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2015年06月25日

腎障害バイオマーカーL-FABPとAKI

L-FABPは軽度の組織障害であっても、極めて初期から検出可能

 AKIのモデルとして虚血再灌流により腎障害を誘発したマウスを用い、虚血時間と再灌流後の経過時間ごとに、BUN、NAG、L-FABPを比較したところ、BUNは30分間虚血し再灌流後24時間経過して初めて有意に上昇していた。NAGはそれより短時間の虚血および再灌流後経過時間で有意な上昇がみられたが、L-FABPはさらに鋭敏に変化していた(図2)。

図2 腎虚血強度とバイオマーカー

虚血再灌流により腎障害を誘発したマウスの、虚血時間および再灌流後経過時間別にみた各種バイオマーカーの変化。

図2 腎虚血強度とバイオマーカー

〔Negishi K,Noiri E,et al.Am J Phathol 174(4):1154-1159,2009〕

 同様の手法でシスプラチンによる腎毒性を検討した場合もL-FABPが最も鋭敏であり、用量依存的かつ経時的に上昇した(図3)。

 続いて、L-FABPの上昇が実際に腎組織の障害を反映したものであるのかを顕微鏡所見と比較検討したところ、L-FABPが有意に上昇しているモデルでは、腎の構造的損傷を表す指標であるATNスコアが、虚血時間やシスプラチンの用量に依存して上昇していることが確認された。

図3 腎毒性強度とバイオマーカー

シスプラチンにより腎障害を誘発したマウスの、シスプラチン投与量および投与後経過時間別にみた各種バイオマーカーの変化。

図3 腎毒性強度とバイオマーカー

〔Negishi K,Noiri E,et al.Am J Phathol 174(4):1154-1159,2009〕

NSAIDs腎症を早期に検出できる可能性も

 では、L-FABPは腎障害をどの程度早期に検出できるのであろうか。シスプラチンを投与したマウスを72時間後に解剖し確認した腎障害を、BUNはシスプラチン投与48時間時点の有意な上昇で予測できたの対し、L-FABPは投与12時間時点から有意に上昇し、24時間時点のL-FABPからは極めて高い感度・特異度で72時間後の腎障害を予測できることがわかった(図4)。

図4 各種バイオマーカーのAKI予測能

マウスにシスプラチンを投与し24時間経過した時点で各種バイオマーカーを測定し、投与72時間後のAKI発症予測能を比較。

図4 各種バイオマーカーのAKI予測能

〔Negishi K,Noiri E,et al. Am J Phathol 174 (4): 1154-1159, 2009〕

 薬剤性腎症の関連でもう一つデータを提示する。セレコキシブは安全性の高いCox-2阻害薬として知られているが、hight doseでは腎障害を来すことがある。図5はマウスにセレコキシブを投与した後のL-FABPの推移であるが、レスポンダーの場合、24時間後から1週間後に高値を示した。この結果がそのままヒトに当てはまるとは言えないものの、臨床でNSAIDsを処方する機会は非常に多いことから、処方開始後の再診でL-FABPが高い患者に遭遇した場合、やや注意が必要なのかもしれない。

図5 L-FABPによるNSAIDs腎症の検出

マウスにセレコキシブ投与後、レスポンダー群では24時間後にL-FABPは著明に上昇した。

図5 L-FABPによるNSAIDs腎症の検出

〔Tanaka T,Noiri E,et al. Nephron Exp Nephrol 108 (1): e19-26,2008〕

次は...L-FABPが15μg/gCr以上なら造影剤腎症に注意が求められる

[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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