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2012年05月08日
糖尿病の自己管理 何が妨げているか「自分の体を守る」
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- 糖尿病合併症

糖尿病の治療には、食事療法や運動療法、血糖自己測定といったマネージメントだけでなく、医師の診療を定期的に受けることや、家族や親戚、職場の理解といった社会的な交流も含まれる。
患者が自分で食事を管理したり、レストランでの外食の栄養表示を確かめるなど、行動を変容し生活スタイルを健康的に変えていき、家庭や学校、職場にも効果が波及することが期待されているが、最近の研究では望ましい成果は得られていないという結果になった。
英国では、糖尿病療養に取り組む患者を支援するために、糖尿病の自己管理を指導する短期の患者教育コースが設けられている。日本の糖尿病教室に近い試みで外来で行われている。
糖尿病は、心臓病や腎臓病、網膜症による視覚障害など、深刻な合併症を引き起こす病気だ。英国の糖尿病有病数は260万人で、2025年までに400万に増加すると予測されている。
研究者によると、保健専門家による適切な指導を受けている患者は全体の1%に過ぎないという。残りの99%の患者は自分で糖尿病を管理しているが、十分な知識や技術をもっていないおそれがある。
「医療スタッフがまわりにいない場合に、糖尿病患者はどのように対処すればよいかを調べた研究は、これまで行われていなかった。糖尿病の自己管理を実際に行うのは患者にとって困難であり、精神的な負担も大きい。糖尿病をもつ人は、たくさんのことを熟知し調整しなければならない」とロンドン大学クイーンメリー校のTrisha Greenhalgh教授(プライマリケア)は話す。
研究チームは、多様な民族や経済の背景をもつ糖尿病患者30人(5〜88歳、1型糖尿病15人、2型糖尿病15人)を対象に、合計88回230時間の調査を行い、糖尿病の自己管理の現状と必要な支援について調べた。調査には患者の家族を交えたインタビューなども含まれる。
その結果、血糖コントロールが良好でない患者は少なくなく、その原因は「家庭の事情」、「糖尿病以外にも慢性疾患をもっている」、「医療費が高い」といったさまざまな理由が組みあわさったものだ。
糖尿病に対する十分な理解を得られていない社会的な背景も大きく影響している。例えば、レストランやカフェなど外食のメニューには栄養表示がないので、患者は自分でカロリーや栄養の計算をしなければならない。糖尿病をもつ人は、生活の多くの場面で困難を強いられている。
「自己管理の意欲が高い患者ほど血糖コントロールが良好との報告もある。医療スタッフは糖尿病患者の意識向上を促す努力をするべきだ。実際には多くの患者は糖尿病について、十分な知識をもっていなかったり、否定的な感情をもっている」とGreenhalgh教授は話す。
「糖尿病に携わる医療従事者は、患者が医療機関の外で自己管理をどのように行っているか、また、何が糖尿病の治療を妨げているか、もっとよく知る必要がある。また、糖尿病患者による適正な自己管理を促すことが良好な血糖コントロールにつながることを、医師はよく知っておくべきだ」と付け足している。
Approach to diabetes self-management too narrow, study suggests(ロンドン大学クイーンメリー校 2012年4月10日)
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