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糖尿病3分間ラーニング
1型糖尿病患児がよりよい学校生活を送るために 今何が必要か?
2015年08月12日

患者・学校・医療機関の連携が必要
 日本メドトロニックは7月21日に東京で、記者説明会「生活習慣病ではない糖尿病があることを知っていますか? 1型糖尿病患児がよりよい学校生活を送るために」を開催した。
1型糖尿病に対する誤解はまだ多い
 「1型糖尿病」は、膵臓のβ細胞が壊れてしまい、インスリンを分泌できない、あるいは分泌量がきわめて少ないために生じるタイプの糖尿病だ。自己免疫反応の異常やウイルス感染などが原因と考えられているが、まだ十分に解明されていない。1型糖尿病患者は、インスリンを体外から補給しないと生命を維持できないので、インスリン療法を一生涯続ける必要がある。

 成人に多い「2型糖尿病」が遺伝因子と生活習慣が原因で発症するのと異なり、「1型糖尿病」の発症には生活習慣は関連しておらず、また10〜15歳で発症する患者が多いのが特徴だ。

 日本では、2型糖尿病に比べ1型糖尿病の発症率は非常に低く、年間に10万人中約1.5〜2人ほどが1型糖尿病を発症するとみられている。国際糖尿病連合(IDF)の調査によると、世界では年間に7万9,000人以上の子供が発症している(2013年)。

 患者数が少ないので、1型糖尿病に対し「食生活の乱れや運動不足などが原因」「生活環境に問題がある」といった誤った理解をする人がいまだに少なくなく、治療の妨げになっているだけでなく、患者や家族が不当に傷つくことが多いという。

1型糖尿病の子供たちは糖尿病とともに成長していく
 「1型糖尿病の子供は、家族や医療者の見守りのもと、必要なインスリン注射や血糖測定などを自分で管理できるようになる。子供たちは糖尿病とともに成長していく。医療機関では、入院や外来診察の機会を活かして、子供の成長に合わせて継続的な関わりをもっていくことが必要」と、国立成育医療研究センター内分泌・代謝科医長の堀川玲子氏は言う。

 国立成育医療研究センターでは、医師、外来看護師、病棟看護師、管理栄養士などがチームを組み、患児と家族へのサポートを行っている。また、患児の初発時は学校の先生とカンファレンスを行い、特に養護教論の先生には必ず同席してもらっているという。

 まずは患児と両親が1型糖病の正しい知識をもつことが必要だが、学校では、担任の先生、養護の先生などといっしょに学校での対応について話す時間を作ることが望ましい。そのとき、できるだけ患児本人の気持ちを優先することが大切だ。

 学校での対応のポイントとして、(1)インスリン注射をする場所、(2)低血糖時の症状や対処法、(3)補食の内容と補食をする場所、(4)体育時の低血糖への対応、(5)体育・部活動・修学旅行への参加、(6)病気を公表するかしないか、するとしたらどの範囲までするのか、などが話し合われる必要があるという。

 いずれにしても、患児の両親は何度も学校に連絡することになるので、「先生方としっかりと信頼関係をつくることが大切」になる。

 「小児1型糖尿病の治療のゴールは“正常な成長・発達”です。食事と運動については、基本的に制限は必要ありません。日常生活にインスリン治療を合わせて、心身両面から理解とサポートをすることが重要です」と、堀川氏は説明する。

患者・学校・医療機関 三者の連携が重要
 患者とその家族(保護者)、学校(養護教諭、担任)、医療機関(主治医)の三者が連携をとることが、1型糖尿病の子供が健やかに学校生活をおくるために必要だ。

 日本IDDMネットワークは、1型糖尿病またはインスリン依存状態(IDDM)の患者と家族を支援する活動をしている認定NPO法人。理事長の井上龍夫氏は、「学校で子供に身近な教師にこそ1型糖尿病のことを理解してほしい。患者や家族、医療者との交流会も開かれており、教師も積極的に参加して、子供の生活に接して信頼関係を築いてほしい」と言う。

 学校の先生に「1型糖尿病という病気を知ってもらう」「病気になる前と同じように楽しい学校生活をおくることが可能であることを理解してもらう」「保護者の気持ちを理解してもらう」ことを求めている。

 日本IDDMネットワークがまとめた冊子「1型糖尿病(IDDM)お役立ちマニュアル」には、1型糖尿病の患者・家族のために有用な情報が紹介されている。「1型糖尿病(IDDM) お役立ちマニュアル Part2」には、学校における対応として、“教育機関への説明文書(保護者向け)”や“1型糖尿病の児童・生徒のいる学校の対応(学校教職員向け)”などが掲載されている。

 また「1型糖尿病(IDDM) お役立ちマニュアル Part5―患者と家族の体験編―」には、学校生活、就職・仕事、恋愛・結婚、妊娠・出産などについて、取材にもとづく患者の実体験が紹介されている。同NPO法人が実施した「教員向け1型糖尿病研修会」をモデルとした研修会の実施は各地で増えているという。

1型糖尿病について学校に理解してもらうことが必要
 糖尿病の治療は毎日の生活の中で行われる。多くの1型糖尿病患者は、毎日数回のインスリン注射と血糖自己測定を行い、血糖値を正常にあるいは正常近くにコントロールすることを目標としている。

 これができていれば普通に生活することができ、慣れていくと次第に生活の一部になっていく。治療がスムーズにできるようになり、血糖コントロールが良好に維持できるようになると、生活上で特別に制限されることはなくなる。体育の授業(プールを含む)、運動会、マラソン大会、運動クラブ活動などへの参加も、他の児童と同じようにすべて行える。

 「学校で1型糖尿病について適切に理解してもらうことが大切。特別扱いするのではなく、血糖値の管理ができれば、普通に生活することができることを知って欲しい」と、1型糖尿病患児の保護者である大池祥恵さんは言う。

 日本では1型糖尿病の患者数が少ないので、家族や友人、学校の教師らにもなじみが少ない場合が多く、患者は周囲の無理解や孤立感、さらに生命予後や将来への不安などについて悩むことがある。そうした1型糖尿病の子供にとって「糖尿病キャンプの役割は大きい」と前述の堀川氏は言う。

 糖尿病キャンプは、同じ治療を行っている子供が集まることにより、自己注射、低血糖の対処などの療養行動に必要な自立心および積極性を育成し、病気に関したストレスを解消する目的で行われている。糖尿病キャンプは日本では1967年に開始され、現在全国で毎年行われている。

低血糖への対処では周囲のサポートが必要なことも
 「インスリンポンプ療法」(CSII)は、携帯型インスリン注入ポンプを用いて、インスリンを皮下に持続的に注入する治療法。従来のインスリン療法で血糖コントロールが難しかったり、血糖コントロールをより良くしたい場合、あるいは生活の自由度を高めたい場合などに有効と考えられている。インスリンポンプ療法を行う1型糖尿病患者は増えているが、多くの患者はインスリン注射により治療を行っている。

 インスリン注射の副作用ともいえる低血糖は、インスリンの作用で血糖値が下がりすぎた状態。一般的には血糖値が70mg/dL以下になると空腹感や集中力の低下があらわれ、さらに血糖値が下がり50?/dL以下になると体のだるさ、眠気、ふるえ、冷や汗、動悸などあらわれる。さらに低下すると意識障害などの症状が出現する。

 治療法が進歩しており以前に比べれば低血糖の頻度は減っているが、運動量が多いとき、食事量が少ないときや遅いときなどに起きることがある。1型糖尿病の子供にとって、学校生活での低血糖への対処は重要だ。

 低血糖が起きた場合は、ブドウ糖を摂取する「補食」によって症状はおさまる。砂糖やジュースなどでもいいが、ブドウ糖の錠剤やゼリーを利用すると、少ない量で速やかに血糖を上げられる。小児の患者が低血糖の予防のために捕食をとるときは、おやつを食べているのでなく、体に必要だと理解してあげることが必要だ。

 低血糖に対処するときは、学校の先生や周囲のサポートが必要になることがある。「糖尿病の子であっても特別扱いはせず、クラスメイトの一員として接することが必要ですが、担任の先生として、低血糖が起きそうな時間帯に子供に低血糖症状が出ていないか注意し、様子がおかしいときはすぐに対応できるようにしています」、と教諭の木菜美さんは言う。

 「糖尿病の子供達が楽しい学校生活が送れますように、引き続きよろしくお願いいたします」と井上氏が1型糖尿病患者への支援を呼びかけ、記者説明会は終了した。

日本メドトロニック
  インスリンポンプ療法.jp
認定NPO法人日本IDDMネットワーク
[ Terahata ]

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