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2014年03月27日

納豆やヨーグルトなどの発酵食品 新たな健康効果が続々と判明

 ヨーグルトや納豆などの「発酵食品」から受けられる恩恵は絶大だ。海外でも発酵食品の機能性に注目が集まっている。
日本の伝統的な発酵食品は注目されている
 発酵食品は、それぞれの土地の気候風土から生まれ、育まれ、受け継がれてきたものだ。日本にも伝統的な発酵食品は多い。醤油、味噌、納豆、みりん、かつお節、漬物、米酢などの食品は全て発酵食品だ。

 発酵食品とは、微生物の働きで人間にとって有用な食べ物へと変化した食品。発酵させることで、風味が増し、おいしさに深みが出るなど、もととなる食材以上の魅力をつもようになる。さらには、保存性や栄養成分も高まり、体内への吸収率が良くなる。

 それに加えて、漬物やヨーグルト、チーズなどでは「腸内環境を整える乳酸菌が増える」、納豆では「成分が変化して栄養価が高くなる」など、発酵食品には栄養面でも優れた機能がある。

 最近の研究で「ヨーグルトなどの乳酸菌に、2型糖尿病の発症リスクを下げたり、免疫力を高めインフルエンザを予防する働きがある」ことが判明したことを機に、ふだん何気なく食べている発酵食品の秘密に迫ってみた。

ヨーグルトを食べて糖尿病を予防
 ヨーグルトなどでよく知られているビフィズス菌は乳酸菌の一種だ。乳酸菌は、腸内で大腸菌など悪玉菌の繁殖を抑え、腸内菌のバランスをとる役割を果たしている。

 乳酸菌は便通の改善だけではなく、コレステロールの低下や、免疫力を高めがんを予防するなど、さまざまな働きをすると考えられている。

 ケンブリッジ大学の研究者が、3,500人を11年間追跡した調査で、カップ入りヨーグルトを週4.5個食べていた人では、2型糖尿病のリスクが28%低下したことが判明した。

 ヨーグルトには、腸内で非常に有効な働きをする善玉菌(プロバイオティクス)や、ビタミンKが含まれており、糖尿病のリスクを下げる作用があると考えられている。

野菜と発酵食を同時に食べると効果的
 野菜を発酵させて作る食品は世界中にあり、日本の漬物、韓国のキムチ、ドイツのザワークラウト、欧州全般でみられるピクルスなどがそうだ。

 野菜に含まれる食物繊維は、乳酸菌などのエサになって増殖を助ける働きがある。食物繊維が多量に含まれるごぼう、こんにゃく、いも類、豆類と、漬物、味噌、醤油、納豆に代表される発酵食品を同時にとる日本の伝統的な食事スタイルは、腸内環境を整えやすく理想的だ。

 ヨーグルトだけでなく、ふだんから多種類の発酵食品を食べていると、腸内環境が整えれるという研究も発表された。スペインのグラナダ大学の免疫学の研究者は、毎週ヨーグルトやチーズ、ピクルスなどの発酵食品を3種類以上食べていた被験者に、2週間それらの摂取をやめてもらい、善玉菌の変化を調べた。

 その結果、免疫機能を支える消化器官内の善玉菌が大幅に減少していることが判明した。その後の2週間、被験者に発酵食品はヨーグルトだけ食べてもらったが、善玉菌の数はもとに戻らなかった。

 再びさまざまな発酵食品を多く食べるようになると、善玉菌の数は回復したという。ふだんから多種類の発酵食品を食べていると、腸内の善玉菌が増えやすいことを裏付ける研究だ。

京都の漬物「すぐき」の驚くべき効果
 発酵食品には、体が備えている防御メカニズムを活性化する働きがあることが確かめられている。ニュージーランドのマッセー大学の研究者らは、日本の京都の伝統的な漬物である「すぐき」に含まれる乳酸菌に着目し研究を行った。

 実験マウスに、すぐきに含まれる乳酸菌を14日間摂取させた後で、インフルエンザウイルスを感染させた。その結果、乳酸菌を摂取していたマウスでは、感染による体重減少ならびに健康状態スコアの悪化が抑えられ、インフルエンザウイルスに対する防御効果があることが判明した。

 この乳酸菌には、ウイルスに感染したときにその増殖を抑えるインターフェロンの産生能や、がん細胞や感染細胞を殺す細胞傷害活性を高める作用があるとみられている。

ファストフード中心の食事では発酵食品が不足する
 このように、多くの発酵食品に健康促進の効果があることが確かめられているが、伝統的な食事スタイルは減り、動物性食品を多く摂取する欧米型の食事やファストフードに席巻されるにつれ、その消費量は世界的に減少しつつあるという。

 かつての日本の食事には食物繊維が豊富に含まれており、発酵食品も同時に食べるので、腸の中は乳酸菌がふんだんにあるエサを食べてどんどん増殖できる環境にあった。

 しかし今では食物繊維の摂取量が減少し、代わりにタンパク質や脂質が増加し、善玉菌が増えにくい状態になっている。

 英国のレディング大学で発酵食品を研究しているグレン ギブソン教授(食物微生物学)は、「発酵食品を作るのには手間と時間がかかります。効率を追い求める現代社会では減少傾向にあります。サプリメントも普及していますが、乳酸菌は発酵食品から摂取しないと、腸内ではなかなか増えません。ふだんから発酵食品を積極的に食べることをお勧めします」と話している。

Yogurt In Nutrition: Best of Yogurt Research 2013(米国栄養学会 他 2014年2月5日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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