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2015年07月22日
森林浴とウォーキングが心を癒やす メンタルヘルスの改善効果を確認
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自然の中をウォーキングすると頭の中がすっきりする――そんな経験をおもちの人は少なくないのではないだろうか? 最近の研究で、木々に囲まれた自然が豊かな環境でウォーキングをすると、ネガティブな思考が減り、抑うつ的な思考が減るという研究が「米国科学アカデミー紀要」に発表された。
自然の豊かな環境をウォーキングし反芻思考を改善
スタンフォード大学の研究チームは、環境の異なる90分のウォーキングで、脳の状態がどう変わるかを実験で調べた。実験の参加者を2つのグループに分け、それぞれ90分のウォーキングをしてもらった。
19人の男女にスタンフォード近辺の樫の木や灌木などが茂る自然の豊かな環境でウォーキングをしてもらい、別の19人にはパロアルト市の交通量の多い街道をウォーキングしてもらった。
「わずか90分のウォーキングでも、環境の影響は大きいことが分かりました」と、スタンフォード大学生物学部のグレゴリー ブラットマン氏は言う。
「抑うつ的反芻」(ルミネーション)とは、同じことをいつまでもくよくよと考えたり、自らの欠点や問題について考え続ける思考プロセスを指す。過去の研究では、ルミネーションは抑うつ気分を助長し、その習慣の強い人ほど落ち込みやすく、ストレスを感じる出来事に対する抵抗力をもちにくい傾向があることが示された。
参加者に、アンケート調査に答えてもらい、「ルミネーション」の傾向について調べた。自然豊かな環境でウォーキングしたグループでは、都市でウォーキングしたグループに比べ、反芻思考が減ることが明らかになった。
さらに、研究チームは、ウォーキングの前後に参加者の脳をMRI(核磁気共鳴画像法)で検査し、「ルミネーション」によって活性化する脳の前頭前野の部位の活動を調べた。
その結果、自然の豊かな環境でウォーキングをしたグループでは、前頭前野の部位の活性化が抑えられていることが判明した。このことは、木々の多い自然な豊かな環境でウォーキングをすると、うつ傾向が軽減できることを示している。
自然とふれられる場所を増やす都市計画が必要
人口増や住居環境の悪化、経済的な負担の増加、近隣社会とのつきあいなど、都市生活には多くのストレス要因が伴う。「ストレスがもたらす否定的な影響がルミネーションになってあらわれるときに、自然がストレスの影響をやわらげる装置(バッファ)として作用する可能性があります」と、ブラットマン氏は言う。
都市にはますます多くの人が集まってきている。米国では、全人口の50%が都市に集中しており、2050年には70%に増加すると予測されている。
「うつ病などの精神疾患の増加は、急速な都市化と自然環境の減少と関連がある可能性があります。都市に暮らす人々が自然とふれあう機会を増やせるよう考慮した都市計画が必要とされています」と、スタンフォード大学環境科学部のグレッチェン デイリー氏は言う。
都市住民は自然の豊かな田舎の住民に比べ精神疾患のリスクが高いという調査結果がある。都市で暮らすことで、不安障害のリスクは20%、気分障害のリスクは40%、統合失調症のリスクは2倍にそれぞれ上昇するという。
「世界の多くの地域で都市化が急速に推し進められています。メンタルヘルスを向上させるために、都市に暮らす人々が自然とふれあう機会を増やせるよう考慮した都市計画が重要であることを、今回の研究は示唆しています」と、デイリー氏は述べている。
Stanford researchers find mental health prescription: Nature(スタンフォード大学 2015年6月30日)Nature experience reduces rumination and subgenual prefrontal cortex activation(米国科学アカデミー紀要 2015年5月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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