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2015年05月29日
糖尿病学会が「第3次対糖尿病戦略5ヵ年計画」を新たに策定
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門脇理事長は同日の会見で、糖尿病診療をめぐる課題として、▽増え続ける糖尿病患者と肥満、▽多様な合併症による健康寿命の短縮、▽増え続ける医療費、▽人材・疫学データの不足――を指摘した。
これまでに、糖尿病の早期診断・早期治療体制を実現するために診断基準を改訂し、 糖尿病診断基準に関する調査検討委員会の精力的な活動によりHbA1cの国際標準化に成功した。また、災害時の糖尿病医療体制構築のための「災害時対応マニュアル」を作成、糖尿病と癌に関する合同委員会の立ち上げ、「糖尿病予防のための戦略研究」(J-DOIT3)の進行など、多くの成果を得ている。

また、2012年の国民医療費は39.2兆円に上り、糖尿病などに関連する医療費は、糖尿病(1.2兆円)、虚血性心疾患(0.7兆円)、脳血管疾患(1.8兆円)、高血圧疾患(1.9兆円)など全体の約15%を占め、死亡数割合では約30%を占める。
さらに、糖尿病の診療や教育に携わる人材の育成を進めているが、まだ不足しており、糖尿病の有病率・合併症の疫学データの収集も必須となっている。
これらに対策するために、(1)糖尿病先端研究の結実、(2)超高齢社会に向けた基盤整備、(3)包括的データベースによるエビデンス構築、(4)将来の糖尿病対策を担う人材育成、(5)国民への啓発と情報発信――を軸にした第3次対糖尿病5ヵ年計画を策定したと説明した。

さらに、生命活動の基本的原理を明らかにする基礎研究と、臨床的・疫学的な患者指向の研究、糖尿病の成因・病態・診断・治療に関する研究を連携し、超高齢社会における糖尿病の発症防止と重症化予防に注力する。
遺伝情報にもとづく個別化対策法の構築や、糖尿病により失われた臓器機能の再生・再建をiPS細胞などの幹細胞などの研究により目指す。臨床データベースに基づく診断・治療法の最適化にも取り組み、100万人の患者のデータを集積し、より効果的な糖尿病合併症の予防策の構築を目指す。日本糖尿病学会と国立国際医療研究センターが連携し、電子カルテをもとに包括的なデータベースを構築することが決まっているという。
門脇理事長は、「糖尿病患者さん1人ひとりが人生を謳歌し“Living with Diabetes”(糖尿病とともに生きる)を実現できる医療を目標に、引き続き糖尿病の予防・治療法の開発に取り組む。5ヵ年計画の先にある最終目標は“Breaking up with Diabetes”(糖尿病のない世界を目指す)だ」としている。
第58回日本糖尿病学会年次学術集会
一般社団法人日本糖尿病学会
・ サルコペニア肥満」には食事と運動で対策 筋肉の低下を予防
・ 糖尿病学会が「第3次対糖尿病戦略5ヵ年計画」を新たに策定
・ 糖尿病の新しい薬物療法 HbA1cは低下したが肥満が増えている
・ 「HbA1c7%未満」が目標になった理由 大規模研究で明らかに
・ 糖尿病患者の脂質異常症は積極的に治療 心血管疾患のリスクが上昇
・ 糖尿病患者は骨折に注意 骨を丈夫に保つ対策が必要
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