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2015年02月06日
「うま味」を食事療法に活用 満足感を得やすく食欲を抑えられる
「うま味」は、日本料理の中心となる要素だ。数百年もの長い間、日本人に好まれ続けてきた。最近では食事療法に「うま味」を応用する試みも行われている。料理の風味を改善する役割以外にも、何か特別な理由が隠されている可能性がある。
「和食」の人気が上昇 「うま味」にも注目
「和食」は世界の無形文化遺産に登録されている食文化だ。「和食」に欠かせない味の要素のひとつに「うま味」がある。
和食のうま味は、豊富な食材を使って、短時間で作られる。そして、食材のもつ上品なうま味で、食材のもつおいしさを引き立てる点が特徴的だ。
うま味は日本で発見されたものだが、世界各地でさまざまなかたちで使われている。アジアでは、豆や穀類、魚介類を原料にした発酵食品やしいたけ、昆布、魚介類の乾物などのうま味が主流。一方、ヨーロッパでは、生乳や肉を原料としたチーズや生ハム、そしてトマトのうま味が料理に使われている。
世界中で研究され、さまざまな料理に活用されている「Umami(うま味)」は、「和食」とともに世界に誇れる日本の文化だ。
2種類のだしでうま味の相乗効果を得られる
日本料理の味の基本をなす「うま味」が、満腹感を引き出し、食欲を抑えるのに効果的とする研究が発表された。うま味は、「酸味」「甘味」「苦味」「塩味」とは違う、日本人でも説明は難しい味だ。それが第5の味として認知されている。
うま味の成分は、昆布やタマネギ、ニンジン、セロリなどに含まれるアミノ酸系のグルタミン酸に加えて、肉や魚に含まれるイノシン酸、キノコ類に多いグアニル酸などがある。これらの成分を組み合わせることで、うま味が飛躍的に強まり「こく味」となる。
肥満者率が高い欧米では、脂肪や糖分の少ない日本食が注目されている。その健康効果の鍵が、生の肉や魚を煮込むのとは異なる、乾物を用いて引き出す日本特有のうま味だ。「うま味の相乗効果」は、コンブでだしをとった後、さらにカツオ節でだしをとるなど、日本料理に応用されてきた。
うま味を効かせると満足感を得やすい
うま味に対する味覚を損失している高齢者
東北大学大学院歯学研究科・歯学部の笹野高嗣教授の研究では、グルタミン酸が引き出すうま味が、特に高齢者の健康において重要であることが示された。
笹野教授らが44人の高齢患者を対象に行った調査では、高齢者の中にはうま味に対する味覚を損失している人が少なくないことが判明した。そうした高齢者は、食欲と体重の減少を訴えており、全体的に健康状態が悪かった。
糖尿病などの慢性疾患をもつ高齢者では、薬の副作用で味覚障害や唾液分泌の減少が起こりやすい。唾液分泌を改善するための治療が患者の味覚に効果があり、うま味感受性が減退した患者の助けとなる可能性がある。
「うま味への感受性は、栄養感覚や腸における消化の調節に影響しており、健康的な日常生活を維持するために重要」と、笹野教授は述べている。
うま味を活用すれば塩分を減らせる
和食は食塩量が多くなりがちな料理だが、基本となるだしのうま味を効かせることで減塩も可能だ。フィンランドで行われた研究では、それだけでは味気ない減塩メニューであっても、カツオだしなどグルタミン酸を付加することで満足感を得やすくなり、受容度も高まることが示された。
塩分の一部分をうま味で代替すると、もともとのおいしさは失わずに塩分量を減らせることが科学的に示されている。時間のあるときにだしを多めに手作りして冷蔵保存したり、冷蔵庫に昆布を水に浸しただけの「昆布水」を常備するのも、塩分を減らすために手軽で便利な方法だ。
日本料理のだしではグルタミン酸を多く含む昆布と、イノシン酸が多いかつお節を組み合わせて、うま味を強めている。西洋料理ではイノシン酸に富む肉や魚などと、グルタミン酸を含む玉ねぎなどの野菜を合わせて料理する。うま味の相乗効果は、世界中の調理で古来より経験的に利用されている。
Flavour improvement of reduced-fat peanut butter by addition of a kokumi peptide, γ-glutamyl-valyl-glycine(Flavour 2015年1月26日)The important role of umami taste in oral and overall health(Flavour 2015年1月26日)
The 'fifth taste,' umami, could be beneficial for health(Biomed Central 2015年1月25日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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