ニュース
2013年02月07日
糖尿病腎症の寛解を目指した治療戦略
糖尿病性腎症は、1998年から透析療法導入原疾患の第1位となり、2011年には全透析療法導入者数の中で44.2%を占めるにいたっている。背景には、糖尿病患者数そのものの急増と、未治療または治療を中断し末期腎症に至ってから受診する患者が後を絶たないという状況がある。
一方で、糖尿病腎症の管理・治療法は進歩しており、医療機関継続受診例では患者の腎症発症・進行はかなり抑制されつつある。そして最近では、腎症の寛解(remission)さえ生じえることが報告されている。

糖尿病症例に「微量アルブミン尿」が出現した時点で糖尿病性腎症と診断することは、すでに1990年代に全世界で確立している。日本糖尿病対策推進会議では2009年に啓発ポスターを作成した。
腎症の診断における微量アルブミン尿の重要性はすでに確立しているが、尿アルブミン値の定量検査が必ずしも年1回行われていないという問題が浮上している。
「尿蛋白陰性か陽性(+1)を示す尿病患者を対象に随時尿によるアルブミン定量検査を日を変えて施行し、30〜299mg/g・Crが3回中2回以上該当した場合」に微量アルブミン尿と判定する。
しかし実臨床で「尿蛋白が陰性か+1程度の陽性」の患者に尿アルブミン検査を頻回に行うことは十分には行われていないという。「尿蛋白陰性であっても少なくとも年1回は尿アルブミン検査を行っていただきたい。尿アルブミン値測定の啓発活動は今後も必要です」と、羽田先生は強調した。
糖尿病発症初期から医療管理下にある患者の腎症発症・進行はかなり抑制されつつある。厳格な血糖コントロール、レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬を第1選択薬とした厳格な血圧コントロール、血清脂質コントロール、およびマイルドな蛋白制限食を含む集約的治療により、糖尿病腎症の寛解(remission)は可能になった。
「今後は“腎症の寛解を目指す”という確かな視座をもって、個々の患者に対して早期に、かつ積極的に介入し取り組むことが重要です」と、羽田氏はまとめた。
1型糖尿病の関連記事
- 腎不全の患者さんを透析から解放 「異種移植」の扉を開く画期的な手術が米国で成功
- ヨーヨーダイエットが1型糖尿病の人の腎臓病リスクを上昇 体重の増減を繰り返すのは良くない
- 世界初の週1回投与の持効型溶解インスリン製剤 注射回数を減らし糖尿病患者の負担を軽減
- 腎不全の患者さんを透析から解放 腎臓の新しい移植医療が成功 「異種移植」とは?
- 【1型糖尿病の最新情報】幹細胞由来の膵島細胞を移植する治療法の開発 危険な低血糖を防ぐ新しい方法も
- 若い人の糖尿病が世界的に増加 日本人は糖尿病になりやすい体質をもっている 若いときから糖尿病の予防戦略が必要
- 【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も
- 1型糖尿病のランナーが東京マラソンを完走 CGMとインスリンポンプを組み合わせたシステムでより活動的に
- 運動に取り組み糖尿病を改善 血糖値が下がりすぎる低血糖にもご注意 1型糖尿病の人に最適な運動法は?
- 「スマートインスリン」の開発が前進 血糖値が高いときだけ作用する新タイプのインスリン製剤 1型糖尿病の負担を軽減