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2014年01月24日
米国糖尿病学会が新しい臨床ガイドラインを発表 患者中心の医療へ
米国糖尿病学会(ADA)は「2014年版 糖尿病臨床ガイドライン」(2014 Clinical Practice Recommendation)を、「Diabetes Care」1月号補足号に発表した。
「個々の患者に合わせた最適な治療」を強調
ADAは糖尿病診療に関するエビデンスに基づいたガイドラインを毎年発表している。今回の改訂では「個々の患者に合わせた最適な治療」の必要性を強調している。
今回の改訂で追加されたのは以下の3点――
・糖尿病神経障害の治療において、さまざまな選択の中から最適な治療薬を選び処方することを奨励した。
・食事療法を最適化するために、管理栄養士を交えた療養指導チームを作ることを奨励した。
・妊娠糖尿病(GDM)に対し、2つのタイプのスクリーニング検査を設けた。
「個々の患者に合わせて糖尿病の治療を最適化することはいっそうに重要になっている」と、ADAの専門診療委員会のリチャード グラント氏は話す。
「基礎となるエビデンスが集積されるにつれ、全ての患者に適合する共通する解決策を見出すよりも、むしろ個々の患者のニーズを満たすサポートが必要なことが明らかになってきた」(グラント氏)。
例えば、多くの糖尿病患者が、しびれや疼痛、知覚異常をともなう神経障害を発症しているが、全ての患者に同じように効く薬は存在しない。医師は、個々の糖尿病患者のコンディションに合わせて、どの薬がもっとも効果があるかを注意深く試しながら、最適な治療法を探しだす必要がある。
「糖尿病の治療では、治療内容を決定するときに、もっと患者によく理解してもらい治療に参加してもらう必要がある。そうすることで、医師はより副作用の少ない、最適な治療を行えるようになる」と、グラント氏は強調する。
個々の患者のニーズに配慮した食事療法を模索
食事療法においても同じことがいえる。「すべての患者に共通する画一的な食事療法よりも、個々の患者のニーズに配慮した方法を模索している」と、栄養ステートメント設置委員会のパティ アーバンスキー氏は話す。
「低炭水化物ダイエットや低脂肪ダイエットなど、さまざま食事スタイルがあるが、どれも一長一短がある。確かなことは、糖尿病療養に栄養士が参加し専門的なアドバイスをすることで、HbA1cが最大で、1型糖尿病患者では1%、1型糖尿病患者では2%、それぞれ低下したという報告があることだ」(アーバンスキー氏)。
「糖尿病患者にとって、糖尿病の食事療法を管理栄養士とともに進めることが重要であることを示すエビデンスがある」としている。
妊娠糖尿病(GDM)のスクリーニングと診断については、国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)が示した、妊娠24〜28週での75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)による「ワンステップ方式」が従来は示されていた。
それに加え、米国立衛生研究所(NIH)が示したもうひとつの検査法は、非空腹時の50g glucose load test(GLT)行い、閾値に達した女性には空腹時100gOGTTを行うというものだ。妊娠糖尿病の診断にはこれらの「ツーステップ方式」が採用された。
その他にも、次のことが追加された――
・糖尿病患者の1日の塩分(ナトリウム)摂取量を5.8g(2,300mg)未満を抑えることが勧められる。これは糖尿病を発症していない健常者にも勧められることだが、塩分制限は糖尿病や高血圧患者ではとりわけ必要だ。
・糖尿病の診断では、約3ヵ月の平均血糖値をあらわすHbA1cが重要であることを明確にした。HbA1cは空腹時でなくとも検査ができ、全ての患者に適用される。
・入院患者の糖尿病管理の際には、定期的にインスリン投与量の調節を行う「責任インスリン方式」を実施し、ある時点の高血糖に対しインスリン投与量を決定する「スライディングスケール方式」を推奨しない。
Executive Summary: Standards of Medical Care in Diabetes―2014(Diabetes Care. January 2014; vol.37 no.Supplement1 S5-S13)
米国糖尿病学会(ADA)「2014年版 糖尿病臨床ガイドライン」 主な内容(1)
| 糖尿病の検査 |
| ・2型糖尿病と糖尿病予備群(prediabetes)を判定するために、体格指数(BMI)が25以上の過体重や肥満の人は検査を受けるのが望ましい。糖尿病のリスク要因をひとつ以上もっている成人は全ての年齢で、リスクのない人でも年齢が45歳以上であれば検査が考慮される。(グレードB) ・糖尿病の診断はHbA1c、空腹時血糖値、75gブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間値で行う。(グレードB) |
| 1型糖尿病の検査と診断 |
| ・1型糖尿病患者の血縁者に対するスクリーニング検査を行うことで、1型糖尿病の早期診断が可能になる。(グレードE) |
| 妊娠糖尿病の検査と診断 |
| ・妊娠糖尿病(GDM)の検査は妊娠24週〜28週に行う。(グレードA) ・妊娠糖尿病の既往歴をもつ女性は2型糖尿病を発症するリスクが高いので、少なくとも3年ごとに糖尿病と糖尿病前症のためのスクリーニング検査を行う。(グレードB) ・インスリン頻回注射(MDI)を行う患者やインスリンポンプで治療を行う患者は、運動の前後、就寝前、食事の前後、運転時など、低血糖が疑われる時間帯に血糖自己測定(SMBG)を行う。(グレードB) |
| 糖尿病の治療の目的 |
| ・血糖コントロールの目標ではHbA1c値を重視する。HbA1c7%未満を維持していれば、細小血管症の発症を予防できる。(グレードB) ・血糖コントロール目標は、患者の年齢や合併症などに応じて設定する。重症低血糖が頻発するなど治療強化が困難な患者では、HbA1c8%未満を目標とする。(グレードB) |
| 1型糖尿病のインスリン療法 |
| ・1型糖尿病患者は、1日3〜4回のインスリン頻回注射(MDI)、あるいは持続皮下インスリン注入(CSII)を必要とする。(グレードA) ・1型糖尿病患者は、低血糖のリスクを減らすためインスリンアナログ製剤を使う。(グレードA) |
| 2型糖尿病の薬物療法 |
| ・メトホルミンは2型糖尿病の血糖降下薬の第1選択となる。メトホルミンは体重増加を抑制し、低血糖のリスクが低く、血糖降下作用に関しても用量依存性が明らかだ。(グレードA) ・経口薬による薬物療法を初めて3ヵ月が経過した時点で、血糖コントロールを達成できない場合は、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、インスリンなどの2剤併用を考慮する。(グレードA) ・2型糖尿病が進展した患者では、多くの場合で最終的にはインスリン療法を始めるのが適切。(グレードA) |
| 糖尿病の食事療法 |
| ・食事療法(MNT)は、1型糖尿病と2型糖尿病を含む、すべての糖尿病患者に推奨される。(グレードA) ・糖尿病や糖尿病前症の患者は、食事療法に精通した登録栄養士によって、個々の患者に最適化された食事指導を受けるべきだ。(グレードA) ・食事療法はHbA1cを改善し、医療コストの削減につながる。食事指導には医療保険が適用されるべきだ。 ・2型糖尿病の患者や肥満、過体重の患者は、食事療法によりエネルギー摂取量を減らし、体重減少を促すことことが必要。(グレードA) ・肥満を予防し、適正体重を維持することで、多くの場合で血糖値や血圧、脂質値が改善する。体重をコントロールするために、食事療法や運動療法に関するカウンセリングが勧められる。(グレードA) |
| 炭水化物の摂取 |
| ・食事の炭水化物の摂取量を管理することは、血糖コントロールを改善する有効な戦略となる。(グレードB) ・炭水化物は野菜、果物、全粒粉、豆類、乳製粉などに含まれる。炭水化物量に加え、脂質、ナトリウム(塩分)を適切に管理することが食事療法の目的となる。(グレードB) ・炭水化物が同量であれば、食品を代えても血糖値への影響は変わらない。食事全体のエネルギー摂取量を管理し、過剰摂取を避けることが求められる。(グレードA) ・糖尿病の人は、体重増加や心血管疾患の悪化を防ぐために、高カロリーの糖質や甘味料を制限するべきだ。それらには果糖コーンシロップや精製白糖なども含まれる。(グレードB) |
| 脂質の摂取 |
| ・糖尿病患者にとって理想的な脂質の摂取量を示したエビデンスはない。脂質の摂取については、個々の患者に合わせて指導されるべきだ。脂質は量よりも質が重要となることもある。(グレードC) ・不飽和脂肪酸の多くとる地中海式食事法が、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善し、心血管疾患のリスクを下げるという研究が報告されている。脂質を抑え糖質の多い食事パターンが勧められる。(グレードB) ・魚に含まれるn-3系脂肪酸(EPAとDHA)や、植物油に含まれるα-リノレン酸(ALA)に、心臓病の予防効果があると報告されている。これらは糖尿病の人にも勧められる。(グレードB) |
次は...糖尿病のセルフマネージメント教育、運動と身体活動、低血糖の予防、
高血圧の治療、心理・社会的なケア、糖尿病腎症、糖尿病網膜症 など
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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