ニュース
2015年05月19日
肥満の原因のタンパク質を解明 肥満治療薬の開発に期待
- キーワード
- 医療の進歩
脂肪分の多い食事を続けても、体内にある特定のタンパク質をなくすと肥満にならないことを、京都大学などの研究グループがマウスを使った実験で確かめた。このタンパク質「ニューデシン」は人間の体にもあり、新たな肥満治療薬の開発につながる成果としている。
脂肪から分泌される「ニューデシン」が肥満の発症に関わる
肥満の大きな原因は、エネルギーの過剰摂取と消費不足、つまり食べ過ぎと運動不足だが、このバランスを逆転すれば、肥満を抑えられることになる。研究成果を人間に応用すれば、肥満対策につながる可能性がある。
このタンパク質は「ニューデシン」と呼ばれ、脂肪組織などから分泌される。研究グループは10年前にニューデシンを確認していたが、体内での働きは不明だった。人間でもこのタンパク質が作られているという。
「分泌性因子」は細胞や組織の間で情報を伝達し、体の恒常性を維持するのに不可欠な働きをする。研究グループはヒトcNDAデータベースからシグナル配列を目印にして新規分泌性因子をみつけ、その機能を調べてきた。
今回の研究では、分泌性因子のひとつであるニューデシンに着目し、その役割を調べるためにニューデシン遺伝子を欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を作成し、実験を行った。
肥満に伴いインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が起こりやすいが、ノックアウトマウスは高脂肪食を与えても太りにくく、インスリン抵抗性や脂肪肝の発症にも耐性があることが分かった。
詳しく調べると、運動量や食べる量は正常なマウスと変わらないが、ノックアウトマウスではエネルギーを貯める白色脂肪が分解されやすくなっており、エネルギーを消費する褐色脂肪組織で熱産生や脂肪酸酸化が高まっており、エネルギー消費が向上していた。
肥満治療の開発が世界中で行われているが、確実に成功する治療法は見つかっていない。研究グループは「肥満に関わるニューデシンの役割を明らかにすることで、新たな抗肥満薬を開発できる可能性がある」と述べている。
この研究は、京都大学の伊藤信行・名誉教授、木村郁夫・東京農工大学テニュアトラック特任教授、太田紘也・神戸薬科大学研究員らの研究グループが、中尾一和・医学研究科メディカルイノベーションセンター特任教授、伏木亨・龍谷大学教授、小西守周・神戸薬科大学教授らが共同で行ったもので、英科学誌「Scientific Reports」オンライン版に発表された。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
医療の進歩の関連記事
- 糖尿病の治療を続けて生涯にわたり健康生活 40年後も合併症リスクが大幅減少 最長の糖尿病研究「UKPDS」で明らかに
- インスリンを飲み薬に 「経口インスリン」の開発が前進 糖尿病の人の負担を減らすために
- 楽しく歩きつづけるための「足のトリセツ検定」をスタート 糖尿病の人にとっても「足の健康」は大切
- 「糖尿病網膜症」は見逃しやすい 失明の原因に 手遅れになる前に発見し治療 国際糖尿病連合などが声明を発表
- 1型糖尿病の根治を目指す「バイオ⼈⼯膵島移植」 研究を支援し「サイエンスフォーラム」も開催 ⽇本IDDMネットワーク
- 最新版にアップデート!『血糖記録アプリ早見表2024-2025』を公開
- 糖尿病と高血圧のある腎不全の男性を透析から解放 世界初の「異種移植」が成功
- 糖尿病の人の足を守るために 気づかず進行する「足の動脈硬化(LEAD)」にご注意 日本初の研究を開始
- インスリンを産生するβ細胞を増やすのに成功 糖尿病を根本的に治す治療法の開発に弾み 東北大学
- 週に1回注射のインスリンが糖尿病治療を変える 注射回数を減らせば糖尿病の人の負担を減らせる