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2015年06月25日

腎障害バイオマーカーL-FABPとAKI

AKIによるCKD発症・進展を唯一、L-FABPにより予測可能

 最後に“AKIのCKD化”という話題を取り上げる。AKIのCKD化とは、正常な腎機能がAKI発症後にCKDとして遷延するものや、もとから存在していたCKDがAKIを機にステージが進むものを指す。バイオマーカーでこれを予測し得ないか、という話である。

 東大病院の混合型ICU入室患者を対象に、3年間経過を観察し得た169例について検討した(無尿や維持透析患者は除外)。CKDの進展は、3年間でeGFRがベースラインから5割未満に低下、または維持透析の導入で定義したところ30例が該当した。本検討の結果は現在投稿中だが、その一部を紹介する。

 L-FABP、NAG、NGALというバイオマーカーに加え、年 齢、APACHE?、ICU滞在日数、入院期間、ベースライン 時のeGFR、血清クレアチニン変化率を変数とすると、単変量解析ではL-FABP(OR:1.71)、ベースライン時eGFR(0.99)、血清クレアチニン変化率(1.28)の3項目が有意な因子としてあがった。そして多変量解析からは、L-FABPだけがCKD進展との有意な関連因子として抽出され(OR:1.54,p<0.0317)、ROC解析によるAUCは0.70であった。このAUCの値は実臨床におけるBNPでの心不全の診断精度とほぼ同等であり、頼れる指標と考えてよい。

「尿を診る」という原点に帰り、L-FABPの有用性を確立したい

 本日は、AKIの早期発見のみでなく、造影剤腎症のリスク評価、AKIのCKD化の予測などにおける尿中L-FABPの可能性を述べてきた。尿は体の中を非侵襲的かつ簡便にみることができる最も重要で唯一の情報源であり、ヒポクラテスの時代から尿所見をとれるものが医師だと言われていた。

 心疾患の診断においてはLDH、CK、トロポニン、BNPなど有用なバイオマーカーが次々に開発されてきたが、腎機能については昔も今も血清クレアチニンであり、これにかわるバイオマーカーを求める機運がnephrologistの間で高まっている。こうした中、我々は今後も尿中L-FABPに関するさまざまな取り組みを行いつつ、尿を診ることの価値を現代で再発見したいと考えている。

第79回 日本循環器学会 年次学術集会 ランチョンセミナー51
共催セミナー特設会場1(大阪国際会議場10F 1006+1007)

演題:腎障害バイオマーカーL-FABPとAKI

座長:獨協医科大学循環器・腎臓内科教授 石光 俊彦 氏

演者:東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科/血液浄化療法部准教授
   野入 英世 氏

共催:シミックホールディングス株式会社

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日本医療・健康情報研究所

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