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2013年07月10日
食事で「よく噛む」と糖尿病リスクが低下 6800人を調査
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京都大学大学院医学研究科の家森正志・助教(口腔外科学)らは、滋賀県長浜市の住民を調査。噛む能力が最も高いグループでは、最も低いグループに比べて2型糖尿病リスクがほぼ半減していたと、米科学誌「PLOS ONE」(電子版)に6月5日付けで発表した。
今回の研究では、2009年7月〜10年11月に登録された40〜74歳の6,827人(男性2,283人、女性4,544人)を対象に、噛む力と食事時間が糖尿病に関連するかを調査した。
噛む力が衰え、咀嚼回数が減ることが、口腔内環境の悪化をもたらし、ミネラルやビタミン、食物繊維などの摂取量の低下につながることが、これまでの研究で示されている。
時間をかけてよく噛んで食べることが、食事誘導性熱産生やグルコース代謝に影響し、食後高血糖や肥満を改善することは、過去の研究で確かめられている。よく噛むと、食欲を抑制する「GLP-1」などの消化管ホルモンの分泌も促される。
噛む力は被験者に専用のチューイングガムを1分間噛んでもらい、咀嚼によるガムの色調変化を分光光度計で計測し判定した。食べる速度のデータは本人への質問票(「速い」「普通」「ゆっくり」の3段階)から集めた。
男性のうち177例(7.7%)、女性のうち112例(2.4%)が糖尿病と診断された。
解析した結果、男性では噛む力が強いほど糖尿病になるリスクが低下し、咀嚼力によって4グループに分けたうちの最も少ないグループに比べ、最も多いグループでは糖尿病リスクが47%低下していた。女性でも最も多いグループでも糖尿病リスクが44%低下していた。
男性の、噛む力の最も弱いグループ(Q1)と比較した場合の糖尿病の調整後オッズ比(OR)は、次に弱いグループ(Q2)は0.91(95%CI 0.58〜1.4)、Q3は0.77(同0.48〜1.2)、最も高いグループ(Q4)は0.53(同0.31〜0.90)となり、噛む力が高いグループほど、糖尿病リスクが低下することが示された(P trend=0.031)。
女性では噛む力が最もグループで糖尿病リスクの低下がみられたものの、全体に有意な関連はみられなかった。Q2は1.2(95%CI 0.73〜2.0)、Q3は0.95(同0.54〜1.6)、Q4は0.56(同0.30〜1.0)となった(P trend=0.083)。
食事時間と糖尿病リスクの関連については、男性で「速い」(Q1)に対する、「普通」(Q2)の糖尿病のORは0.87(95%CI 0.61〜1.2)、「ゆっくり」(Q3)では0.38(同0.16〜0.91)と有意な関連が認められた(P trend=0.048)。女性では、Q2は0.92(95%CI 0.59〜1.4)、Q3は1.5(同0.73〜3.0)となり、有意差はみられなかった(P trend=0.658)。
「今回の研究によって噛む力が強いほど、糖尿病リスクが低下することが確かめられました。また、食事時間が長いことが糖尿病リスクを下げる因子となることが示されました」と、家森氏は述べている。
一般に、加齢とともに噛む力(咬合力)は弱くなっていく。硬いものを食べられなくなる原因の大半は歯にあるといっていってもいい。「虫歯や歯周病などの歯科疾患を放置せず、歯科医に相談して歯科治療を受けて、噛む力を良好にたもつことが大切です」と、家森氏は強調している。
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