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2014年12月19日
やせているのになぜ糖尿病に? 余分な脂肪を減らして改善

ドーティーさんは、主治医から5kgの減量をアドバイスされ、1年間で体重を4kg減らすのに成功した。その結果、血糖値やコレステロール値などが改善し、治療薬の種類を減らすことができたという。
「肥満と糖尿病について考えるときには、体脂肪の量だけでなく、分布状態にも注意する必要があります」と、英国のニューカッスル大学のロイ テイラー教授(内分泌代謝学)は言う。
脂肪組織には「皮下脂肪」と「内臓脂肪」があり、どちらもエネルギーを備蓄しているが、それぞれ違う働きをしている。
皮膚の下にある「皮下脂肪」は外からの刺激を吸収したり、外気温の変化を断熱することで、体温を一定に保つ役割を果たす。一方、「内臓脂肪」は内臓のまわり、特にお腹の中の腸のまわりに付くことで、内臓の働きを正常に保つ役割がある。
さらに、最近では、皮下脂肪でも内臓脂肪でもなく、本来は脂肪がたまらない臓器の中にたまる「異所性脂肪」が第3の脂肪として注目されている。
「異所性脂肪」は、肝臓や筋肉、心臓といった臓器にエネルギー源として蓄えられる脂肪のこと。少量であれば問題はないが、過剰に蓄積すると脂肪肝や非アルコール性肝炎(NASH)、2型糖尿病などの原因になる。
厄介なのは、やせていてる人は「異所性脂肪」がたまりやすいことだ。やせている人は内臓や皮下の脂肪の貯蔵能が低いために「異所性脂肪」が増えやすい。運動不足と高脂肪の食事が原因のひとつとなっている。
テイラー教授らの研究チームは、「英国糖尿病前向き研究」(UKPDS)に1977年〜1991年に登録された5,102人の糖尿病患者のデータを解析した。うち約10%は、BMIが18.5〜24.9の標準体重の患者だった。英国の2型糖尿病患者のうち、64%はBMIが25未満だと推定している。
「標準体重なのに糖尿病を発症する人は予想以上に多いことが判明しました。標準体重であっても、体脂肪が多く蓄積している患者が少なくありません。2型糖尿病と新たに診断される患者の8割以上は、体重をコントロールすることで糖尿病を改善できる可能性があります」と、テイラー教授は言う。
やせている人の多くは、自分も糖尿病になってしまう可能性があるという自覚をあまりもっていない。そのため検診などで血糖値が高めだと言われても、あまり深刻に考えない傾向がある。
そのため、それ以上悪化させないために、食事を気をつけたり運動をして、血糖値を下げなくてはならないという危機感が薄いという。
自分はやせているから平気だと考え食べ過ぎや運動不足を続けていると、1年後の血糖値は上昇しており、合併症の危険性も高まる。

2型糖尿病と診断されたドーティーさんは、その後、1日30分のウォーキングを続け、通勤でも車を使わずに徒歩と電車で済ませるようになった。その結果、体脂肪量は減り体重は4kg減少した。
「やせている人でも、体重をコントロールすれば、体に蓄積された見た目では分かりにくい脂肪を減らせます」と、テイラー教授は説明する。
年末年始には行事が重なり、食事でカロリーを過剰に摂取しがちだ。クリスマスの1週間で5,000kcalを余計にとってしまったとする。それを減らすには、1日に500kcalを燃焼する必要がある。運動で500kcalのエネルギーを使い切るのは容易なことではない。
「体重が標準体重と比べて増えてきた、減ってきたことを意識すると同時に、やせている人も食事を管理し、運動を習慣として行い、体脂肪がたまりすぎないように心がける必要があります」と、テイラー教授は強調している。
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