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2013年07月08日
夏を涼しく過ごすための食事法 アイスやアルコールに注意
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- 食事療法

「体温より低い温度の食品を摂食すると、食べているときは涼しく感じます。アイスクリームに接触している消化器官が冷やされるからです。しかし、その効果はせいぜい15〜20分しか続きません」と、シドニー大学のXin Huang氏(生物科学)は話す。
体には体温を恒常的に保つ機能が備わっているので、体の冷えた部分の血流が増え、低下した温度をもとに戻そうと働く。冷たい食物を摂取した場合でも、体全体では体温は変化しない。
夏の暑さをやわらげようと、冷たいビールを飲む人も多い。グラスを氷のように冷やすと、格別な涼しさを感じることができる。「しかし、涼しさを感じたいのなら、ビールは良い選択とはいえません。ビールなどのアルコール飲料には利尿作用があり、飲み過ぎると体は脱水状態になるおそれがあります。体内の水分が少なくなると、汗をかかなくなり、結果として体温上昇につながります」とHuang氏は強調する。
アルコールを飲むと排尿の頻度が多くなり、喉の渇きを感じやすくなるのは、抗利尿ホルモンの働きによるものだ。アルコールは、血管運動中枢に抑制的に働き、末梢血管を拡張し、体熱の放散を促す。さらに、脳下垂体から出る抗利尿ホルモンの働きを抑え、尿細管からの水分の再吸収を抑える作用がある。
さらに、アルコールの代謝にエネルギーが必要で、その過程で水分が使われるので、体はさらに脱水状態になりやすくなる。また、ビールには糖質が含まれ、アルコールにもエネルギーがあるので、エネルギーの摂り過ぎにもつながる。
「暑い環境にいると、汗をかくことで水分蒸発による熱放散がうながされます。汗の90%以上は水分でできています。暑いときに体を冷やしたいのなら、水分の補給を十分に行い、汗をかくことが必要です」と、Huang氏は指摘している。
食事のときに消費するエネルギーは、「食事誘発性熱産生(DIT)」であらわされる。食事をした後、体が温かくなるのはこの食事誘発性熱産生によるもので、摂取エネルギーの約10%に相当すると考えられている。
キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ハクサイなどの葉菜類は、80〜95%が水分でできていて吸収が早く、食事誘発性熱産生が低いという。暑い夏に涼しさを感じたければ、葉菜類を中心とした野菜サラダを食べ、低脂肪でさっぱりした食事をとるとよい。
脂肪の多い食品は糖質やタンパク質が主体の食品に比べ、消化の始まりが遅く、吸収に時間がかかる。つまり、脂肪は消化・吸収にエネルギーを必要とする栄養素だ。また、脂肪のとりすぎは肥満につながるので注意が必要だ。肥満は体の食事誘発性熱産生を低下させる要因となり、肥満対策は夏の暑さ対策にも影響している。
運動不足で筋肉が衰えると、基礎代謝が低下するだけでなく食事誘発性熱産生も低下する。逆にトレーニングで筋肉を増やすと、食事誘発性熱産生は高くなる。ふだんから脂肪分の少ない食事をし、体の熱産生を高めておくことが肥満予防につながるという。
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