、集中力、思考などを調べる16種類のテストを行い、参加者の認知機能を評価した。
26週間後、運動を行ったグループでは、認知機能が向上していることが明らかになった。運動の恩恵は運動量の多い人ほど増加することも分かった。
運動量の多い人では、視覚空間の処理能力が大きく改善されていた。これは、対象が空間のどこにあるのかを知覚し把握する能力だ。
なぜ運動に脳を保護する作用があるのか不明の点も多いが、「有酸素運動を含む身体活動を習慣として行うことで心臓のポンプ作用が活発になり、脳に血液が十分にいきわたりニューロンが活性化しやすくなるからだろう」と研究者は説明している。
「運動は、加齢にともない増えていく心疾患や脳卒中、糖尿病、がんなどの危険性も低下させます。運動をはじめるのが遅すぎるということはありません。ただ歩くだけでも脳に良い効果がもたらされます。適度な運動を毎日の生活に取り入れるべきです」と、バーンズ氏は述べている。
Exercise for brain health, study suggests(エディンバラ大学 2012年10月23日)
New research shows older adults can improve brain function by raising their fitness level(カンザス大学 2015年6月10日)
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