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2012年07月24日
腎臓病のリスクを高める遺伝子を発見 理研など
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腎臓は、尿を生成し体内の老廃物を排泄することで体の成分を正常に保つ臓器。腎臓機能の評価は、医療現場における重要な臨床検査項目として広く使用されている。慢性腎臓病により腎臓機能が半分以下となった人は、日本では400万人以上に達する。日本腎臓学会編「CKD診療ガイド」によると、このような患者は心臓疾患にもかかりやすい。
さらに腎臓機能が低下すると、体内の老廃物を十分に排泄することができなくなり、やがて血液透析や腎臓移植が必要となる。日本透析医学会の調査によると、日本では2010年末の時点でおよそ30万人が透析患者で、毎年新たに4万人弱の患者が透析を必要となっている。
これらの透析医療にかかる費用は日本全国で年間1兆円以上とされており、医療経済の観点からも、慢性腎臓病の予防は重要な課題となっている。
そこで理化学研究所(理研)は、東アジア人集団を対象としたゲノムワイド関連解析を行い、腎臓機能の個人差に関わる12個の新規遺伝子を同定した。
今回の研究成果は、文部科学省が推進するオーダーメイド医療実現化プロジェクトおよび東アジア人集団における遺伝的背景の解明を目的とした国際共同プロジェクト「アジア遺伝疫学ネットワークコンソーシアム(AGEN consortium)」の成果を活用したもの。
中国、シンガポール、台湾、韓国、米国および日本の施設に集められた東アジア人集団7万1,149人を対象に、ヒトゲノム全体に分布する約240万個の一塩基多型(SNP)と、腎臓機能の指標である尿素窒素、血清クレアチニン値、糸球体ろ過量、尿酸値との関連を調べる大規模なゲノムワイド関連解析を実施した。
尿素窒素、血清クレアチニン値、尿酸値は、体内に存在する老廃物の量を反映し、糸球体ろ過量は腎臓が老廃物を排泄する働きを反映する。今回の解析結果を、欧米人集団11万347人を対象にした同様な解析結果と照合した結果、腎臓機能の個人差に関わる21個の遺伝子を同定した。そのうち12個の遺伝子が新規発見の遺伝子だった。
また、この21個の関連遺伝子を対象に、慢性腎臓病患者と健常人との比較を行った結果、7個の遺伝子(MECOM、MHC region、UNCX、WDR72、UMOD、MAF、GNAS)が慢性腎臓病へのかかりやすさを1.06倍〜1.1倍増加させることがあきらかになった。
さらに、21個の遺伝子を、尿素窒素、血清クレアチニン値、糸球体ろ過量、尿酸値の4指標と慢性腎臓病との関連にもとづき分類した結果、複数の指標と関連する遺伝子が存在する一方で、単独の指標だけと関連する遺伝子も存在するなど、腎臓機能の指標と各関連遺伝子の間に、さまざまな関連パターンが認められたという。

研究グループでは、今回同定した遺伝子を対象に研究が進むと、日本人をはじめとする東アジア人における腎臓機能の個人差や慢性腎臓病メカニズム解明が期待できるようになると指摘しており、今後、これら遺伝子上のSNPを用いた慢性腎臓病リスクの予測など、個々人に合わせたオーダーメイド医療への応用に貢献できるものとの期待を示している。
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