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2014年03月28日

糖尿病患者の3人に2人は「医師とのコミュニケーション不足」を実感

 糖尿病の患者数が増えている一方で、医療の技術はより高度になり、医師は診療に忙殺されるようになった。糖尿病の医療費も上昇している。多くの患者は、「医師に十分に話を聞いてもらえず、不満を感じている」という調査結果が発表された。

 英国糖尿病学会(Diabetes Uk)が糖尿病患者1,609人を対象とした調査によると、患者の64.9%は「個別化された医療」を受けられていないと感じているという。もっとも大きな原因は「医師とのコミュニケーション不足」だ。
糖尿病患者は孤独を感じている
 英国には、初期治療を全て、かかりつけ医師(GP)が行うという医療制度がある。GPは家庭医(Family Doctor)とも呼ばれ、あらゆる疾患の初期診察と治療を行う。

 専門的な治療を受ける場合には、GPが専門医への窓口となる。逆に言えば、GPの診断と紹介がなければ専門的な治療を受けることができない。患者は、GPとより親密に関わらなければならない。

 糖尿病は完治することのない病気なので、生涯にわたり治療を続けなければならない。合併症を防ぐために、血糖値や血圧値、コレステロール値などを長期にわたり良好にコントロールしなければならない。そのために患者による自己管理が重要となる。

 「患者の不満としてもっとも多いのは、大変な思いをして糖尿病の治療をしているのに、“医師が話を聞いてくれない”、または“病気のために孤独を感じる”といったことでした」と、Diabetes Uk理事長のバーバラ ヤング氏は言う。

医師と患者の溝を埋めるナラティブ医療
 最近の医療では、医師が患者への理解を深め、患者との意思疎通を助けるため、「ナラティブ医療」と呼ばれる新しい考え方が採用されるようになっている。

 医療従事者の仕事に、「困っている患者たちとのコンタクトスキルを磨くこと」が含まれると認知されるようになった。医療従事者が患者の声を聞き、不安を理解することにより、より一貫した診療を行えるようになる。

 これまで医療は疾患中心であり、疾患の原因を探索したりその治療法を開発することが主な目的だった。しかし、疾患の状態は1人ひとりで千差万別、同じ病気であっても同じ治療法を適用することが必ずしも正しくない場合がある。

 患者が語る「なぜ糖尿病を発症したか」、「経緯」、「症状」、「糖尿病についてどのように考えているか」といったストーリーを理解すれば、患者が抱える問題を、身体面だけでなく、メンタルや心理状態、社会的立場などを含むあらゆる要素から把握できるようになる。

 「糖尿病の治療は、回答用紙のボックスにチェックマークを入れる作業であってなりません。患者と医療従事者が対話を通じて良い関係性を作り上げることで、双方が満足できる治療を行えるようになります」と、ヤング氏は指摘する。

糖尿病患者を支援するチーム医療
 糖尿病などの慢性疾患に対する治療・ケアでは、さまざまな専門家が関わる「チーム医療」が必要とされる。1人の患者に対し、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師、理学療法士などが、強い職種意識をもって共同医療を行うことが求められるようになった。

 糖尿病のチーム医療を成り立たせるために、「異なる知識と情報をもつ者同士の自由なコミュニケーションが前提になる」としている。

 英国のかかりつけ医師(GP)は、患者と家族単位で関わっているので、その家族の人間関係、また、家族の病気歴、傾向をも知っているケースが多いという。

 英国の医療における環境は、全人的で包括的な医療実践が行われやすい風土にあり、「ナラティブ医療」や「チーム医療」を行いやすいと考えられている。

 「患者にはストーリーがあり、そのことを知ればよりよい治療ができます。患者は医師が理解してくれようとしていると思えば、すべてを医師に話す可能性が高まります」と、ヤング氏は述べている。

Lack of care planning failing people with diabetes(英国糖尿病学会 2014年3月17日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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