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2015年07月03日
座ったままだと糖尿病リスクが上昇 立って過ごす時間を90分増やそう

多くの人が1日の大部分の時間を座ったまま過ごしている。1日に8〜13時間をデスクワーク、パソコンやインターネット、テレビの視聴、車の運転などの座業中心の生活に費やしている。しかし、体を動かさないで座ったまま過ごすことが、健康に対する重大な障害を引き起こすおそれのあることに、多くの人が気付いていない。
ADAは「糖尿病をストップしよう」(Stop Diabetes)というキャンペーンを2010年に開始した。そこでは、2050年までに米国の成人の3人に1人が糖尿病を発症するというショッキングな予測をしている。
糖尿病の問題を解決する効果的な手段のひとつは、座業時間が長くなったら、意識して椅子から立ち上がって体を動かすことだ。
昼食時間にはウォーキングをし、手足を伸ばしてストレッチをし、休憩時間には下の階まで階段を昇降し水を飲み、通勤には車ではなく公共交通を使い、移動はなるべく徒歩や自転車で行うなど、「1日の座位時間を1時間30分減らす工夫」が必要だ。
研究チームは、糖尿病と心臓血管疾患の関連を調べた14件の研究、がんとの関連を調べた14件の研究、総死亡率との関係を調べた13研究をメタ解析した。その結果、座っている時間が長いと、健康に障害がもたらされることが明らかになった。
座位時間が長い人は、あまり座らない人に比べ、総死亡リスクが24%、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患による死亡リスクが18%、がんのよる死亡リスクが17%、がんの発症リスクが13%、それぞれ上昇することが分かった。
1日の中で座ったまま過ごす時間が長いと、2型糖尿病のリスクが91%上昇することが明らかになった。座位時間が長いほど、運動レベルが低下することも判明した。
「座ったまま過ごす時間をなるべく減らし、体を動かし運動をする時間を増やすことは重要です。1日に30分間の運動をしても、残りの23時間30分をじっとして過ごしていたら、あなたの健康状態と活力を改善するためには不十分なのです」と、トロント大学のデビッド アルター氏は言う。

立ったまま過ごす時間を少しでも増やすという単純な変化を、仕事やライフスタイルで実行することで、数百万人を救うことができ、10億ドルの医療費を削減できます」と、ADAのジャネル ライト氏は述べている。
また、英国公衆衛生局(Public Health England)の研究グループが発表した研究では、座位時間を減らすことが、2型糖尿病やがんのリスク低減につながると強調している。
「座ったまま過ごす時間が長いと、健康を損なうリスクになることを意識するべきです」と、ロンドン大学のチェスター レスター氏らは強調している。
座位時間が長いと、肩こりや背中の痛み、首の痛みの原因になるだけでなく、運動不足が促され、血行が悪くなり心臓に負担がかかり、肥満や2型糖尿病、がんなどの深刻な病気の発症が増えるおそれがあると、研究グループは指摘している。
こうした病気を予防するために必要なことは、単純に立ち上がって身体活動をすることだという。勤務時間の1時間以上を立位で過ごすと効果的だ。
英国公衆衛生局の研究グループは、スタンドデスクを入れるなどして、立ったまま仕事ができるようにワークステーションのデザインを変え、休憩時間にウォーキングをして過ごすなど、オフィスの環境を整える必要があると指摘している。
研究グループは次の点をアドバイスしている――
Sitting for long periods increases risk of disease and death, regardless of exercise(トロント大学 2015年1月21日)
Sedentary Time and Its Association With Risk for Disease Incidence, Mortality, and Hospitalization in Adults(Annals of Internal Medicine 2015年1月20日)
The sedentary office: a growing case for change towards better health and productivity(British Journal of Sports Medicine 2015年6月1日)
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