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2014年01月22日
糖尿病網膜症の検査を受けている患者は半分以下「1年に1回は必要」

この研究は、米ジョンズホプキンス大学医学部眼科のニール ブレスラー教授らが発表したもので、医学誌「JAMA オプサルモロジー」に掲載された。
ブレスラー教授によると、米国では糖尿病患者の10%が生涯に糖尿病網膜症を発症しており、患者数は74万人以上に上るという。糖尿病網膜症は早期に治療を開始することが大切で、適切な治療を受ければ90〜95%のケースで失明などの視力障害を避けることができる。光凝固治療を行うことで網膜症の進行を防ぐことができ、失明のリスクを5%未満に下げることができる。
研究チームは、米国疾病管理予防センター(CDC)が2005年〜2008年に行った米国健康栄養調査(NHANES)の調査データを用いて、2型糖尿病に網膜症を合併した患者の受診状況などを調査した。
過去1年間に眼底検査を受けたことのある40歳以上の糖尿病患者798人を対象に調査をした。48人が糖尿病黄斑浮腫を発症しており、うち30%は糖尿病が原因となる視覚障害をすでに自覚していると回答した。
調査の結果、医師より視力低下の危険を指摘された糖尿病患者のうち55.3%は、糖尿病と失明の関連について説明を受けたことを覚えていなかった。さらに、46.7%は糖尿病専門の医療スタッフのアドバイスを得ていないと回答し、40.3%は瞳孔拡大を含む眼の精密検査を受けていないとした。
「糖尿病網膜症には痛みが伴わず、自覚症状が乏しい。視力の低下に気づくのが遅れ、しばしば手遅れの状態になってから眼科を受診する場合も多い。“もっと早く治療を始めていれば”と残念に思うケースは少なくない。検診を定期的に受け、異常が起きていれば早期に治療を始める必要があることを患者に理解してもらう必要がある」と、ブレスラー教授は強調している。
米国の医療保険は、日本の国民皆保険と異なり、公的保険は高齢者向けのものと低所得者向けのものがあるだけで、大半は企業単位や個人で加入する民間保険に頼っている。保険料は高額になりがちで、保険に加入していない人も少なくない。
医療保険に加入していない人が、十分な糖尿病の治療を受けられていない可能性があるという。ブレスラー教授は、糖尿病網膜症を早期発見・治療するために、次のことを勧めている。
・ 健康診断や職場での定期健診、医療機関での健診などを利用して、早期発見のチャンスを逃さない。
・ 糖尿病網膜症の既往歴のある患者は、1年に1回以上は眼科医による定期診察を受ける。
・ 米国政府は、多くの人が保険診療の恩恵を受けられるように、医療機関へのアクセスを保障する義務を負っている。
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