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2014年10月10日
1日20分の筋トレで記憶力がアップ うつ症状を軽減する効果も
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筋力トレーニングは日常の空いた時間に手軽に取り組める運動だ。直立した状態から膝関節の屈曲・伸展を繰り返すスクワットや、水を入れたペットボトルを両手で持ち、上げ下げするだけでも立派な筋力トレーニングになる。
通勤途中の時間帯は、座席に腰を下ろさないで、電車に揺られながら立っているだけでも、体のバランス感覚が養われ、体幹を鍛えることにつながる。
米ジョージア工科大学の研究チームは、46人の被験者を対象に、パソコン画面に90枚の写真を表示して覚えてもらった。写真は、水辺で遊ぶ子供などの明るい雰囲気のものや、足をケガした老人などの暗い雰囲気のものまで、幅広く揃えてあった。
写真を見せた後で、被験者を2つのグループに分け、片方には筋力トレーニングに取り組んでもらい(介入群)、もう片方は同じ時間、椅子に座ったまま過ごしてもらった(対照群)。運動をするグループは、足の筋肉に負荷をかけ延ばしたり曲げたりする運動を50回行った。
2日後に参加者に前回に見せた90枚に、新しい写真90枚を混ぜた180枚の写真を見てもらい、どの写真を覚えているかを答えてもらった。
その結果、筋力トレーニングを行ったグループは平均して60%の写真を覚えていたが、運動をしなかった対照群が覚えていたのは50%だった。

「エピソード記憶」は個人的な出来事や経験の記憶で、時間・空間に関連付けられる。例えば、「昨日は外出して○○に行った」「○○と食事をした」というような記憶に相当する。エピソード記憶は年齢が高くなると衰えやすいと考えられている。
スポーツジムに通って本格的な筋力トレーニングに取り組まなければならないというわけではなく、日常でできる運動で十分に効果を得られるという。
運動をすると、脳内の神経伝達物質である「ノルエピネフリン」が分泌されやすくなる。ノルエピネフリンが出ると、脳内神経のネットワークがスムーズに作られ、記憶が定着しやすくなる。覚醒や集中、意欲、記憶などに加え、思考の柔軟性にも関わっていると考えられている。
被験者の唾液を調べたところ、筋力トレーニングを行ったグループでは、ノルエピネフリンのマーカーである「αアミラーゼ」という酵素の濃度が高くなっていた。
「高齢者の認知症予防にも運動が効果的であることを裏付ける研究結果です。どんな運動をどれだけ行うと記憶力を高められるか、今後の研究で確かめる必要があります」と、ワインバーグ氏は述べている。
その結果、運動や身体活動はは抑うつ症状の軽減に効果的であり、抗うつ薬と似た作用があると結論づけた。
運動には、脳内伝達物質であるセロトニンの分泌量を増やし、沈んだ気持ちを盛り上げ、情緒バランスを整える作用がある。それが落ち込んだ気分や減退していた食欲、睡眠障害を改善させる。
抗うつ薬には、記憶や感情をつかさどる脳内の海馬体の神経細胞の新陳代謝を促す作用があるが、運動にも同じ効果があるという。
「抗うつ薬には副作用があり、医療費もかかりますが、運動にはそうした問題はありません。うつ病の治療に運動を取り入れれば治療を補完できます」と研究者は指摘している。
Lift weights, improve your memory(ジョージア工科大学 2014年9月30日)
A single bout of resistance exercise can enhance episodic memory performance(Acta Psychologica 2014年10月)
Sport and physical activity help against depressions(ベルン大学 2014年9月16日)
Effects of exercise on anxiety and depression disorders: Review of meta-analyses and neurobiological mechanisms(CNS & Neurological Disorders - Drug Targets 2014年10月)
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