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2012年08月25日
運動系の家庭用ゲームでは運動不足を解消できない
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家庭のリビングルームでゲーム機を使って運動できることをうたった任天堂の「Wiiスポーツ」が、米国で発売されたのはおよそ6年前だ。「Wiiスポーツ」はヒット商品になり、類似したゲームが多数発売された。当初は、屋外に出たがらない子供の運動不足の解消に役立つと期待され、子供だけでなく大人にも愛好者が増えた。
ミシガン州立大学のWei Peng氏は、こうした「アクティブ・ビデオ・ゲーム(AVG)」に関する論文を再検討し、AVGが実際に運動不足の解消に役立つかを調べた。
その結果、ほとんどのAVGは仮想現実のもので、「軽度〜中程度」の強度の運動を提供する可能性はあっても、本物の運動やスポーツに比べると運動量は足りないとの結論を出した。
「ただし、運動習慣のない人にとっては、こうしたゲームが次のよいステップになるかもしれない。あくまでゴールは現実の世界で運動を習慣化することだが、うまく誘導すれば日常で運動を増やす支援になるかもしれない」とPeng氏は話す。
世界保健機関は、運動不足が原因で死亡する数は毎年200万人に上ると推計している。うち、運動不足は心臓病や乳がん、結腸がん、2型糖尿病の発症につながる。
運動不足を解消すれば、これらの死亡を防ぐことができる。そのため、米疾病管理予防センター(CDC)は、週に計150分を適度な運動に費やすことを勧めている。
実際には、運動習慣を定着させるのは、子供だけでなく、成人にとってもなかなか難しい。最近の調査によると、6歳以上の米国人は1日の55%を座ってすごし、25%は余暇時間に運動や身体活動に参加していないという。
Peng氏は「AVGに熱中する人は少なくない。彼らは、AVGが運動不足の解消に役立つことを期待しているが、現実はそう簡単ではない」と話す。
成人は1日に30分を「適度〜活発」な運動に費やすことが勧められている。「AVGのほとんどは、この条件を満たしておらず、完全な解決策とならないことがわかった。AVGに関する41件の研究のうち、身体活動を増やすために有効なツールになりうることを示したのは3件だけだった」としている。
「ただし、こうしたゲームは、有効に活用すれば運動に対するよいアプローチになる可能性がある。例えば、運動リハビリが必要な高齢者に対して、適度な運動を提供するツールとして使える。運動のための構造化されたプログラムが必要だ」とPeng氏は付け加えている。
‘Exergames’ not perfect, but can lead to more exercise(ミシガン州立大学 2012年8月7日)
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