ニュース
2012年05月08日
人工甘味料認識のメカニズムを解明 舌のセンサー役タンパク質
- キーワード
- 食事療法
甘味の受容体は人工甘味料や砂糖などの糖類のほか、一部のタンパク質やアミノ酸も認識して甘いと感じさせる。甘味受容体は膵臓にも存在し、インスリンを分泌して血糖値を調節する仕組みに関与しているとみられることが最近あきらかになった。研究成果は新たな人工甘味料や糖尿病治療薬の開発に役立つと期待されている。

たった1つの受容体で多種類の甘味物質が感知されている仕組みなのだが、多様な構造をもつ甘味物質をどのように識別しているのかについては、不明な点が多く残されていた。
研究では、分子シミュレーションによる受容体の甘味物質識構造の予測と、「点変異導入」ヒト甘味受容体における受容能評価により、甘味物質の認識メカニズムをあきらかにした。
タンパク質は、20種類のアミノ酸がどのような順序で並んでいるかによって機能が決まる。その特定のアミノ酸残基をほかのものに置換することを点変異導入と呼び、これによってタンパク質の役割が変化することを調べることで、その役割を推定することができるという。
研究チームはまず、ヒト甘味受容体の構造を受容体の活性化型構造をもとにシミュレーションした。次いで、受容体と甘味物質が結合する構造を分子動力学計算により予測した。受容体に特異的に結合する物質を「リガンド」と呼ぶ。研究チームは、このリガンド認識に深く関わる受容体側のアミノ酸残基を10ヵ所予測することに成功した。
これら10ヵ所の残基は受容体の細胞外にある。甘味物質の認識に強く関わっており、甘味物質の化学的性質によって異なることが分かった。活性型受容体と甘味物質との結合モデルを構築することで、甘味受容体がリガンド受容ポケット中のアミノ酸残基を巧妙に使い分け、化学的性質の異なる多種類の低分子甘味物質を受容しているという。これにより、たった1つのヒト甘味受容体が多種類の低分子甘味物質を受容できる謎を解明できる。
甘味受容体は口腔内以外にも、消化管、膵臓など、消化やエネルギー恒常性に関わる器官にもある。最近の研究では血糖値のセンサーの役割にも関わっていることが報告されている。
甘味物質がどのようにして甘味受容体に認識されるかをあきらかにした今回の研究成果は、新規人工甘味料の開発のみならず、糖尿病治療薬の開発などにも応用できるという。「味覚と健康」という新しい領域が拓かれつつあると、研究グループは述べている。
研究の詳細な内容は、4月20日付けで米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。

食事療法の関連記事
- 魚を食べている人は糖尿病リスクが少ない 魚は脳の健康にも良い 中年期の食事改善は効果が高い
- 朝食をしっかりとると糖尿病が改善 血糖管理に大きく影響 朝食で「お腹ポッコリ」肥満を予防
- 「超加工食品」の食べすぎは糖尿病リスクを高める 筋肉の質も低下 「自然な食品」はリスクを減らす
- 糖尿病の食事に「ブロッコリー」を活用 アブラナ科の野菜が血糖や血圧を低下 日本でも指定野菜に
- 糖尿病の人はビタミンやミネラルが不足 「食の多様性」が糖尿病リスクを下げる 食事バランスを改善
- 糖尿病の人は脂肪肝にご注意 ストレスはリスクを高める 緑茶を飲むと脂肪肝が減少
- 「玄米」で糖尿病を改善 食事では「低GI食品」を活用 血糖値を上げにくい新しい米を開発
- ウォーキングなどの運動は糖尿病の人に良い 運動で食欲も抑えられる 認知症の予防にもつながる
- アルコールの飲みすぎは危険 糖尿病・高血圧・肥満のある人は肝臓病リスクが2.4倍に上昇 飲酒により糖尿病リスクが上昇
- 【Web講演を公開】2月は「全国生活習慣病予防月間」
今年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」