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2014年08月15日
「患者中心」の治療を実現 糖尿病患者の気持ちを伝えることが第一歩

しかし実際には、年間約1万5,000人以上が糖尿病が原因で透析治療を開始している現実がある。治療を受けている患者のうち、1年間でおよそ1割近くが通院を中断してしまっているという調査結果もある。
糖尿病の治療にはさまざまな制限が伴う。生活スタイルに気をつけるのにも限度があり、多くの制限からストレスも高まるため、前向きに治療に取り組めない患者も少なくない。治療が継続しない原因はどこにあるのだろうか。
これについて石井教授は、「これまで医療者は、科学的な根拠にもとづく治療を行おうとするばかりに、患者視点での治療をあまり考えてこなかったのではないか。患者中心の医療に対する積極的姿勢や、患者さんの心理的状態を知るための医療者とのコミュニケーションが不足している」と指摘している。
糖尿病は、合併症が生じていない段階では自覚症状があまりないことが特徴だ。そのため、糖尿病と診断されても病気になっているという自覚がなく、困惑する患者も多くいる。医療者が合併症の説明をしても他人事のように感じられてしまう。診断結果や治療効果にも実感がわかない。このような特徴から糖尿病は「ヴァーチャル」な病気と表現される。
一方で、血糖測定やインスリン注射で痛みを感じたり、食事療法のために食べたいものを我慢する必要があり、患者には辛い思いを伴う「リアリティ」がある。患者にとっては、効果が感じられなければ治療を継続していくのは困難になる。
では、どのように治療を助けるのか。石井教授の研究によると患者のQOLを高めることが、治療の実行度の向上につながる。そのためには、医療者と糖尿病患者とのコミュニケーションが鍵となるという。
「医療者と患者の協力関係ができていると、アドヒアランスが向上し、QOLが高まるという調査結果がある。医療者の態度を、患者の自立性を高めるような方向に変えていく必要がある。そのためには心のケアも重要となる」と、石井教授は話す。
現実には、糖尿病患者の心理的サポートや医療者とのコミュニケーションについて、世界17ヵ国を調査した研究では、「診察時に医療者から“糖尿病を抱えての生活に不安があるか、気分が沈むことがあるか”という問いかけを受けているか」という質問については、世界平均が30%であるのに日本は16%と低い数値だったという。
「医療者は、患者の血糖値やHbA1c値などの検査値のみにもとづいて治療法を決定すべきではない。その人が生まれてから今まで辿って来た人生を知り、その人の人生観を聴くことが大切となる」と、石井教授は言う。
石井教授が行った調査では、患者が“治療の方針に関する自身の考えを医師に伝えているか”という質問で“十分伝えている”と答えた人では、QOLが高くなっていたという。
「患者の“こころ”と“からだ”をともに診るという姿勢が医療者には必要となる。糖尿病の治療は、糖尿病をもつ人の人生に対する理解と深い洞察、そして温かいまなざしなくしては成功しない」とまとめた。
第1回糖尿病医療学研究会
奈良県立医科大学 大講堂(12日)
(1)症例を中心とした日常臨床経験の発表とディスカッション
範囲は限定しませんが、通常の医学的研究会に見られる治療とアウトカム(HbA1c、血圧、脂質、合併症)の関係のような演題は範囲外とします。
以下発表の例です。
糖尿病症例の(心理的)検討,医療者自身の変化体験,QOL評価法と使用経験,医療者の悩み受苦,糖尿病医療への洞察,傾聴と共感の研究,ナラティブ,行動変容など。
(2)糖尿病医療に関連する講演、講義
「こころとからだのケアをする」、「医療コミュニケーション」、「社会、地域と糖尿病」、「私の臨床の場から考える糖尿病ケア」などを予定しています。
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